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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第一章
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希望からの絶望

あの人が再び少し登場するよ

 朝、ベッドから起き上がると巧は昨日の事を思い出す。

 黒鉄の刃のメンバーと酒の飲み会をして巧がメンバー全員を酔い潰す。

 巧自身、元々酒に強く大抵の酒なら飲めるだろうと自負していた。

 黒鉄の刃のメンバーと飲み比べしていた時に不正はしていたが、誰にも気づかれてはいなかった。

 この世界では酒に関してなら、成人が十五歳となるので巧は年齢を満たしていた。


「さてと今日はバックパックでも買いに行くかな」


 扉を開け廊下に出るとロウナを発見する。


「ロウナおはよう、昨日どうだった?」

「あ、おはようタクミ。昨日は探してみたんだけど見つからなかったの……。とりあえず、今日も探しに行ってみようかなって」

「そうか、俺も探しに手伝おうか?」

「え? 手伝ってもらうのは嬉しいけど、私の予定にタクミを突き合わせるわけなにはいかないと思うのよ」

「いいって、気にすんなよ。困った時はお互いさまだしさ、それにもうあの白い魔物はいなくなっただろ?」

「もういない……そうね、もういないのね。わかったわ、手伝ってもらってもいいかな?」

「おう、任せろ」


 一階へ下り、朝食を済ませたのち巧とシロは外出した。

 二人は何が必要かを話しながら歩いていた。


「回復アイテムが切れかけてるから知り合いがやっている店に買いに行こうと思ってるの。だから先にちょっと付き合ってもらってもいいかな?」

「ああ、別に良いよ。あ、俺もバックパック買いに行かないと」

「そうなの? ならバックパックも買ってから行きましょうか」


 先に道具屋へと向かった。

 店の中に入る二十代前半とも思える、若い女性のエルフがカウンターに座っている。


(わっか、鑑定を……何だかバレそうな気がする、諦めるか)


「あら~いらっしゃい、今日は何を探しているの?」

「ええ、回復アイテムが切れかけてるから買おうと思ってね」

「これね、そう言えばロウナ達もあの白い魔物に襲われたんですって? 大丈夫なの?」

「うん、昨日探しに森へもう一度行ったのだけど見つかってなくて……。だけど今日も探してみようと思うの」

「そう、見つかるといいわね。ところで後ろの子は?」

「この子はゴブリン亭に泊まってるタクミさん。今日私と一緒に探してくれる人なの」

「へえ、私はユミベルよ。よろしくね」

「よろしくユミベル」


 その後、数度の会話をしたのち、HP回復アイテム《赤ポーション》、MP回復アイテム《青ポーション》を多く購入する。

 この世界の回復アイテムは試験管タイプ。その上にコルクで閉じて中身が零れないようにしている。

 値段も相応高く、HP回復量によるが一つ銀貨一枚以上、MPも同じで一つ銀貨五枚以上、命を守る仕事だけあってか売り上げは悪くないのだ。


(この試験管魔法で作られてて、その場で捨てても大丈夫とか本当エコだな)


「それじゃ行くわね」

「ええ、またご贔屓ひいきにね」

「あ、そのポーション私が持とうか? これでも一応、収納袋インベントリ持ちだよ」


 インベントリ、その言葉を聞いて巧はゲームの事を思い出す。

 物がある程度入る便利箱、優先的に持っていたほうがいいだろう便利アイテム。それをロウナは持っていたのだ。


「マジでか! 是非、そして見せてほしい」

「え、ええ。これよ」


 巧に見せたインベントリは袋の形をしていたが、広げれば十センチほどの大きさに広がり底が見えない仕様。巧はポーション渡すとどんどんと投入していく。

 そして手持ちのポーションは全てインベントリ内に収まった。


「すげえ、便利すぎだろ絶対欲しいな」

「そうね、冒険者なら誰しも持っておきたい必需品でしょうね。けど買うのにそれなりのお金がかかるのよ?」

「マジで?」

「ええ、私は両親から貰ったこれがあるから買わなくても良かったんだけど、普通買うなら最低でも金貨数十枚ぐらいと聞いた事があるよ」


 金額を聞いた巧は絶望の色を見せた。

 現在の巧の持ち金を全て合わせても届かない。

 どう計算しても足りていないのである。


「今の冒険者も、インベントリ持っていない人多いから、そこまで気にする必要はないと思うよ? それにバックパックだってまだまだ需要あるわけだしね。私は本当運が良かっただけだから」


 巧の姿をみて慌ててフォローをするロウナ。

 そんなフォローするロウナを見て巧は気を取り直す。


(まあ落ち込んでてもしょうがないか、いつか手に入るだろ)


 場所は袋店に移る。

 道具屋では基本アイテム関係と作業道具数点であるが、バックパックみたいな鞄は専門店のほうに置いていた。


「ここね」


 中に入ると、インベントリやバックパックの数々の商品が陳列。小さい小物入れから、軽車両が楽に入りそうな袋まで様々な大きさが置かれていた。

 店に置かれている袋の金額を巧は見てみると、下は銅貨十枚から金貨百枚以上表示。巧がインベントリであろう袋を持っていると、ロウナが話しかける。


「過去に何人かがインベントリを持ちだそうとした人がいたんだけど、そのまま外に出ようとすると、探知にかかり店主が強力な魔法を使って飛び出してくるんだって。そして外に出た人がいても店主がことごとく捕まえたとの噂もあってか。店長の二つ名は『鉄壁てっぺきかべ』とささやかれるようになったって聞いたことあるよ」


 勿論そんな事を聞かなくても巧は盗む気も更々なかった。


「やあいらっしゃい、今日は何用かな?」


 店の奥から現れたのは一人の少年。

 見た目は十代、背は巧よりも少し高く、白髪というより少し灰色が混じっている。将来大きくなったらイケメンになるであろう顔で、何よりも巧が気になったのが目が赤と緑のオッドアイ。

 日本にいたら池袋に居そうな感じだが、この世界じゃ当たり前なのだろう。

 巧に見られて恥ずかしいのか目を手で隠す。


「ああ、ごめんごめん。その眼の色が珍しくてね」


 実際、髪の毛に関しては街にいた人たちも様々な色をしていていたので、少年が街に出ていても違和感はない。だが眼のオッドアイは巧が交流した人達の中では少年のような左右が違う瞳の色はいなかった。


「まずいな、眼の色変えれてなかったのか」


 ぼそっと喋ると、少年は目を瞑り開けると眼の色を変えた。

 色は両目とも黒へと変わる。


「ごめんね、ちょっと体質で眼の色を変える事ができるんだ。この事は秘密にしてくれるかい?」


 巧とロウナは頷く。


「えと、バックパックを買いにきたんだけど。金額は金貨二枚以内でギルドで貸しているバックパックみたいな結構物が入って悪くないのを頼みたい」

「わかりました。それじゃあこのバックパックだね」


 案内された先にあるバックパックを巧は持ってみる。ギルドで借りたバックパックより少し小さ目だが、物を入れるには十分な大きさ。


「中は結構入るし、横の袋入れにはポーションやその他雑品も入るよ」

「悪くないんだけど物を入れたときの匂いとかどうなるの? ほら袋の中に血の臭いが充満したら、外にも漏れるかもしれないし、何より血で中から濡れて背中につくとかきついな」

「ああ、それなら大丈夫。このバックパックにも防臭防水耐性がついてるから漏れる事はないよ」

「へえ、お得だね。ならこれを買う事にするよ」

「毎度あり」


 バックパックを購入したのち、店を出る巧とロウナ。


「決まって良かったね。そろそろ探しに行こうと思うけどそういやタクミは武器いいの?」

「ああ、俺は武器は剥ぎ取り用の短剣のみで他は今の所いらないかな。代わりに魔法が使えるからね」

「へえすごいね、羨ましいや。私は魔法を小さい頃に練習していたんだけど一向に使える気配がないから。諦めて剣の道に進んだの」

「なら剣の腕は良いんじゃない?」

「そうね、同ランク相手なら、多分そこそこいい結果残せると思うわね」


 そんな雑談をしながら途中、食料も買い足、街の外へ出た。


「お、坊主じゃねえか。前見たときは坊主が黒鉄の刃の人達に担ぎ込まれて行ったから心配したぞ? その様子じゃ問題なさそうだけど今日も森へ行くのか?」


 声をかけてきたのは門番兵のニスだった。


「ああ、問題ないよ。黒鉄の刃のメンバーが助けてくれたからね。それに今は白い魔物がいるわけでもないし大丈夫だろ」

「そっか、ならそいつらに感謝しとかないとな。けど坊主その魔物がいないからって安心して注意散漫になってたらだめだぞ? 一応魔物はいるんだから」

「それなら大丈夫です。私がついているので」

「お、これはべっぴんさんだな。仲間かい?」

「ロウナと言います。今日、私の仲間を探しに行くのを手伝ってくれるので、一緒に行く事にしました。巧は私が守りますので大丈夫です」


 ニスは一瞬ロウナの腕を見たが、顔からは強い意思を感じとったのだろうか、何も言わなかった。


「そうか、まあ気を付けて探して来いよ。危ないと感じたら逃げるのも恥じゃないからな」

「わかった、忠告ありがとう」


 ニスと別れ、巧とロウナは森の中へと入る。

 森を歩き数時間が経つ、その間ゴブリン達が現れたり犬顔みたいなコボルトも複数現れたが、巧の水魔法とロウナの剣によって薙ぎ払われた。

 ロウナは片腕がないにも関わらず、身体能力を活かして倒す。

 危なくなりそうな所は水レーザーで援護し、お互いを助けて進む。


(今何時だろ?)


 ステータスに表示されている時間を確認すると、時刻は昼の十二時を回っている事に気が付き昼休憩を提案した。


「ぷはぁー、巧の出した水魔法ってすっごく美味しいね」

「ああ、俺もこれには感謝してる。これで助かった所が結構あるからね。あ、MPポーションくれない?」


 青の試験管を渡され巧は一気に飲み干す。

 MPゲージを見てみると回復量は微々たるものだった。


(この世界の回復薬はこんなものなのか? それとも回復が効きにくかったと言ってたし、もしかしてそういう体質になってるのか?)


 食事も終え少し休憩してから移動を開始し、更に数時間経ち始め開けた場所に着いたと同時に何か気配を感じる。


「どうしたの?」


 ロウナは気配を感じないのか巧に聞く。巧はそんなロウナを後目しりめに近づいてくる気配を察知する。


「この気配……まさか!」


 そう言った瞬間、何者かが巧とロウナの前に一匹の魔物が飛び降りてた。

 その飛び降りてきた生物の正体を目にし、愕然とする。


「嘘……」


 ロウナは口元を抑え困惑。

 なんと、あの倒されたはずの魔物、白いゴリラであった。

タイトルでネタバレ感があったかもしれません白いゴリラの登場は次話と分けるべきだったかと思いましたがどうせなら一緒にしたほうがいいと思いこの話でだしました。

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