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神隠しによる放浪記  作者: trt
第一章
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現状確認

 巧は混乱する。

 何故、視力回復しているのだろと疑問に感じていた。


 視力が回復する方法は数点あるが、そのどれも巧は試す事は一切していない。

 だから視力は回復するはずがなかったのだが、現実として視力は回復した。

 回復する前なら眼鏡を外し、裸眼のときには周りの視界はぼやけていたが、今は眼鏡を外していても視界がはっきりと見えている。

 ほうけていたが、左手から痛みが走る。


「ぐっぁ…………、きっつ、それに何だか寒い…………」


 眼鏡を手放し左手を押さえた。

 左手には槍を抜いた跡があり、穴が貫通し空いている。

 身体は寒さで震え、穴が空いた左手からは出血は激しく痙攣けいれんし、筋肉が収縮してるとはいえ穴が塞がる事はまずない。

 左手を包み込むように右手に力を込め握ると、巧は気怠さを感じた代わりに痛みが薄れ、落ち着く。右手を放すがそれでも出血はしていたが、それでも先ほどよりかは出血量は少ない。


 巧はポケットの中に入っていたハンカチで応急処置を施す。

 現状確認をするため周りを見回すが、森林ばかりで特に変わった様子はないのを安心すると、次に所持品をチェック。


 ハンカチ、ポケットティッシュ、眼鏡拭き、財布、腕時計、スーパーの袋の六点。


 すぐ帰れると考えてたため、携帯は家に置いてきていたので連絡取れない。

 腕時計の時間で確認すると、〇時四十分と針が表示。

 三十歳の誕生日がきてから四十分ほど時間が経っていたのだ。

 腕時計で確認したときにふと違和感に気づく。


「腕が……細い?」


 腕だけではない、手も足も細く、背が低くなっていた。

 服もズボンも靴も一回り全身サイズが大きく合っていない。

 腕を下に向けると袖が手を完全に覆い、ズボンは腰回りが緩く、足は裾が地面につき、顔を触ると髭はなく肌も若々しい。


「とりあえず家に帰ろう」


 現状がわからない以上、家に帰りたい気持ちが強くなるなっていたのだろう。

 眼鏡をポケットの中に入れ、腕を組み考る。

 襲ってきた緑の生物の事。再度襲われるかもしれないという事。

 巧はいい得も知れない恐怖からか、背筋が凍り、その場所から逃げるように離れた。




 ――――体感時間にして数時間だろうか、巧はそう考えながら疲れたのか息を切らし止まる。時計の時刻を確認すると、丁度一時と針で表示されていた。


「おかしい……」


 違和感に気づいたのは時間を確認してからだ。

 緑の生物と遭遇したのが〇時回ってからとはいえ、一時間以上この公園を移動していた。つまり大通りに、人が通る道に出ていてもおかしくはないはずなのだ。

 円を描くように遠回し、動いているのかと疑問が起きたが、否定はできない。

 巧は地理に関してあまり得意ではなく、知ってる道ならいざ知らず、土地勘がない道なら数時間ぐらい迷う事も稀にあったからだ。


「歩いたせいか暑いな、脱ぐか」


 巧はジャンパーを脱ぐがまだ暑く、結果ズボンとTシャツのみの恰好となった。

 現在の季節は冬、動いて暑かったとしても、この格好だと肌寒くなるのだが、そんなことは一切なかった。

 巧は気にせず歩く。


 しばらくして時計を確認すると現在の時刻は二時十分を回る。


「道が暗いから動きにくい、それに腹が減ってきたな……」


 辺りを見回してもコンビニどころか人っ子一人見かけない。


「あれから何も食べてないっけ、何であの時コンビニで食べ物買わなかったんだろ……」


 愚痴をこぼしても仕方がない状態だったが、あの様な事態に陥る事を想定するわけがない。

 しかも一向に道という道は見つからず途方に暮れ、疲れたのか地面に座りこむ。


 ふと左手を見るとハンカチは全体的に赤くなり、他の色が見えない状態。血が固まったのか、出血はそこまで出ていない様子。

 左手の指を動かそうとすると、一本一本ゆっくりだが確実に動く。五本とも痛みを伴うが動かす事は可能であった。

 安心したのかそれとも疲労がたまっていたのか、まぶたが重くどんどん閉じていこうとする。横になった巧は右手で左手を掴むのを確認したら目を閉じ意識を失うよう寝る。

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