女の戦いそして激突
「今度はちゃんと避けられるかな? 光斬!」
「今度は効かないよ【炎硬弾】」
リウスの放った炎硬弾はフェイリアの放った光斬とぶつかり強烈な光を浴び、すぐに消え去る。
「へえ、中々やるわねお姉さんびっくりしたわよ」
炎硬弾は野球ボールほどの大きさだが炎を圧搾した玉。それを放ち対象物に当てると、対象物のぶつかった部分は強烈な炎によって穴を開く代物。
つまり破壊不可能な物以外なら防いだ所でその部分は高温によって焼き溶かされてしまう。
「私だって成長しているの、あなたにはタクミは渡さない」
「私も成長してるんだけどね。これだってタクミの事を思って付けたんだから」
フェイリアは悪魔の手を動かしていた。
「……確かにその気持ちわからなくもないわ。タクミを思ってした行動なんだから」
「あらわかるのね。タクミに対しての想いがあってお姉さん何だか嬉しいわよ」
「ええ、私だって逆の立場ならしたのかもしれないし……」
(え、したの?)
「ここまで分かり合える相手に出会えるって素敵ね。けどそろそろお喋りは終わりにしましょうか」
フェイリアは腰に装着しているもう一つの刀を抜き二刀流になる。
そんなリウスは杖魔祖を持ち戦闘態勢に入る。
「光斬! 光斬! 光斬! 光斬!」
「炎硬弾! 炎硬弾! 炎硬弾! 炎硬弾!」
光の線と炎の塊との応戦。しかし徐々にリウスが押されているのがわかる。
「ほらほらどうしたの? もう疲れたのかしら、タクミを置いてくなら見逃してあげてもいいかもね」
「まだ疲れてないしタクミも渡さない……炎のドーム!」
炎のドームはフェイリアに包まれる。
リウスは焦っていたのだろう。魔力調整ができていなかったからか、炎のドームは普通の人なら耐えきれないほど。中にいれば焼き殺してもおかしくない状態の火力を放出していた。
だがそれでもタクミはリウスがフェイリアに勝てたイメージがわかないのだ。
巧は違和感を感じる。ただの違和感ではなくとてつもなく不吉、違和感と言うべきだろうか。今リウスを助けないと、もうリウスに会うことができなくなるような不吉な事が……
「これは熱いわね」
「まずい!」
フェイリアが炎のドームの中で喋っているのが聞こえた瞬間、巧は咄嗟にリウスを抱きつき押し倒す。
「きゃ!」
「【振円光波斬】」
フェイリアを覆っていた炎のドームは、光の線の波動を受け、消え去った。光の線は周りの木にも及び、線に触れ離れた木は音を立てて倒れる。
そんな光景を見た巧とリウスは呆然とする。巧があと一瞬判断を遅れたらリウスは光の線に巻き込まれ真っ二つにされ絶命していただろうと。
「あれは熱かったけど、どうも私はこの手を取り込んだことによって耐性が上がったみたい。あの程度では私には効かないみたいね」
悪魔の手以外は見た目は前回と変わってないのに中身は化物染みていた。
巧はリウスを離し立ち上がるとリウスも続いて立ち上がる。
「そろそろ降参かしら?」
「まだ降参じゃない、私は戦えるんだから!」
「そう……、それじゃ行くわ……ね!」
そう言うとフェイリアは飛び出した。
悪魔の手を取り込んだおかげで身体能力も上がったのか、リウスとの距離を縮める。
「竜炎!」
リウスは近づいてきたフェイリアを現状のリウスの最大火力である竜炎で焼き払おうとした。
「これは流石にまずいわね……」
そんな言葉と同時に少し、焦りの表情を浮かべたが、すぐに落ち着きを取り戻し技を繰り出す。
「【破開眼】【二刀烈乱舞】!」
フェイリアの目は両方とも少し光を帯び、両手に持っている刀も光ったと同時に複数回、竜炎を斬る。その斬り方は美しさや魅了されるような感覚があった。炎の弱くなった部分を斬るようにしていたのか、一心不乱に斬るよりも技術力の高さが伺える技であった。
フェイリアの二刀烈乱舞によって、かき消されたリウスの竜炎を目の当たりにする。最大火力である竜炎がかき消されたのがショックだったか、力尽きるようにリウスはその場に座り込む。
「今のはお姉さんびっくりしちゃったけど、これでもうお終いかしら?」
「……」
リウスは俯き黙り込む。
「反応ないし、これで終わりにするわね? ……タクミ邪魔しないでくれるかしら」
「ああ、悪いな。流石にリウスを殺そうとするのは嫌だから止めさせてもらったよ」
巧はフェイリアがリウスに近づいて、殺そうとする気満々だったので水魔法でフェイリアに放ち止めた。
「その子も私をあのドームと言い、さっきの竜炎と言い殺す気満々だったんだけどねぇ」
「ああ、流石にそれは俺も言い訳ができないが、お前が規格外に違いすぎてるから、しょうがなかったとしか言えない」
「もうタクミ、その子が好きなの? 私という者がありながら。私ならその子よりも色んな事をさせてあげられるわよ? それにこの体で楽しませてもあげられるし」
そう言うとフェイリアの胸を強調するように両腕で押し上げる。
「まあ嬉しい条件なんだけどさ、けど俺はリウスを守らなくちゃいけないんだよ。それにある約束もしてるしさ」
「約束? それはどんなのか聞いてもいいかしら」
「ああ、俺はこの世界を旅してみたいと思っているんだ。他の大陸含めて。そしてそんな我儘に付き合ってもらうのがリウスってわけ。やっぱ一人よりも二人ってな旅は楽しい方がいいし。まあ現状はお金とか溜めないといけないからこの街に留まってるってのもあるけどね」
「それは楽しそうね。私もその旅に連れて行ってほしいな? その子を殺してから二人で旅をね」
「まあ一緒に旅をするって意味でならフェイリアみたいな強い人には歓迎だけど。けどリウスを殺すならその提案は却下するよ」
「どうしても?」
「ああ」
「そう……それじゃやっぱり、その子を殺さなきゃ私はタクミの一番になれないのね……」
フェイリアはリウスに向かって近づき刀を振ろうとした瞬間、リウスの前に水が現れてフェイリアは離れる。
「全くタクミはその子を守らなくていいじゃない。私があなたを守ってあげるのよ?」
「確かに守られるのは楽だろうね。けど守ってばかりじゃ俺は結局強くなれないし、守りたい者ができても力がないと守れないのは辛くなりそうだからな」
「タクミ……」
巧の言葉にリウスは呟いたがそれは誰の耳にも届いてはいない。
「俺が守れる範囲は限りなく狭いだろうけどさ、あの世界じゃ絶対無理だった。けどこっちの世界ならこの力があるし、いけるかなってさ」
巧はフェイリアに笑って見せた。
そんなフェイリアは巧を見て巧の言葉に耳を傾けている。
「タクミが何を思って私の前に居るのかがわかった……。なら私はタクミも倒すね。それで巧が倒されたらそれまで、けどそうしない為にも私を止めてみせてね、私の大好きなタクミ」
「ああ、止めてみせるよフェイリア」
巧は水の剣を出し戦闘準備完了させ、フェイリアも巧と同じように二刀の刀を振り戦闘準備を完了する。
お互い顔を見合ったのち両者激突。
女の戦いは激しいです。