昇格試験後編
あの兄弟でるよ
朝起きるとリウスが目の前で巧の顔を覗いていた。
「……おはようリウス」
「おはようタクミ」
「……どうした? 俺の顔に何かついてる?」
「ううん、何でもない」
リウスは巧から離れ夜中の状況を説明してきた。
「巧が寝た後、魔物が現れたんだけど近づいて来たら炎が飛び出して魔物をやっつけたの」
(機能したんだなあの地雷)
巧はリウスが楽しそうに話しているのを聞いていて安心する。
飯を食べ終わり、出発する前に巧は遠隔地雷を全て爆破させると踏まれてない地雷が火柱のように噴き出した。
そんな光景を見たリウスは目を輝かすように興奮する。
「行こうかリウス」
リウスをおんぶし、ルビアリタの街へと帰還するため走す。
道中の魔物はいたが無視をし走っていると、再び人の気配がするのに気が付くと足を止めリウスを下ろす。
「リウスまた人の気配がする。多分昨日の盗賊団だろう」
巧の予想通り近づいてきたのは、昨日リウスにより蒸し焼きにされ倒された盗賊団だった。
「よう昨日ぶり、元気だった?」
「元気じゃねえ! よくも昨日はやってく……」
再びリウスの魔法である炎のドームを盗賊団に包ませ蒸し焼きにした。ドーム自体は前回と違い、範囲が狭くなっている。
解除すると前回と同様に盗賊団が倒れ伏していたが、まだ元気な盗賊が残っていたので、巧が水魔法で吹き飛ばし気絶させた。
「むー、私がやっつけたかったのに……」
「ごめんごめん、街に戻ったら何か驕るから」
「本当?」
「ああ、本当本当」
「……ならわかった。早く戻ろう」
リウスは巧の背中に飛び乗り、盗賊団を無視して再び走り出した。
数時間経ったのちルビアリタの街に戻るとギルドの受付へ向かう。
「あらタクミさん早かったですね。まだ一日も経ってない気がしますが」
「終わりましたよ。ここに月水草が入っています」
巧とリウスはドッグタグに依頼書と月水草の山をシファに渡す。
「また多くありますね。流石に偽物はないと思いますが一応調べさせていただきますね」
シファは受付の奥へと行くと見えなくなった。
「タクミじゃないか」
振り向くとそこには黒鉄の刃のリーダーであるウエインとその仲間が立っていた。
「ウエインじゃないかあの酒盛り以来久しぶりだね」
「あ、ああ、流石にあの時は参ったよ。タクミがあんなに酒に強いなんて。それでそっちの子は?」
「こっちはリウス、俺の仲間であり相棒だ」
リウスは初対面だからか少しおどおどしていた。
「リーダーの顔が怖いからリウスちゃんビビってるじゃないか?」
「俺にビビったのか? それは悪かった」
「全くですよもっと穏やかな顔をしないといけないですよ」
(ウエインは怖い顔というよりも普通に好青年だけどな)
「それで今日はどうしたんだ?」
「俺もリウスも昇格試験をしていたんだ、さっきクレリット沼地から戻って来たんだ」
「クレリット沼地と言うと月水草か?」
「そう、それで今シファさんに渡して昇格するかどうかを待っているんだよ」
「そうなんですか、昇格できるといいですね」
「そうだタクミ、殺人鬼の噂知ってるか?」
唐突に話題を振るウエイン。
「殺人鬼? 知らないな」
「何でも場所不明なんだが旅の途中で襲われ、男女見境なく関係なく斬り殺すんだそうだ」
「襲われて殺されるなら魔物なんじゃ?」
「魔物なら食い殺すはずなんだが。発見された死体からは全員斬り殺された跡がが発見されたらしい。まあ大抵はスライムによって溶かされたとか。他に見つかった場所も、最初は他の街の付近だったが、最近この街に近づいてるそうだ」
巧は思い当たる節はあったが、それが確証に至ってなかったから口出しもできなかった。
「まあそれで俺達が今回呼ばれたんだがな。タクミを発見したから忠告しておこうと思って、タクミとリウスも気を付けろよ?」
黒鉄の刃のメンバーと雑談しているとシファが戻ってくる。
「タクミさん鑑定終わりました。持ってきた全ての草は月水草と判断しました。タクミさんとリウスちゃんは昇格試験合格とし両方ともランクは★四つとなります。おめでとうございます。それから月水草は百本ありましたので、白銀貨十枚です」
巧は青色のドッグタグ二つと、白銀貨を受け取るとリウスに白銀貨半分の五枚とドッグタグを渡す。
「昇格祝いとしてリウスちゃん連れて行っていいですか?」
シファは立ち上がると尻尾を振っていた。
「これからタクミと一緒に食事するからだめ」
シファはリウスに断られたのがショックなのか、耳と尻尾が垂れ下がる。
「どんまいシファさん。それとタクミもランク★四おめでとう。これで中級者仲間入りだな」
巧は黒鉄の刃のメンバーとシファに礼を言いギルドを出る。
ギルドを出ると大通りを歩き、リウスとの約束を果たすため食事を奢る巧であった。
(切り裂き魔か……多分あいつの事だろうな……)
巧はフェイリアの事を思い出していた。
あの後、何もなかったので目的を変えたのかと巧は予想していたが、精神異常者だからか殺人は止められていないようだ。
(もし次あいつが来たらリウスを守らないとな)
リウスは美味しそうにしている顔で食事をしていた。
そんな顔を見ると巧の決意はより一層強まる。
そして巧達の時間は過ぎていく。
――――その一方、森にてアベルト兄弟がフェイリアと戦闘を行っていた。
「くそ! 何だこの女は!」
「兄貴逃げ……ぎゃあああああ!」
アベルト弟は体を斬られ倒れ伏す。
「な! 弟をよくも!」
「うふふ……、あなた達弱いんですもの。タクミと比べるとちっぽけな存在、私はタクミに会いたいのよ? あなた達タクミの事を知っているって言うからついて行ったのに教えてもらえず、私を襲ってくるんですもの……。だからついついやっちゃった」
ドーファが今目の前にいるフェイリアの両手には刀が持たれて、ドーファに向かって歩いていた。
「何でお前タクミに会いたいんだよ!」
「ええ、私はタクミに会いたいの、会ってお礼をしないと。私の心を射止めたタクミ、そして愛を知ったの。大好きなタクミ、この世の中で一番好きなタクミ、タクミの事を思うと疼いてしょうがないの、タクミの中での存在に一番になりたいの、私の初めてを捧げてタクミの初めてを全てもらいたいの、タクミの傍にいたいの、タクミと一緒にそしてタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミをタクミを! だから嘘を付いたあなた達には死んでもらうわね」
「ちっ! 狂ってやがるぜ……」
「ええ、あの人にも言われちゃった。確かサイコパスだっけ、あの言葉は好き」
「よくわかんねえが、これでもくらえ【衝撃光波】!」
ドーファが斧で地面を攻撃し衝撃波がフェイリアを襲う。
「あら? 何だかタクミと比べてみみっちい技。これは何ですか?」
そう言うとフェイリアは迫って来た衝撃波を刀で叩き斬る。衝撃波はいともたやすくかき消されてしまう。
「やっぱりこれじゃ効かないか、じゃあこれならどうだ【土竜力動】!」
ドーファは斧を地面スレスレまで振りかぶると、その地面は浮かび広範囲にかけて前方に広がり対象者にぶつける斧技。場所によっては広範囲の敵にダメージを与えたり目くらましの効果を与える事ができ逃げるためには便利な技。
「何だか派手だけどこれじゃね【光斬】!」
迫ってくる土を石をフェイリアは届く前に1撃で切り裂いた。
「くそ!」
「もう終わりね」
フェイリアは飛び出しドーファの四肢を切断。
「ぐあああああああ!」
「タクミはどこにいるの?」
フェイリアは刀をあげ斬りかかろうとした時、フェイリアに向かってナイフが投げられたので咄嗟に弾き振り向く。
ナイフが投げられた先にはアベルト弟がいた。
「兄貴に離れやがれ! この化物女!」
「な! お前は速く逃げろ、俺はもうだめだ!」
「あらあら、美しい兄弟愛だこと。なら先にあちらのほうを始末させてもらうわね」
アベルト弟の近くまで行き刀を弟のほうへと向ける。
「や、やめろ!弟には手を出すな! 教えるから、タクミの居場所を教えるから許してくれ!」
「やっと白状したのね。なら早く教えてくれるかしら?」
「タクミは……」
「ぎゃああああ!」
フェイリアはアベルト弟の手に刀を刺す。
「ま、待ってくれ教える教えるから! タクミはルビアリタの街にいるはずだ!」
「ルビアリタの街ねぇ……嬉しい、やっとタクミに会える!」
「答えたぞ、だから見逃してくれ……頼む……」
「ええ、わかったわ……」
そう言うとフェイリアはアベルト弟の首を斬り絶命させる。
「何で殺したんだよ!」
「これで私から見逃してあげれるんだから……ね」
「くそがあああああああああああああああああああ!」
森の中で叫びは誰も聞かれる事はなかった。
「ああ、タクミィ……これで会いにいける。待っていてね私の愛しい人」
斧技で良いの思い浮かばなかった……
かっこよくしようと思ったけど無理でした
しかし前回ドーファは良い奴ぽく設定したけど結局屑でした
だけど襲う相手を間違えて返り討ち(死)




