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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第一章
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白い魔物

 ルビアリタの街の玄関口である門の前に巧は立っていた。

 巧がこの街に来た時でも、多くの人達が門から出入りしているのだったが、今でも多くの冒険者と商人達が出入りしている。巧は門から出ようとしたら、門番に止められた。


「すまないが出る時は身分書の提示、羊皮紙かドッグタグを見せてくれないか?」

「ああ、ごめんごめん」


 ドッグタグを門番に見せ確認させる。


「よし、大丈夫だ。すまないな止めてしまって」

「いいよいいよ、そっちも仕事なんだから気にしてないよ」

「今後も街へ出入りする時もドッグタグを提示してもらえればいいから」

「わかった。そういやゴブリンの居る森ってどこかわかる?」

「ゴブリンか? この門を出てからすぐ近くの森にいると思うが、武器持ってないけどまさか素手で倒すのか?」

「いや、俺は魔法が使えるから素手じゃなくても大丈夫」

「杖持ってないのに魔法使えるとは……まあそれなら大丈夫か、気を付けてくれ」

「ああ、わかったありがとう」


 門番と話しを終え街の外に出る。


「さて、初めての討伐だ。気合い入れてやるかな」


 外を見渡すと草原や森などが見え、森に近づくと奥が深そうなのか先まで木々で覆われている。森に入る前に巧は辺りを見回してみると、数人のパーティメンバーであろう冒険者達を発見する。


「そこの少年、まさかとは思うが君も白い魔物の退治しに行くんじゃないだろうね?」


 声がかかったほうへ見上げると、茶色の髪の毛が肩まで伸び、全体的に細身だが身体は筋肉がつけられていると判断できる。鉄の胸当てを装着し、首には青いドッグタグをかけて、見た目からしたら二十代前半と思われるであろう好青年が立っていた。


「白い魔物は知らないけど、ゴブリン討伐依頼のために森に入ろうと思ってるよ」

「そうなんだ、けど今この森にはランクの高い白い魔物がいると言われてるから奥まで行くと遭遇する可能性があるから気を付けろよ」

「わかった、知らせてくれてありがとう」


 青年はパーティーメンバーと一緒に森の中に入って行った。


(まあ、あの人達がやっつけてくれるだろうし大丈夫か)


 そう考えつつ巧も森の中へ入って行った。

 木々が多く奥まで見えやすい、暫く歩いているとゴブリンを複数発見する。


「お、まずは一匹」


 発見と同時に巧は水レーザーをお見舞いしようとした瞬間、巧の手はピタリと止まる。


「けどあいつって生きてんだよな。俺が殺すとなると……」


 巧が迷い視線を外している間にゴブリンは自らの危険を察知すると、手の棍棒を持ちつつ巧に近づいてくる。


『死ネ人間!』

「はっ……!」


 振り下す棍棒。

 だが巧は運良く避ける事ができた。

 逃げるように逃亡しようとするが、ゴブリンは巧の足を狙い攻撃した。

 ゴツっと鈍い音。


「ぐっ……ぁぁぁあああああああ!」


 ぶつかった際に痛覚が巧を襲う。

 何度も転がり止まると、巧は足を押さえた。


「いってえええええええ、痛い痛い痛い痛い痛い!」

『今度コソ死ネ!』


 ゴブリンはとどめを刺すように棍棒を振り上げようとした瞬間、巧は苦痛の表情を向けながらも水レーザーを発動させゴブリンの顔に貫かせた。


「くううううぅぅぅぅ……あれ? 痛みが引いてきてる……?」


 足を触ると先ほどまでの痛みが無くなり、少し叩こうが足を地面に叩こうが痛みがないのだ。

 巧は立ち上がるとゴブリンを見下した。

 レーザーによってゴブリンの頭を貫通しゴブリンは絶命する。

 呆けるようにしばらく見続けると、巧は吐気を催すような気分になり口を押える。


「くそっ……気持ち悪いな……」


 その場を放置し、巧は別の場所へと移動した。

 しばらく歩いていると、五匹のゴブリンの群れを発見する。


「ふう、さっきよりかはだいぶ気分が落ち着いてきたけど、今度は失敗すれば即座に死ぬか」


 緊張が高まる。

 巧はゴブリンの一匹が離れるのを待ち続けた。


「今だ!」


 場を離れた一匹は水レーザーに貫かれ絶命。

 そんな様子を見ていた他ゴブリン達は、奇襲されているとは微塵も思っていなかったのか、倒れた仲間に近づくゴブリン達。巧は他ゴブリン達も同様に水レーザーで殲滅させた。


「大体片づけたかな」


 一通り片付いたのを見計らうとMPを確認。

 MPは一ミリ程度しか減っていなかった。


「確かゴブリンの耳を切り取ればいいんだっけか。うわーきついな」


 短剣を取り出し、倒れているゴブリンの耳を触り切り取りると、切り取った耳の感触は人間の耳に近い触感だったため少し気持ち悪さが襲う。


「こんなのをあと数度しないといけないのか…………仕事とは言え慣れなければ精神的に病みそうだな。よく小説の主人公達はこんなことしてるな、すげえわ。とりあえずこの死体はこのままでいいか」


 巧は残りのゴブリンの耳を切り取り、バックパックへと入れる。バックパックはまだまだ入る余裕があるため、水で手を洗い次へと探す。

 暫く歩くと再びゴブリンが複数発見し、水レーザーで殲滅してからの剥ぎ取り作業を繰り返す。数時間が経ったのち作業が完了して気が付くとバックパックが重たくなっているのに気が付く。


「そろそろ帰るかな…………ん?」


 MPを確認してみるとゲージが半分ぐらいになっていたのに気づき、振り返ろうとした矢先、巧は何かの気配を感じた。


「何だこの気配、まずくね?」


 あの時の狼と同じ強者の気配がしたので警戒を怠らないようにした。

 気配はどんどん近づき、近くの木が揺れたのを確認する。巧はその木の上を見上げたら白いゴリラが居た。

 ゴリラは巧に気が付き手を上げ拍手をして歓迎いるようであった。巧は狼に似た恐怖を感じる、絶対死との恐怖。そんな恐怖がゴリラから発し、巧は後ずさりをした。

 ゴリラは木から飛び降り、ドラミング行為を行いながら巧に近づく。

 巧は恐怖からか動けなかったのかゴリラは巧の前で止まった。


(あかん、ちびりそう)


 巧は更に一歩後ろに下がると、ゴリラは腕を上げ巧に向かって手を振り下ろす。巧は後に飛ぼうとしたが間に合わず、ゴリラの攻撃を受けると巧は抵抗もできず吹き飛ぶ。

 そんな巧を見てゴリラは両手を叩き大笑いをした。


『ガハハハ、ヤハリ人間ハ脆クテ弱イナ。アンナノデ吹キ飛ブナンテ弱スギルゾ』

「ぐっ……」


 巧は体と頭を守ろうと咄嗟に腕と手で庇い、ゴブリンの耳が大量に入ったバックパックのクッションのおかげで地面に激突は免れ意識を失う事はなかったが、庇った腕は折れていた。だがここで立ち上がらないとやられると危険に感じた巧は立ち上がる。


『人間、俺ノ攻撃ヲ受ケテマトモに立チ上ガルトハ、オ前が初メテダ』


 そう言うとゴリラは巧に向かって突進。

 巧は折れていない方の手をゴリラに向けた。その行為がわからないゴリラは気にせずそのまま巧に突っ込もうとしたとき、巧の手から水のレーザーが飛び出す。

 ゴリラは急に出てきた水のレーザーに理解ができなかったのか反応に遅れ、貫かれる。貫かれた部分は胴体ではなく左腕と左足、巧がダメージもなく腕がへし折られて、痛みでズレていなければ確実に胴体を貫いていたのだ。

 貫かれた瞬間、茫然として立ち止まると、ゴリラは腕を見たのち再び巧のほうを見返す。巧の顔はしてやったりと表情を歪めたのを理解したのか、ゴリラは激怒した。


『人間如キガ俺ヲ怪我サセタダト! 人間如キガ! 人間如キガ! 殺シテヤル!』


 ゴリラの目の前に火の塊が現れる。当たれば人を簡単に燃やせれる威力はあるだろう。ゴリラが出した炎は巧に向かい放たれ、巧も応戦するように水を放つ。

 外れたり水の威力が弱ければれば水は即蒸発、巧は炎に貫かれ焼かれ焼けゴケ死ぬだろう。しかし、放たれた炎と水はぶつかり相殺され、水蒸気で周りが白く覆われ視界が見えづらい状態になる。


(周りが見えない……残りHPは半分切ってるしMPも残り少なくなっているのに)


 MPゲージは残り四分の一になっていた。巧にとっては水蒸気が晴れたら正念場だが、相手は野生動物でもある。

 この霧の中、攻撃してくるかもしれない。

 だが、目の前に現れれば対処はできるが、一向に表す気配がない。


(気配はまだする、どこだ…………はっ!)


 右側の霧が動くと霧の中からゴリラの手が出てきた。

 巧は防ごうとしたが間に合わず、ゴリラの手をまともに食らい再び吹き飛ばされ、ゴリラは巧を吹き飛ばした感触がわかると満足気になった。

 水蒸気が晴れ、巧とゴリラの視界は開けてくる。


『ドウダ人間!』

「うっ……」


 巧は動こうとする。ゴリラからしたら巧にぶつけた攻撃は渾身の一撃、それを巧はまともに食らい吹き飛ばされたのだ。

 ゴリラの経験則からして普通ならあの一撃で死んでもおかしくないはずだった――――のだが巧はそれでも動こうとした。

 ゴリラはそんな巧を見て内心焦る、炎魔法が相殺され腕と足に食らった水の威力、もし次起き上がってきたときには勝ち目がない。今まで対決してきた中で一番危険な人間。そんな気持ちがゴリラの表情が変化した。


『うおおおおお!』


 ゴリラが叫び巧に近づこうとした、その瞬間。

 地面から光の衝撃波がゴリラへと放たれた。

 咄嗟に飛び退き巧から離れ距離を置く。

 どこから光の衝撃波が出て来たのか、ゴリラを辺りを見回すと四人の冒険を発見する。


「流石に当てる事はできなかったか」

「本当、当ててほしいっすよ」

「しょうがないですよ、あの距離からじゃ当てる方が相当難しいですし」

「少年ちょっと待ってろ、今回復してやるからな」


 巧は目を開けようとしたが疲れているのか開ける事ができない。

 だが、その声に巧は安心したのか、気が遠くなり気絶した。


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