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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第一章
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死闘

長かった

 飛び込んできたゴリラは、巧とロウナに気づいてないのか振り向いていない。


 (何で……そんな……)


 そんな事を考える巧、焦る恐怖、手には手汗がかいて震える。

 横に視線を向けると、ロウナも同じような感じだが歯をガチガチと音を鳴らせ顔は青ざめていた。

 この前の戦闘で腕を失っているのだ、その生物に対する恐怖は巧以上のものだろう。しかし何故、どうして、どうやって、巧達は混乱する一方。もしかしたら生き返ったのかもしれないが巧は違うと考える。


 何故なら顔がゾンビみたいに顔が土色になっていない、いや魔物に対して顔が土色になるのかとはわからない。巧が水レーザーで撃ち抜いたはずの腕と足を確認してみると、穴もしくは怪我の痕跡もないのだ。

 ゴリラは巧達に気が付いたのか、ゆっくりと振り返る。

 巧達が最初に思う事それは違和感。あの時のゴリラよりどことなく大きい、そしてゴリラは口を開き言葉を発する。


『人間、私ノ弟ヲ殺シタノハオ前達カ?』


 ゴリラは落ち着いた様子で巧達に聞いてきた。

 巧はその言葉を聞いてハッと我に返る。巧は相手が何を言っているのかわかるのだが、ロウナは聞こえているのかとロウナの方を一瞥するとやはりまだ恐怖に怯えていた。


「お、弟? 弟とはわからないが、お前と似たような魔物と対峙はしたが」


 弟、そんな言葉を聞き巧はこのゴリラは兄弟だと察する。


『私ノ弟ハ人間ニ殺サレタ。勇敢ダッタ、ソンナ弟ガ殺サレタ人間ドモノ卑怯ナ手ニヨッテ!』


 次第に声が大きくなるゴリラ。


「そんなのは知らないが、人間を襲って殺したのだろう。だったら殺されたって道理じゃないのか?」


 巧はあくまでも冷静な対応で話す。


『ソンナノハ知ラナイ! 大切ナ弟ヲ! 殺サレタト知ッテ弟ヲ殺シタ人間ヲ殺ス! ソシテ弟ノ連レテ来タ人間モ殺ス!』


 弟の連れて来た人間と聞いて巧はロウナの仲間が生きている事を確信した。


「俺等だってそもそも魔物を退治することはない、害をなすから退治するんだ。お前の弟だって人間に何らかの脅かす事をしたから退治されたんじゃないのか!」

『オ前達ガイナケレバ!イナケレバ!弟ハ苦シマズニ済ンダ!』


 このままではまずい、そんな巧は危機感を覚える。


『ウオオオオオオオオ!』


 ゴリラは巧達に突進してきた。


「チッ!」


 巧は水のレーザーを弟ゴリラの時と同様の速さで放つが、当たる寸前に横に飛んで避けた。


「なっ!」


 巧は避けるとは予想してなかったのか思わず声をだしてしまった。

 着地したゴリラは動かず何かを考えるように止まる。今追加攻撃しようとしても再び攻撃されるだろうと予想し諦める。

 巧は内心焦った、直線状とはいえ今巧が一番有効且つ強力な攻撃方法を簡単に避けられたのだ。前のゴリラの時はギリギリだったが、今回のゴリラは反応速度も速い。


「タクミ!」


 突如声がかかる。声の方へ顔を向けるとロウナがいた。

 震えていたが巧を落ち着かせようとしたのだ。


「ありがとう」


 ロウナに礼を言うとゴリラのほうへと再び顔を向き直した。


『サッキノ水ハオ前ガ、水使イ……オ前ダッタノカ! 大事ナ弟ヲ殺シタノハ!』


 そう吠えたと同時にゴリラは再び突進。

 突進スピードは先ほどより速く迫る。

 再び水レーザーを放つが、再び横に飛び回避され、着地と同時に今度は前に高く飛ぶ。空中に飛んだ事はそこから移動が不可能と同義、巧は飛んだゴリラに対して心を落ち着つかせ、手を突き出し水レーザーを放つ。

 水レーザーは直線状のゴリラのほうへと向かいゴリラの体に当たり貫かれる…………はずだった。

 だが、ゴリラは予測していたのか顔が笑う。

 巧は理解できなかった、移動も不可能、確実に水レーザーはゴリラを貫く。そのような未来しかみえないのだが、それでもゴリラは余裕の表情を浮かべていた。

 その答えが、ゴリラは水レーザーに当たる前に、空中で手を何か(・・)に叩くと真横へ移動し攻撃を避けた。


「え!」


 驚くのも無理はない、普通なら横に避けることも物理的にも不可能なのだ。

 だが方法は一つだけある、それが魔法。

 何かしらの魔法でゴリラは横に避け回避不可能な動作を可能にした。

 そして軌道にずれたゴリラは再び空中移動し巧達に向かい攻撃する。


「ぐあっ!」

「きゃあ!」


 巧達の近くの地面を攻撃したゴリラ、その攻撃の衝撃により巧達は左右に吹き飛ばされる。

 運が良かったのは巧達が直接攻撃を受けず外していたのだ。いやワザと外したと言っても過言ではない、狙いをつけて今の一撃で即死させる事も可能だったはずだ。それをしなかったのは、巧達を弟のかたきだからか嬲り殺しにするのかもしれない。


『ドウダ、ドウダ! 驚イタダウ。オ前達ノ攻撃ナンゾ受ケルハズモナイ! 抵抗セズ大人シク俺ニ殺サレル気ニハナッタダロ!』


 確かに初動を避けられ、次の攻撃も避けられた。次もその次も避けられる、そんな誰もが予測できる事を巧達は現実に突きつけられる。けど巧は立あがった、大人しく死ぬよりかは抵抗したほうが勝機が残るとわかるからだろう。


「ぐ……確かに攻撃は当たらないだろう、だけどそれでもここで大人しく死ぬよりかはましだ!」

『……ナラモウ終ワラセテヤル!』


 ゴリラは巧に向かって飛び込む。巧は無駄だとわかっていても範囲がレーザーより広い水ビームを撃つ、それを見越していたかの如く、ゴリラは炎の魔法をぶつけ相殺。炎と水は蒸発し水蒸気になり辺りを水蒸気の霧で覆われた。


 (あの時と同じか)


 そう、この前と同じ状況を作っていた。

 しかしあの時とは違い巧は片腕を折られていない、この差がどう影響があるのか誰にもわからない。あの時はまだ感知も未熟だったが、今はゴリラの動きがわかっている。


(いつくるのか……)


 緊張感が走り、巧は喉をゴクリと喉を鳴らす。プレッシャーがかかるり、下手したらこの一撃で死ぬかもしれない。

 この前は運が良かった、黒鉄の刃のメンバーが近くにいたから巧は助かっていたからだ。しかし今回はそのメンバーはいない、助けてくれる人はいないのだ。

 そして巧が死んだら確実にロウナも死ぬ、そんな巧の顔から汗が垂れる。

 巧は気配に注意しつつも目で辺りを観察する。

 ゴリラが真上に飛ぶ、巧は無駄だとわかっていても水のビームをジャンプしたゴリラの位置に撃ち放つ。

 蒸発した音が聞こえたと同時に、巧が何かの手によって全身を押さえつけられる感覚を味わう。両手と膝を地面につき、抵抗し立ち上がる事は現状の巧の力では無理なのは理解する。力を抜くと完全に地面にへばり付くからだ。


「な、何で上から押さえつけられてるんだよ……」


 何かはわからないが押さえつけられてる間、水蒸気は晴れ周りの景色は映る。

 晴れ方を見ると不自然な感じであり、どこか巧の周りから流されるようだった。巧は動くことができず、両手と膝を地面につけ、それ以外は動くことができないほど重たかった。

 周りを見るとロウナは立ち上がっていたが、身体が震えていたのか見ているしかなかった。ゴリラはこちらに近づいて来ている。巧の目の前まで近づいてきたゴリラ、そのゴリラの腕が横に広がり巧の体を殴りつける。

 巧は抵抗できなく吹き飛ばされた。


「タクミ!」


 巧が殴り吹き飛ばされたのを見ていたロウナ、ロウナは何もすることができず眼から涙を零す。それはこの前の仲間が、白いゴリラにやられたのを被るように思い出すようだった。


「よくも……よくもタクミを!」


 ロウナは立ち上がる。自分への怒りなのかゴリラへの怒りなのかはわからないが涙が止まり恐怖はなくなる。ゴリラに向かって剣を持ち突進するが、確実に勝てないのは分かっているだろう。それでも巧や仲間の敵を取りたい、そんな風に考えながら突進する。

 そんなロウナをニヤニヤと見るゴリラ、ゴリラからしたらロウナはただの虫けら、特に注意する必要がない人物だった。だけど来たからには降りかかる火の粉は払わないといけないからか、ロウナを相手することにした。

 近づくロウナ、ゴリラはロウナが振った剣を払い飛ばす。

 素手になってもロウナは殴ろうとしてきたのでゴリラは手をあげ振り下ろそうとしたとき――――


 ゴリラの横腹に穴が空き貫通していた。


「え?」


 一瞬何が起きたのかわからなかったロウナ、それはゴリラも同じであった。


「やっと当たったよ」


 その声の方向に視線を送ると巧が立っていた。


「タクミ!」


 口元を抑えロウナは再び涙が出始めた。

 ゴリラは横腹を抑え、尻餅をつき後ずさりをした。

 そんなゴリラに巧は近づく。


「悪いけどロウナ、ゴリラから離れてくれ」


 危険だっただろうか、ゴリラに近すぎるロウナを遠ざけるよう指示した。

 ロウナは素直に頷き離れると、巧はある程度ゴリラに近づけ、構えた。


「さて、続きをしようか」


 そう言って飛び出した。

 ゴリラは危険を感じたのか横腹を抑え、その場から飛び上がり巧から遠ざかるよう逃げた。だが巧は逃がさないように駆け出す、そのスピードは速く何かに押されているかの如くスピードであったため、すぐに近くまで追いついた。


 ゴリラは振り返り、巧を叩き落そうと力を込め手を振るおうとする。

 巧は見越してたかのように飛ぶと、通常のジャンプより数段高く、ゴリラはそれを見逃さないとしたか、炎を飛ばして巧を焼き殺そうした。

 だが巧は当たらず空中であり得ない方向へ避け、ゴリラに水レーザーをお見舞いした。

 驚くゴリラ、その為避けるのに反応が遅れ水レーザーを腹に食らい、そのまま前のめりに倒れた。

 ゴリラはまだ息がある、巧はゴリラの背中の毛持ちと穴の開いた横腹に手を突っ込む。ゴリラは余程痛がったのか、暴れはじめて巧のローブと服を引っ張りあげ離そうとするが、巧はゴリラに離れないよう必死にしがみつく。


 そしてゴリラの体内に炎を注ぎ込んだ。


『ギャァァアアアアアア! 熱イ! 熱イ! 助ケテ! 助ケテェェエエエ!』


 ゴリラは巧を掴みあげ放り投げると、暫く暴れてから動かなくなった。

 飛ばされた巧は気絶している、MPは少し残して自分で飛ぶように残してたらしいが無駄に終わった。


 こうして白い魔物との死闘は幕を閉じたのであった。

読み直してみたら。いつの間に熱血キャラにさせたんだろ?てかこんな動けるキャラだったけかな・・・

まあ死を間近に迫って仲良くなった仲間が死ぬかもしれないから流石に変わったのかと思っててください。


まだ話は続きます。

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