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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第二章
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引きニート脱出

 時刻は朝八時を回っていた。

 外は強めの土砂降り、そんな雨を巧はベッドの上で布団に包まれ顔を覗かせ、窓の外を見上げていた。

 窓を閉めないと雨が入るだろうと思われるが、窓にはガラスみたいな物(・・・・・)が取り付けられていた。


「しかし雨だから憂鬱だな……。今日も引きこもろう」


 そう、ベッドから動かず部屋に引きこもっていたのだ。

 動くとしても、一階での食事、井戸水での顔洗いにトイレに風呂。

 あの洞窟で手に入れたアイテム使用と魔法練習としては、井戸裏と自室でしている。魔法を使える異世界に来てまで引きニート生活を体験してるとは巧自身、夢にも思わなかったようだ。

 

「騒がしいな……近くに気配は三つか?」

 

 するとドアが開かれた。

 ドアが開かれた先に立っていたのは、イルベルとロウナにエルの三人。


「タクミ、今日はギルド行くよな」

「あー、今日も雨だからこのままのんびりしたいような」

「昨日もその前もタクミは同じこと言って断ったよね? 今日こそ行くよ」


 そう言ったのちエルは巧から布団を引き剥がした。


「ああ、俺の防護盾がああああぁぁ……」

「何言ってんのよ」


 手を顔に当て呆れるロウナ。


「仕方がないな、行ってやろう」

「そうこなくっちゃな。それじゃ俺達は先に一階行って飯食べてるから早く来いよ」


 そう言って一階に下りるイルベル達。

 部屋からいなくなったのを見送るとギルドの事を考えていた。


「そういや暫く会ってないな、あの獣耳娘と巨乳エルフ娘。この機に拝みに行くか!」


 美人とも言える二人の事を想像するとやる気を出し起き上がる。

 美人の二人を考えると内心ワクワクする、中身は三十のおっさんであった。


 一階に下りると、先に朝ご飯を食べていたイルベル達がテーブルに座っていたが、無視して巧はカウンター席へと移る。


「タクミもこっちへ来て一緒に食べようぜ」


 イルベルのほうを向くと、イルベルを中心として左右にはロウナとエルが座っていた。まさに、モテ期がきたモテモテ男のハーレム状態。

 巧はその光景を見て思わず舌打ちをした。


「嫌だよ、だってお前らの近くで食べてるとなんだかうざい。それに周り見てみろよ」


 周りの男達は、イルベルに嫉妬の視線を向けていた。


「だからお断りだ」


 そう言いつつ朝飯を平らげる。


 外に出ると未だ土砂降り。

 巧達はローブについていたフードを被り雨の中を移動し、ギルドに到着する。

 中には複数の冒険者達と数人の受付嬢がいた。


「タクミさん、ロウナさんこの前の報酬の事ですが」


 受付嬢に呼び止められると、巧はその声の主に顔を向ける。

 獣人の特徴である獣耳に尻尾をつけた美人の女性。シファが受付に座っていた。


 シファのその言葉に巧達は止まる。

 この前の報酬、つまりは遺品または白い魔物のどちらかと決まっていた。


「ああ、それでどうなりましたか?」

「はい、現場へ冒険者を派遣に向かわしたのですが、一応あの魔物らしい痕跡と思われて間違いないでしょう」


(あのゴリラの場所は教えていないはずなんだが、優秀だなその冒険者)


「それから洞窟もあったので調べてみると大量の遺品はまだ残っていました。その遺品はタクミさん達の取り分になりますのでどうしますか?」


 顔を見合わせる巧達。


「何度も言うが、あのときタクミが来なかったら俺等はもうこの世にいなかった。だからタクミが決めていいぞ」


 ロウナとエルも頷く。


「それじゃそれ全て換金してほしい。それを俺らが折半するので」

「わかりました。お二人のドッグタグを受け取ってもよろしいでしょうか?」


 巧とロウナはドッグタグをシファに渡す。


「では少々お待ち下さい」


 換金が行われ、受け取った金額は総額にて金貨十枚分と巧とロウナには追加で金貨五枚ずつ支払われた。

 巧達が手に入った装備も含めたら白金貨一枚以上の価値にはなっていただろう。だが巧達はそれに気が付いていなかった。


(一気に金持ちになった気分だ)


「それからタクミさんとロウナさんは、あの危険な魔物を討伐の功績が残りました。ロウナさんは★五つ、タクミさんは★三つとなります。ロウナさんに関しては今から昇格試験をしてもらい、結果によって合否がでます。それでも昇格試験受けますか?」


 ロウナは不安そうに巧達を見つめる。


「自信ないかも……」


 急に自分一人だけ昇格試験と言われたのだ。

 依頼成功すればロウナは★五つの昇格、失敗すれば★三つのまま。

 デメリットが低い以上、巧達は応援することにした。

 ロウナの昇格試験は三日、ここから一日かかる沼に生えている”ベイスヒ”と言う薬草を一人で採取する依頼である。


「頑張れよ。ロウナならやればできる子だって信じてるから」

「何か馬鹿にされてる感じがする」


 口を膨らませるロウナ。

 そんなロウナに小声である事を話す。


「(もし昇格できればイルベルがお祝いに、その日一日いい所に連れて行ってくれるかもしれんぞ?)」


 それを聞きロウナは急にやる気をだした。


「それじゃ行ってきます! エル、ちゃんとイルベルの事見張っといてよ? お願いね!」


 飛び出して行ったロウナ。

 急な変化に戸惑いを隠せないイルベルとエル。


「イルベル、ロウナが昇格試験に合格したら、ゴブリン亭に戻らず何か祝ってどっかずっと連れて行ってやれよ? 祝わないと可哀想だろ?」

「あ、ああそうだな。昇格したのにお祝いなしじゃ可哀想だな」


 昇格成功したら、そのまま帰って来ないでほしいと巧は思っていた。

 白い魔物から無事ゴブリン亭に戻った夜、かなり盛んだったからか次の日イルベルは顔がゲッソリしていたのを巧は覚えていた。

 行為は激しく、ロウナとエルの喘ぎ声は壁を筒抜けして聞こえていたため、巧は色々と悶々としていたのだ。

 巧達は掲示板のほうへと向かい依頼を探していた。


「俺等はこれにするがタクミは何か良いのあったか?」

「いや、ない……」

「それなら一緒に受けるか?」

「嫌いいわ」


 一点の迷いもない即答。

 そう聞くとイルベルは落ち込み受付へ行く。


「ふう、何かないか……ん?」


 巧がある依頼を目にする。


 討伐 ★★★★★

 場所トレン村にてレッドキャタピラー討伐

 討伐証明必要

 期限 三日迄

 達成報酬 白銀貨 十五ルペ


 前から張り出されていたレッドキャタピラーの依頼。


「ん?」


 その依頼に手を伸ばし、剥がす一人の人物、シファであった。

 シファは新しい依頼へと張り替えていた。

 内容は変わらず、依頼先と討伐対象は同じ。ただし期間と報酬が上がっていた。


「あのシファさん、これ何で上がったの?」


 依頼には期間は六日、金額は白銀貨十六枚となっている。


「これは依頼者が依頼内容の変更をした為です。依頼は通常依頼者が申し込むのですが、依頼期間が過ぎたり、直接依頼者が来て依頼の断りをすれば剥がされます。今回は変更ですので、依依頼者が直接来て変更手続きを申し込まれました」

「そうなんだ、なら今依頼者っているの?」

「はい、あちらに」


 巧はシファの手を向けた方向に依頼者はいた。

 依頼者は二十代後半の青年であった。雨が降っているからかローブを羽織っている。


(場所わかんないし連れて行ってもらえるのかな?)


「この依頼受けたいのだけど、依頼者と一緒に行く事ってできるの?」

「依頼者と同行する事は可能ですが、この依頼を受けられるのですか? 確かにタクミさんのランクなら受け付ける事は可能です。ただ正直、依頼者がいる手前申し上げにくいのですが、報酬に関してなら他のを受けられたほうが稼ぐのにもお得ですよ?」


 他の依頼と比べても安さが伺えた。

 だが村までの道のりや依頼先までの到着時間などを考えれば、どちらがお得かは明白ではあった。


「大丈夫だよ、この依頼受けようと思うよ」

かしこまりました」


 受付を済ませると、依頼者の元へ歩み寄る。


「初めまして、山内巧だ。依頼を受けさせてもらったよ」

「え、この少年が?」


 驚き不安そうな顔をする。


「タクミさんは受け付けているレッドキャタピラーよりも強いランクの魔物を退治した経験があり、ランクは★三つでギリギリではあります。しかし、今回の依頼条件は十分に可能だと判断しました。不満があるのでしたら依頼の解除を受け付けますが、どうしますか?」


 さりげないフォローと相手にフックをかますシファ。


「いや……、このタクミ君に来てもらうよ。こちらもどうしても冒険者に来てもらわないといけないから。では早速行こうか」

「ああ」


 巧はギルドを出る前にシファのほうへ振り返る。


「ありがとうシファさん」


 そう言い残し依頼者の後を追うように、ギルドを出て行く。

実はシファかメルエどちらにしようか迷っていましたがシファにしときました。

理由:何となく

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