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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第二章
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討伐決行後

 気配探知を広げてみようと巧は目を閉じる。

 元々気配は広くなったほうだが、意識して更に広げてみようとしたら六匹の群れが休んでいるのを探知した。


(これはやばいな……)


 この世界に来た当初は何もできなかったのに、徐々に人間離れしてる実感が巧にはあった。便利になるならと考え放棄し目を開ける。


「あっちにいる……気配がする」


 巧達は気配のする方向へ行くと、風上になったのか向こうも気づきこちらへ向かってくる。


「リウス来るぞ、戦闘準備! 来たバンデットウルフから片づける」


 リウスに支持を仰ぎ迎撃態勢に入る。

 巧の予想通り遠くから六匹のバンデットウルフ達の群れが現れたが、数が少ない。

 だが気にしている暇はなかった、巧達は目の前に来ているバンデットウルフに集中し魔法を放つが当たったのは四匹程度。

 周りの木にも当たるが、狼だからか素早く動く。まだ二匹ほど残っていた。

 バンデットウルフは急に半分以上仲間を殺されたので木に隠れ、巧とリウスの様子を伺う。

 巧とリウスは動かない、動かないと言うよりその場で待ってたほうが相手がくるのがわかるからだ。

 巧は消火活動をしつつバンデットウルフの動きに注意していた。


「リウス今のでまだ残っている油断せずに、来たら即撃ち込む事」

「わかった」


 頼もしい返事であるが巧と違ってリウスは気配探知ができない、どこから集中できるかわからないので敏感になる必要性がある。


(まだ現れない……)


 気配ではいるのだが動いてはいなと言うよりも、バンデットウルフ二匹はこちらの様子を気にしているのか動かない。

 一瞬で倒されたから怖気づいたのかはわからない。

 

(仲間の所に戻るかもしれないな)


 そんな事を考え予想した所見事的中。


「バンデットウルフは戻った。多分仲間の所だと思うから今、倒したのを回収したらすぐ向かおう」


 リウスは頷き倒したバンデットウルフを回収。

 周りの火が付いた木も水で消火しているので山火事の心配はない。


「そろそろかな」


 山道を歩いていると、気配探知で数匹のバンデットウルフであろう群れを探知するが数が多い。

 巧はリウスの様子を見ようと振り向くとリウスの息はあがり、汗も少しかいている。


「リウス大丈夫か? ほら水とタオルだ」


 リウスに水を飲ませタオルで汗を拭かせる。山道は初めてなのだろう、暫くすると落ち着いていた。

 再び巧は群れに近づくとバンデットウルフの群れをはっきりと察知。

 幸いにも相手は動いていないバンデットウルフ達の嗅覚には巧達は感知していないのか、それとも別の要因があるのかはまだわからない。


「チャンスだ、今のうちに近づくぞ」


 近づく巧達、バンデットウルフ達は敏感に察知したのか動き始める。

 狩られるのをわかったのか数匹の小さな気配を残し、残りは巧達の元へと襲いにくる。


「リウス再び迎撃準備、来るぞ」


 距離はまだあったものの相手は犬だ、移動速度は速いので巧達の元へ到着するのにそこまで時間はかからない。


「気配は十匹! 左に五、前に五だ。リウスは前のを頼む」


 リウスは杖魔祖を握りしめコクリと頷く。

 バンデットウルフ達が見えたと同時に炎を撃ち込むリウス、二匹倒したと思われるがまだ三匹残る。

 巧も左から来るバンデットウルフ達を迎撃するため水の塊を浮かべる。


「来たな、水レーザー」


 巧が放った水レーザーは三匹のバンデットウルフに命中、だがもう二匹は近づいてくる。木が邪魔で見えなかったのだ。

 気配探知をするとすぐ近くに迫っているのがわかると巧は水レーザーを三度放つ。


『ぐわああああ!』


 そんな声が聞こえ気配探知すると、二匹は完全に動いておらず巧は安堵した。リウスが気になり振り返ると、戦闘はまだ続いている。

 気配から察するに残り一匹。気配察知が使えないリウスはバンデットウルフがどこにいるのか分からず悪戦苦闘。そんな様子を知ってか知らずかバンデットウルフはリウスに向かい木の陰から飛び出す。

 巧はその光景からブラックウルフと重なり、巧の表情が焦り水レーザーをバンデットウルフに撃ち放つ。


『人間如きがあああ!』


 そんな叫びをあげ、バンデットウルフは体に穴を空けたと同時に倒れた。


「大丈夫か? 怪我は」


 巧はリウスに近づき怪我を見ようとしたが、リウスは首を振る。

 怪我はないとアピールすると、巧はホッとしていた所に急に足に激痛が走る。

 

 「ぐぁッ!」

 

 巧は足元に視線を向けると、バンデットウルフはまだ生きていたのか巧の足を噛みついた。足には穴が開き、そこから出血。

 痛みを抑えつつも巧は短剣を抜ぬと、バンデットウルフの首に力の限り短剣を振り下ろし、バンデットウルフの首元を突き刺した。

 バンデットウルフの口は緩くなるとすぐさま首根っこを掴み、空中へ放り投げそして水レーザーで止めを刺し絶命させた。


「ぐ……」

「タクミ!」


 巧は足を抑えうずくまる。

 リウスは心配しそうな顔をし、涙目になりながら巧に抱きつく。


(いってええええええ! 無茶苦茶いてえええええ! これはあの時以来だ、くそ! 油断大敵だったってあれ?)


 足を抑えている間、次第に痛みが和らぐのを巧は感じた。

 手を離すと血は止まり、裾を上げると穴は完全に塞がれ足は治癒ちゆされていた。狂犬病の心配もしたが何事もなかったためか巧は安心する。


「タクミ?」

「ああ、回復魔法……そういや覚えていたんだっけか。もう大丈夫、リウス怪我は治ったよ。心配してくれてありがとう」 


 巧の傷が癒え、戦闘を終えたのか、リウスは目から涙が零しながらも安心した表情を巧へと向ける。


「よく頑張ったな。申し訳ないが俺が倒したの回収してきてくれないか?」

「うん!」


 巧はリウスが離れているうちに、リウスが倒したほうのバンデットウルフを回収しつつ、周囲の消火活動をした。

 リウスの所へ戻りると、積み重なっているバンデットウルフも収容空間に回収した。


「さて、残りはこの先の洞窟にいるぽいし、倒したら村へ帰って報告しようか」

「タクミいい……? 毛皮を……その……あの村の人達にあげられないかな?」


 リウスからの頼みをするのは珍しく、巧は快く引き受けた。


「ああ、確かにあの村は大変そうだね。しかも良い人達だ。確かに援助って意味でなら毛皮売れるらしいしな。けど、この毛皮で何か着る物とかできるかもしれないぞ?」


 リウスは首を横に振りいらないとアピール。

 そんなリウスの気持ちを知り巧は頷き約束する。

 巧達は小さい気配のほうへと向かうと先には洞窟を発見。

 洞窟は暗く巧は光の魔法で照らす。


「悪いんだけどここで待っててくれる? この入口の中で待って入ればいつでも邀撃ようげきできるしさ。奥にいるのは俺が倒してくるよ」

「気を付けて……」


 心配するような顔をするリウス。

 巧はそんなリウスを置き洞窟の奥へと探索。


「さて練習もしないとな」


 巧はまだ複数の魔法をきちんと使いこなせているわけではない。単種類程度なら使用可能だが複種類となると試したことはない。

 ただし最初っから意識したら複合も使用可能だが、今出している光でさえ維持しながら他の魔法を使えるのかも不明である。


(けどいつもみたいに想像しながら使えばいけるかも? 一度使えばあとは楽だし。しかしこの先にいるのって、もしかして……)


 少し歩くと洞窟の奥にいる存在が脳裏を過る。


『来んな! 来んな! あっち行け! あっち行け!』

『おかあちゃん達どこ? おかあちゃん、おかあちゃん!』

『人間帰れ!』


 更に歩くと巧の予想はしていた通りバンデットウルフの子犬が数匹そこにいた。


(くぅ……可愛い……)


 巧は動物好きであった。

 日本にいた時でも巧が散歩している公園に野良猫などがいれば撫で、散歩している犬などもよく見ていた。ペットショップに入る事もしばしあったが、育てる金もなく最後まで面倒をみる自信もなかったからだ。

 そんな目の前に愛くるしい犬達に巧の顔は戸惑いを隠せれない。


「そんな目で……悪いけどこれも現実だ……恨むなら恨んでくれ……」


 今は小さいが、このまま育てばまた害をなす事は容易に想像できた。

 巧は惜しむ気持ちで水レーザーを放つ。


 バンデットウルフの子犬の回収を終え、リウスの所へと戻る。


(こんなのリウス見たらどうなるんだろ? だめか、こんなのリウスには見せられないな)


 巧の気分は沈むが、リウスに心配させられないと判断し気持ちを切り替える。


「タクミ、どうだった?」


 リウスは洞窟入口で立って待っていた。


「ああ、全部片づけたよ。無事終わったし、村へ戻ろうか」


 村へ戻った巧達は村長へと報告に向かう。


「おお! ならあの短時間でバンデットウルフは全部倒したってことですかな?」

「はい、しかし数も多かったです。繁殖していたんでしょうね」


 集まった村人は戸惑いながらもどこか安堵の表情浮かべる。


「そうか、数が多かったのか……わかった。本来依頼分の金額と倒した数を上乗せした金額を渡そう。悪いがそこの空き地で回収したバンデットウルフを出してくれないかな?」


 巧達は空き地に向かい、収容空間からバンデットウルフの死体を全て出す。

 ただし子犬のバンデットウルフはリウスに見えないよう置く。


「すごいな……最初に疑っていて悪かったよ」


 巧達に疑問をもっていた村人の一人が巧達に対して謝る。

 他の村人達は倒されたバンデットウルフの死体を眺め様々な反応を見せていた。


「いや、いいよ。逆に俺達があんたらの立場なら疑うのも当然だしな。さてこれなんだけど燃えてるのもあるし、これはどうしようか村長」

「ああ、その燃えてるのも含め食用にしようと思うが皮は肥料にするよ。結構肉質も良さそうなのでな、残りは毛皮を剥くことにするよ」


 巧は毛皮と言う言葉を聞きリウスとの約束を思い出す。


「そうだ、毛皮なんだけど俺達持ってくのめんどくさいし全てこの村にあげるよ」

「なんと! 本当にいいのか? この毛皮は高く売れるのに……お連れ様にも迷惑かかるのでは?」

「ああ、いいよいいよ。そこは相談したし売る事自体少し面倒だなって思ってた所だし。代わりにこの村の宿で休んでいい?」

「ええ、勿論構わない。むしろ泊まっていってほしいお金もいらない。そして宴をさせてもらいたい」


 巧達は村長の厚意に快く引き受け、村の空き家に泊まる事になった。

 その日の夜はバンデットウルフの肉や野菜などが振る舞われ、リウスと共に巧は空き家で眠る。



戦闘中での油断は命取りでしたね

まだまだ戦闘未熟かつ強くなってる気がしているので油断。そこら辺を今回の戦闘で理解させました。

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