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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第二章
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狂人

 ――――巧達が場所を離れてから一時間後、盗賊のボスは水の水滴が顔にかかり目を覚ます。


「冷た! ……あれここはどこだって、何だこりゃ! お前達起きろ!」

「あれボス? おはようございやす。今日もご機嫌斜めな感じで」

「おい、寝ぼけてんじゃねえぞ!」


 盗賊達は現在縄で縛られているのか動けない状態。


「ようやくお目覚かしら。苦労したわよ? 風月の灯さん」

「誰だ! 俺等の盗賊名を知っているって事はこの風月の灯に対して逆らうってのか!」

「あなた達が気絶していたので捕縛させてもらっちゃった。ふふ……」


 盗賊達の前にいるのは、見た目は二十歳ぐらいに見え、銀髪のショートヘア、耳にはエルフの特徴である尖がった耳、目は細く相手を見ているのかわからないほどだが、それでも顔は美人に入る部類だろう女。身軽そうな革製の鎧を着ている。見た目には華奢な体で、その腰には長剣と短剣が一本ずつ侍のように両腰に装着していた。


「気絶? そ、そうだあの小僧! あの小僧はどこだ!」

「小僧? 誰の事かわからないけど、あの場にいたのはあなた達しかいなかったかしら」

「くそ! 次会ったらただじゃおかねえ! おい女、俺達を縛っているこの縄を解きやがれ!」

「ちょっと確認したいことができたのよね。私が質問するから、その質問に答えてくれたら解放を考えてあげてもいいかしらね」

「ああ、何でも答えてやるだから早くしろ!」

「あなた達は誰にやられたの? これでもかなり有名だった盗賊団なはずなのに。特にこの盗賊団であるリーダーの風魔法に耐えられるなんて相当な実力じゃないかしら?」

「俺は魔法何て与えれてない、あの小僧は詠唱途中で攻撃してきた卑怯者だ! 次に会った時はただじゃおかねえ!」

「盗賊なのに卑怯者と呼ばせるとは、相手も中々の卑劣な方なのね」

「さあ答えてやったぞ、この縄を解きやがれ!」

「……仕方がないわね、約束は守るわね」


 そう言うと、女は腰に装備していた長剣で盗賊団の一人である男の喉を斬り裂く。斬り裂いた男の首から血が噴き出し、地面を大量の血が溢れた。


「な、何で殺したんだよ!」

「あら? 約束は果たわよ? ちゃんと”解放”するって、この世からね」


 女は微笑みながら剣に付いた血糊を飛ばす。


「それは解放じゃねえ!」

「まだ質問は残っているので答えてね」


 女はそう言うと唇を舐め少しだけ目を開き不敵な笑みをする。その笑みはどこか魅了されるような――――――






『ヤラレルカ人間メ!』

「ああそうかい、けど俺達の食料になれ」


 現在、巧はバッファローと戦闘を行っていた。バッファローは地球にいるのよりも少し小さいが全身緑色で角が異様に伸びていた。


「水ビーム」


 巧は水ビームを放ち、体に穴を空けバッファローは絶命する。


「さてこれで晩御飯ゲットかな。捕まえて食料ゲットするの初めてだわ」


 バッファローを解体するために、首を短剣で斬り血抜きをする。血量が多いのか時間がかかりそうである。そんなバッファローの血を見て巧は閃く。


「そうだこの血も操れないかな?」


 バッファローの血に向かい、手を突き出し水を操る感じで操作しようとすると……気怠さが巧を襲う。

 巧は目を開け、バッファローの血を見てみると、その血は徐々に吸い出され目の前に集まっていく。一つの血の塊ができ、その塊で剣を創る。


「おお、成功だ」


 剣は血で作られたからか赤く、血抜きされたバッファローを斬ってみると豆腐のようにスパスパと斬れたのだ。作業を終えると血の剣は解除し、肉はサイコロみたいに一口サイズに斬り分けた。


「楽だな。それに水よりも威力は高いぽいし、これは敵にも自分にも使えそうだな。まあ自分で使うには最終兵器か?」


 食べる部分以外の肉は収容空間へ、角はインベントリにしまう。


「よし、できたぞリウス、あとは焼いて食べるだけだ」


 リウスは火を起こし、肉を焼くと皿へと繰り返し移す。

 その肉を巧とリウスは美味しそうに食べた。


「美味しいね」


 焼いた肉だがパンにも挟めば、そこそこ悪くない味がする。


「肉だけでも結構いけるな」


 盛り付けられた肉は全部平らげ、巧もリウスも腹八分目になる。

 巧は時刻を確認すると、二十一時を回っていた。

 辺りは月明かりはあるが、それでも薄暗い。見張りは巧がする事を提案したがリウスは巧が起きっぱなしになる事を察したのか批判を浴びせ巧は折れる。


「一日の徹夜ぐらいなら大丈夫なんだけどなぁ……。わかったそれじゃ先に寝るからリウスはこの魔時計の砂が全部落ちたら俺を起こしてくれ」


 人は大体一日に六時間前後寝れば十分と聞く。だがそれは地球のみの話。

 この異世界では、いつ襲われるかわからないので、戦闘での判断能力を誤らないように十分な休息は必要である。

 リウスはそんな事を理解していたのか、それとも巧を心配していたのかはわからないが、巧が先に寝る事に異論はなかった。


(仕方がないか、先にリウスが寝るとしたら街に着くまでに長時間起きとかないといけないからな。流石に女性として肌も悪くなるのはなあ)


 巧が寝たのを確認するリウス、そんなリウスは巧の近くに座って巧の寝顔を見ていた。巧に触ろうとするか迷うリウス。


「触って起こしたらだめ……」


 いつの間にか魔時計の砂が落ちていたのに気づき巧を起こす。


「おはよう、時間かそれじゃ交代するわ」


 時間を確認すると丁度〇時。睡眠時間としたら三時間しか寝てないのだ。

 魔時計は時間設定を変更することが可能であり最低一時間からだが、野営する際の目安としては十分機能する。

 そんな巧が何故三時間しか寝てないのか。巧には睡眠回復のスキルが覚えていたため、眠たくなってもそのスキルを使用し、眠気を覚ます方法が可能。

 更には巧のほうがリウスよりも探索が優れ、探知と闇眼のスキルの併用で夜中であっても敵の発見確率が高い。巧とリウス、どちらが適合なのかは一目瞭然であった。


(朝の七時まであと七時間か……長いな)


巧が起きてから一時間ほどしているとリウスの寝息が聞こえてくる。


(……何か近づいて来てるな)


 巧は探知範囲のおかげで、遠くからだとどんな存在かは把握しにくいが、探知は可能であった。条件次第でなら数十メートル範囲は探知可能。そうじゃなければ数メートルが関の山であり、近くなら飛び道具だろうが人の動きだろう手に取るようにわかる。

 巧は数時間寝ただけではMPは全快せず、MPポーションで無理やり回復させ戦闘準備をする。


(これは魔物じゃなく、人間の気配か? どうも動く感じがおかしい気がする)


 巧は直感であったが何か違和感、嫌な予感を覚えた。

 巧達に向かってくる何者かに注意する。


(あれ? 止まった? 流石にここだとリウス起こすのはまずいし、近くに魔物はいないから近づいてみるか)


 接近してきた何者かに近づく巧。まだ距離にして数十メートルあるが開けた場所を歩いていた為か、近づいて来た何者かの存在を発見する。

 接近してきた何者かは女であり顔は美人、両腰には剣を二本腰に装備していた。


(何でこんな所に女が? 剣二本なら剣士か、いや魔法剣士って線も消えないか。美人だがあの目、あんなに薄めて前が見えてんのか? とりあえず鑑定してみよう)


 名前:フェイリア・マルベール

 年齢:207歳

 性別:女

 種族:エルフ

 レベル:36

 状態:なし


 巧が女に気づいたように、女も巧に気づかれたのがわかる。

 再び巧のほうへと歩み寄ってきた。


「そこのぼくー? お姉さん少しお話を聞きたい事あるだけど、いいかな?」


 声をかけてきたフェイリアに対して警戒を怠らない、ただならぬ雰囲気を巧は感じていたからだ。巧は戦闘にならないよう穏便に進める事を決意する。


「何でしょうこんな夜中に」

「あのね、お姉さん人を探していてね。子供二人なんだけど君は知らないかなって思っちゃってね」

「そうなんですか、それはどんな子供二人ですか?」

「ええ、一人は黒髪の魔法が使える少年で、生意気な口調をしてたって言ってたっけか。あとは何か魔法を使い吹き飛ばしたとか」

「言ってたって言うと誰かから聞いたんですか?」

「えっとね、”風月の灯”って言う盗賊団の人達から聞いたの。もしかしたら君は知ってると思うんだけどね」


 風月の灯と言う口調が強く言い、巧は少し内心戸惑う。


「え、えと知らないかも」

「そうなんだ、あともう一人が赤髪の長髪でその女の子も魔法使いらしいんだけど、その二人を探していてね。その二人が盗賊団を魔法でやっつけたって盗賊団の人達から聞いたから、会ってみて対決してみたいなって」


 巧はフェイリアが巧とリウスに会いたがって探している事に気づくが、教えちゃいけない雰囲気があった為、嘘をつく。


「いえ、俺の知り合いにそう言った子はいますが、人違いではないのでしょうか?」

「そうね、知らないのなら仕方がないね。知らないならね…………それよりも君、あんまり嘘はついちゃだめだよね。何でお姉さんに嘘をついたのかな?」


 巧が嘘をついてるのがバレていた。

 これ以上は嘘をついても仕方がなかったので正直に話す。


「いや、だってお前の雰囲気おかしいでしょ。何だよそれ」

「あら? 私の雰囲気バレてたかしら」

「ああ、バレバレ、怖いほどにね。それで俺等を見つけて対決してみたいんだろ? 俺等は対決したくなくて休みたいんだが」

「あらだめよ? あの盗賊団からあなた達の情報を聞きだしてから体が疼き始めてしょうがなかったのよ? 皆殺しにしてからも興奮が覚めなかったの。現にこっちのほうも濡れちゃってね…………ああ、早くその子達に会って戦って殺し合いしてみたいってね。実際会ってみたら中々鋭くてお姉さんは好きよ?」


 フェイリアは殺戮さつりくを思い出し興奮したのか頬を染め、人差し指を口に軽く入れ、薄目を少しだけ見開いた。


「戦闘狂であり精神異常者サイコパスかよ」


 人差し指を口から離すと糸が引っ付き垂れさがる。

 そんな姿は美人であるが故に妖艶ようえんであり魅了があった。


「サイコパス? よくわかんないけど良い響きねそれ」

「俺の知ってる所では気が狂ってて常人じゃないって意味でもあるけどな」

「そうね、私は狂ってるかもね、だから戦いましょうか」


(戦闘は避けられない感じかよ……。今はリウスが寝てるしまずいな……)


 巧が考え事をしているとフェイリアは辺りを見回す。


「そう言えば、もう一人の女の子はどこにいるの?」


 不幸中の幸いかリウスの居る場所はここから離れており、更には辺りが暗い所為かリウスにはフェイリアは気づいていなかったようだ。


「さあ? お姉さんが怪しすぎて逃がしたような、それともきても反撃するためにどこかで隠れているかもね」

「あんまりお姉さんを舐めないほうが良いと思うよ?」


 フェイリアから異様な雰囲気をだすと巧はそれに対して後ずさりをした。


(……何だよこれ、あの時のゴリラと同じ……それ以上じゃねえか)


 巧はゴリラで慣れていたからか雰囲気に飲み込まれず耐えた。


「あら? 今の殺気でも耐える何て流石ね。お姉さん益々(ますます)好きになっちゃったかも、性的にも食べたいぐらいにね」

「嬉しい事言ってくれるね。俺もこんな美人に好かれる何て嬉しいよ。その強調してる胸も触りたいと思ってるよ。でも俺からの頼みだから逃がしてほしいし、あんたは帰ってどこかへ行ってほしいな」

「君に触られるのは悪くないけど、い・や・よ。もし私に勝てたら胸だろうがお尻だろうが体の好きな所触ってもいいわよ?」


(くそ、好きな所を触れるのは嬉しいがきつそうだな)


 そして狂人フェイリア・マルベールとの戦闘が始まる。

 

フェイリア・マルベール、風月の灯の盗賊団を皆殺しにした女エルフ。

これから巧との戦闘に入ったらどうなるのか

そして巧はうまくこの女と戦闘で生き残れるのだろうか



とまあ正直この女性、本編でそもそも出す気なかったんだけどね

それ以前にこんな戦闘を考えていませんでした。

前話の続きとして巧達は盗賊から離れました→食事してその場で1泊しました→街に戻りました→その日終わります。

って感じで終わらせようとしたんだけどどうも執筆してる途中でどうやって話を切り上げ街に戻るかを思い浮かばなくて仕方がなくこうなってしまいました。

本来なら今回辺りで1日終了させる予定だったのに・・・

本当どうしてこうなったし


エルフであるフェイリアの年齢を引き上げさせてもらいました。

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