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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第六章
133/144

新たなる衝撃


 ルベスサが飛んで行った巧に追いつくと、目にしたのはルルシの身体を斬り伏せ決着がついた瞬間であった。

 巧がルベスサに一瞥するが、無視をするように視線をルルシへと戻す。

 胸から腹にかけ斬り裂かれたからか鮮血が止めどなく流れ落ちていた。

 息はまだあるが、抵抗を見せる素振りもなく、なるがままといった様子である。

 あの時の逆だとルベスサは感じた。

 巧は剣を上げ、止めを刺すようにルルシの心臓へと剣を突き立てた。

 苦しむように暴れはじめるが、ほんの数秒ほどで収まりルルシは絶命した。

 剣を引き抜くと剣に付着した血糊を薙ぎ払うように振り落とす。


「タクミ……?」


 ルベスサが巧の名を呼ぶが、巧は反応しない。

 ルベスサは巧へと近づくと、巧は反応するように持っていた剣でルベスサを斬りかかろうとした。

 視覚で理解していてもルベスサの身体の反応は追いつかず、避ける事もできない。

 剣は寸の所で止まり、引いた。


「ああ、ルベスサか無事だったんだな」


 巧の行為にルベスサは声を荒げた。


「危ない。あとちょっとで僕が斬られてた所だったよ!」

「悪いなルベスサ。気を張ってて、近づく奴が誰であろうと反応しちまった」

「もう……まあ確かに僕も終わったからって不意に近づいたのは悪かったけどさ。タクミ、とりあえずは仇はとれたんだね」

「そうだな、こいつは死んだ」


 ルルシの死骸を見つめる巧とルベスサ。

 巧の顔は仇をとれたのにも関わらずあまり嬉しそうにはしない。

 ルルシを倒した所でシロは生き返りはしないという代償があまりにも大きすぎた。

 ルベスサは何かを思い出したかのように巧に聞いた。


「タクミ、どうしてあの時土偶やルルシが出した土の魔法が壊れるように崩れたの?」

「ああ、それは……」


 巧は地面の土をすくい上げると、手のひらに土が盛られる。

 何の変哲もない土。そして雨によって吸収されたからか湿り気を帯びていた。


「あれらは地面の土から作られてる物。土の中には水分が含まれ、粘り気ができ引っ付き固まる。そして土に圧力と冷気で凝固させると……」


 手に盛られた土を強く握り絞め、開くと泥団子のように丸みのある土が出来ていた。

 泥団子を地面に落とすと泥団子は崩れずにそのままの形で残っていた。

 理解ができないのか納得しないルベスサは疑念を持つ。


「固まることは分かったけど、それだとあの土偶やあれが復活しない理由にはならないんじゃ?」

「それも至極簡単な事。土の内部をただ単に凍らせただけだ」

「凍らせた?」

「そもそも水が凍る温度としては氷点下のほぼ0℃以下。つまりはその温度より上昇していれば凍らない。だから俺の魔力で急激に温度を下げ、土の中の水分を0℃より以下にさせた。表面上までは別として中の水分は凍り、そのままの形で維持される。簡単な原理だ」

「つまりは凍らせたおかげで動かなくなったわけだね」

「ああ、生物なら凍死だが、無機物だから固まった部分を無理に動かすと逆に身体が壊れる構造なだけ。例外はあるけどこの状態じゃ環境が整っていないから無理だがな」

「なるほど、普通はこんな事思い浮かばないよ」

「俺も最初は思いつかなかったさ。だけどシロに助けてもらったあと冷静な判断が出来ただけだよ。これがもっと早く出来ていれば……」


 シロの中にいたであろう悪魔の知恵か、巧の元々持っている知識かは不明である。

 だが、死ななくなった点において圧倒的アドバンテージであるのは事実であり優位に立つことができたのは事実であった。

 巧は自身の手をそしてルルシを見て感傷に浸っていた。

 そんな巧の背中をルベスサは叩いた。


「タクミ、今は感傷に浸ってる場合じゃないよ」


 ルベスサの言葉で本来の目的を思い出すように巧はテルヌス帝国の方面に顔を向ける。


「そうだったな……リウスを助けに行かないと。ルルシからは結局聞けなかったけど多分テルヌス帝国方面のほうにいると思う」


 ルベスサは同意するように頷き、向かおうとしたその時だった。

 二人に近づく複数の馬の足音が次第に聞こえ始める。

 巧とルベスサは近づいてくる人物に対し警戒を見せるが、現れた人物に警戒を解く。


「ウエイン、参加してたんだな」

「ああ、流石にシロさんにあそこまで言われちゃ男が廃るってもんだからな。格好悪い所ばかり見せられないさ」

「そうそう。リーダーはあの後凹んでいたっすから」

「いつも以上になよなよしてたよな。あの時は笑っちまったぜ」

「まあけど、リーダーが単純だからよかったですけどね」

「お前たちだって、怖気づきそうになってたじゃねえか!」


 巧はウエイン達の会話を遮るように質問を投げかける。


「向こうから来たって事はあっちの部隊はもしかして」

「ああ、今災厄の魔女ってのがフェス将軍と交戦中だ」

「災厄の魔女……」

「フェス将軍はお前とあの魔女を会わせる事を避けたがってるが、何でだ?」


 状況を知らないウエインにとって疑問は当然であった。

 問いかけに対し巧は解答を持っていたが伝えるべきかどうか迷い、暫しの沈黙が続いたが、巧の口が開く。


「それは……俺自身が呪い子だからだ」


 ウエイン達は驚きを見せつつも納得した様子であった。


「道理でフェス将軍がタクミを買ってたわけだ。なあお前等」


 ウエインの言葉に同意するように頷く三人。


「いいのかよ。お前達だって今以上の危険な目に合うかもしれないんだぞ? 今のは聞かなかった事にして俺達とも会わずにいれば、この戦争に参加したってだけで十分」


 馬から降りたウエインは巧の頭を強く撫でた。

 巧の髪の毛がクシャクシャになりながらもウエインはニコやかに笑う。


「気にするな。俺達はお前の事を知っている。それに俺達だって冒険者、いつ危険な事が起ころうとも乗り越えてきた。これから先もだ。それよりもシロさんとリウスちゃんとあのおっさんは今どこに?」

「リウスは以前王国に敵国が攻め入った時に攫われて。シロとハリトラスはこの戦いの最中に死んだ」


 歯切れ悪そうに巧はいった。

 ウエインは不意に巧の頭から手を離すと、今度は巧の胸倉を掴み上げた。

 先程とは違い、巧に向けられているその目は怒りや苛立ち。

 もう片方の手には拳を作り巧を殴ろうとする。


「タクミ、呪い子である……いや男のお前が何故守らなかった。あんな強力な魔法を持ちながら」

「待ってそれは……」


 ルベスサや黒鉄の刃の面々が止めに入ろうとするが、巧は制止するよう手をかざす。

 ウエインの主張も至極当然であると巧は思った。


「否定はしないし言い訳もしない。だが、シロやハリトラスは力の限り振り絞り死んだ。どれだけ喚こうが嘆こうが死んだ事実は覆らないし、生き返りもしない。あいつ等は悔いのあるかどうかは分からないが、それでも誇らしく気高く逝ったと思ってる。俺はそんな二人に生かされた。生かしてもらった。だからこれから先こんな所でもたついてるわけにはいかないんだ。放してくれウエイン!」


 気圧されるようにウエインは口を紡ぎ、胸倉を放した。

 握られた拳はウエイン自身の顔面を殴る。

 突如の暴挙にその場にいた全員は驚くが、落ち着かすように制止させた。


「シロさんが見たら、俺は格好悪いだろうな。すまなかった。これで許してくれとは言わない」

「いや、ウエインの言ってる事も正しい。だが今はいち早くリウスを助けに行かないと」

「俺達は魔女が現れた周囲を見回してもリウスちゃんはあの場所にはいなかったぞ?」

「……そうか、薄暗さとは言え、炎を扱うと目立つ事になるだろうし。奇襲には向かないとなるとテルヌス帝国のほうへいるのか」

「かと言ってそのまま行けば敵国へと攻め入っても良い的じゃないか?」

「確かに通常の冒険者や兵士だとやられるだろうな。だけどここには俺がいる。あいつも洗脳を受けてるとしても仮にも呪い子だ。俺が出ていけば向こうも強制的に出ざるを得ない状況を作れるはずだ」

「まさか、今から行くつもりか?」


 巧は首を縦に振る。

 ウエインは近くで休んでいた馬を一頭連れて来る。


「わかった。なら移動の手段は馬で二人を乗せて移動するぞ」

「だけど、これ以上は危険だ。ウエイン達が巻き込まれる必要性がない」

「だから言ったろ? 気にするなって。俺達は好きで突っ込んだんだから」


 ウエイン以外にも他の三人も同意するように頷いた。


「それに、ここでタクミ。お前を見捨てたら死んだシロさんに呆れられるからな」


 巧はこれ以上言った所で無意味だと判断しため息をつく。

 しかし、不死になっているとは言え、侵攻が始まってからのこれまで精神的疲労が蓄積され巧自身感じとれていた。

 飛んで行こうにも魔法による消耗、徒歩による肉体的疲労、どちらも好ましくもない。

 だが馬なら移動するにも距離を稼ぐ事はできる、最善策ではないが得策だと判断した巧はウエインに手を差し伸べ握手を求めた。


「わかった。頼んでもいいか? ウエイン」

「ああ」


 応じるように握手返すウエイン。

 馬は四頭のうち黒鉄の刃のメンツが一人一頭に乗っていた。巧とルベスサは強制的に誰かの後ろに乗らざるを得なかった。

 先頭にはウエインが馬上すると、巧はウエインの後ろに乗るように馬の上にまたがった。

 後ろを振り向くと、まだルベスサが乗馬していないことに気づく。


「ルベスサ、行くぞ?」

「タクミ、僕はあれを悪用される前に今のうちに完全に葬らないといけない。だから先に行ってて」


 侵薬の副作用からか、ふらふらと覚束ない足取りで歩き始めるルベスサ。

 向かう方向はルルシの死体であった。

 悪用、確かにルルシは脅威であるが死んでいた。だが、ゴブリンゾンビのような死体魔物をを作り出す技術も帝国には存在するかもしれないと巧は思った。

 巧も馬から降りようとするが、ウエインに止められる。


「タクミ、お前はここで時間をとられる暇はないだろ」

「そうだね。君は早く行って。僕一人でどうにかできるから。幸い魔物も敵兵も誰もいないからそう時間はとられないだろうし」


 巧は少し迷うが意を決するように前を向く。

 インベントリ内に手を突っ込むと一本の透明の水が入った試験管を取り出すとルベスサへと放り投げた。。

 受け取ったルベスサは中身を確認するとすぐに何かを理解する。


「ルベスサ、終わったらそれを飲んですぐ来いよ」

「ああ、ありがとうタクミ。さあリウスの所へ行って救ってあげてきて」


 巧は頷くとテルヌス帝国方面へと向かう。

 同時に雨は止み、雨雲に覆われていた空は一筋の光が差し込む。

 光の指す方向にまるで巧をリウスの所へと先導しているようにとルベスサは感じた。

 完全に見えなくなり、ルルシの死体へと視線を向けると、いつの間にかフィティアがルルシの近くに立っていた。

 ルルシの首に何かしらの首輪をつけているのをルベスサは目にする。


「今までどこに……それよりもそれは奴隷の首輪?」

「そうね。奴隷の首輪には間違いないわね。だけどこれはちょっと特殊で陛下から直々に承った物なの」


 通常の奴隷の首輪は牛皮のような茶色だが、フィティアがルルシの首に装着している奴隷の首輪は漆黒であった。

 不吉の前触れのようなそんな色。

 フィティアはルベスサへと向けるとクスクスと笑いをあげる。


「とりあえずはご苦労様と言っておこうかしら。タクミが離れて助かったわよ」

「どういう事……」

「私はね、貴方達の事の成り行きを見守っていたの。どっちに転んでも良いように」


 奴隷の首輪を装着させられたルルシは死んだにも関わらず、何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がる。

 まるでその仕草は紐に繋がれた操り人形のようであった。

 巧に斬られた傷跡はみるみるうちに塞がり、出血は収まった。

 だが、その顔色はすぐれておらず、まるで洗脳を受けたかのように表情は暗い。


「普通呪い子は傷を癒すのは難しいはず……いやそれよりもルルシは死んだんじゃ……」

「ええ、確かに死んだわね。だけどこの首輪は死んだ者の魂と肉体を強制的に繋ぎなおす物らしいのよね」


 衝撃の発言にルベスサは驚きを隠せない様子であった。


「なんだって! そんな物、知らないし聞いたこともない。それに傷も強制的に治ってるし、普通呪い子は傷を癒す事が難しいはずじゃ……」

「あの子の知識の中だとそうかもしれないわね」

「タクミの知識の中だって? 呪い子の事ならタクミ以上の知識はわからないはず」

「ええ、確かに私達の中でならそうね。だけどそれ以上の知識の持ち主がいたとすれば?」

「え?」

「サールラウ皇国ってわかるわよね」

「確かこの南大陸での最大の大国であり、その内陸ではもう一国を置いているという国」

「その使者が使節しせつされたの」

「そんな情報は開示されていないし僕達はいっさい聞いてもいない」

「陛下の命令で極秘事項として扱われたし、サールラウ皇国からすればこの機に生じてテルヌス帝国を亡き国にしたかったのかもね」


 第三国の介入。

 南大陸第一位の大国が介入してきた時点でこの戦争はベルチェスティア王国とテルヌス帝国の二国間の問題だけではなく、規模が大陸全土に広がるかもしれないのだから。

 その瞬間ルベスサの中でこの場に居てはまずいといった感情が芽生え始める。

 何せ重要な情報を漏らしたのだから。

 ルベスサ一人でフィティアとルルシの二人を抑える事は不可能に近い、だがルベスサにとって疑問はまだ尽きない。


「どうしてテルヌス帝国を滅ぼそうと?」

「さあ? 私も分からないわ。多分領土の問題か、それとも……帝国にいる災厄の魔女の存在かしらね」

「貴女の行動はフェス将軍も」


 フィティアは首を左右に振る。


「いいえ、この事は陛下と私のみ。他には知らないわよ。もし知っていたなら別の行動も起こせたはずなんだけど。陛下に何故か口止めされててね」


 フィティアはルルシに付けられている首輪をなぞる。

 ルルシの表情は未だ暗く、顔は下に向けられているが血の気のない顔に、焦点の合わない目、だらしがなく半開きになっている口。

 本当に生き返ったのかルベスサは疑問を覚える。


「……まあこの子が手に入ったなら良しとするしかないわね」

「その首輪があるなら馬車の中にいた時や巧が死にかけていた時に取り付ければ良かったんじゃ?」

「そうしようと思ったのだけど警戒心が強くてね。それに近くにはタクミ以上に厄介な存在がいたし、あれを突破してもこれが潰されちゃうのが目に見えてたのよね。その点、タクミがいなくなってからの貴方程度なら造作もわけがないの」

「ならもしこれがルルシじゃなくタクミであったなら」

「タクミになるでしょうね。というよりも元々この首輪はタクミに装着させる予定だったのよね」

「なんだって!」


 衝撃の発言にルベスサは驚きを隠せずにいた。

 いったい誰がそんな事を、いやフィティアに命令できるのは……。

 ルベスサの頭の中で思い浮かぶ人物がただ一人いた。

 そんな考えを見通すようにフィティアはいう。


「貴方の考えてる通り、陛下自身がそう命令を下したの。タクミが瀕死または死んだ際にこの首輪を装着させろって。だけど実行しようにもあんな化け物になってて無理と判断したから、せめて同じ呪い子であるこの子にしたのよね」

「やっぱり。そうするとタクミはもう狙われる心配はないわけだ」

「目的はあくまで呪い子を王国側へと味方につける事。だけど、この事を貴方はどうするかしら」


 一刻も巧の所へと向かいたい、そんな気持ちを抑えルベスサは両手をフィティアの前に向け交戦の意思を示す。


「私と戦う意思を見せるのね」

「今のタクミには貴女が喋った事実は知らない。こうも口を滑らせて喋るのは僕を生かす気がないからでしょ。タクミがリウスを無事救えたなら残る問題は災厄の魔女ただ一人のみだし。僕を排除すればすべては解決したも当然」

「賢明な判断。流石あの子と同じ仲間だけあるわね」

「これだけ情報をペラペラ喋るんだ。いくら僕だって気づくよ」


 ルベスサは巧から受け取った試験管のコルクを開け中身を飲み干す。

 するとルベスサは自身の身体が軽くなるのを感じ取る。


「最後の晩餐ならぬ最後の飲水は終わったようね」


 フィティアが手を前に掲げると、ふらふらと前に出るルルシ。

 動きは遅くとも以前と同じように膨大な魔力で操るなら勝ち目はないのだが、巧との戦いを目撃しているルベスサにとっては寧ろフィティアの動向に視線を向ける。


「ルルシを出した所でそいつの魔法はタクミによって使えないのは知らないのかい?」

「ええ、勿論知ってるわよ。言ったでしょ、貴方達の事はよく見てたって。あの子がこの地面を凍らせておいた事も、けどこの子で十分」

「僕だったらそんな動作の遅い呪い子相手でも問題ないって事? そうそうやられるわけがない。地底束縛!」


 地面から這い出る鎖はルルシの足元を絡め動きを拘束する。

 すぐさまフィティアに視線を向けるが消えていた。

 突如ルベスサの背後から強い衝撃が放たれる。

 地面に倒れこむルベスサはすかさず背後を見ると、フィティアがいた。

 ルルシを囮にして、気を逸らしているうちにフィティアはルベスサの背後をとったのだ。


「甘いわね。貴方が拘束魔法を使いこなせて動きを封じようがそれは味方が複数いる場合が有効。だけど今は貴方一人だけ、相手は二人いるのよ? 一人に集中しすぎてもう一人の動きを気を配らせないと」


 フィティアは短剣を持ち出した。


「年数も経てば貴方は将来有望な魔法使いになれたかもしれないけど、この戦争に参加した時点で運の尽き。じゃあね」

「ぐ……」


 ルベスサに近づくと振り下ろそうとするフィティアの短剣。

 するとルベスサの目の前に一本の矢が通り過ぎる。

 矢を避けるようにルベスサから離れるが、二本三本と次々と放たれる。

 ルベスサは矢が放たれた視線の先を向けると、馬に乗った黒鉄の刃のメンツが駆け寄ってきたのだ。


「どうして……」

「いやー、タクミが心配をしていたんっすよ。君の事を」

「タクミが」

「ええ、嫌な予感はするとか言っていましたし。リーダーはタクミとともに行きましたが、僕達三人は戻ってみれば案の定あのエルフに殺されそうになっているのを見つけたんですよ」


 ルベスサの中で自分自身による不甲斐なさと巧に対する申し訳ない気持ちと同時に、感謝そして勇気が沸き上がる。


「ところでよ、あのエルフの女は誰だ? それにもう一人の顔色悪い奴って確か前の戦場で見た土の呪い子だよな」

「うん。そっちのほうは合ってるけど、あのエルフは王国側の人間だよ」

「王国側だって? 何で味方であるお前を殺そうとしたんだよ。それにあの呪い子の奴はどうしてあの女と一緒にいるんだ。味方なのか?」


 疑問に思うのは当然だとルベスサは思った。

 何せ状況が状況であるが故に、把握できないのは致し方がなかったからだ。


「一言で言えば、僕が秘密を知りすぎたせいかな」

「なんっすか? その秘密ってやつは」


 口に出すのを渋る様子のルベスサ。

 言ってしまえば黒鉄の刃も確実に巻き込む恐れがあるからだ。

 迷うルベスサを察するように黒鉄の刃の一人が肩に手を置く。


「言いにくそうなら今は言わなくて良いっす。それよりもこの状況をどうにかしないとっすね」

「そうだな。何せ相手は呪い子もいる。それにやばそうな女もいるし」

「ですね、立ち上がれますか?」


 ルベスサ頷くと、差し出された手を掴み立ち上がる。


「状況は逆転したよ。今回は貴女が言った通り複数人数になった」

「参ったわね。終わらしてフェスの所へ戻るつもりが、そろそろ時間になる頃かしら」

「時間? どういう……」


 突如王国方面に巨大な光の柱が天に向かい飛び出す。

 雨雲に光の当たると、散り散りに拡散し柱の周りには円状となり青空が広がりを見せる。

 呆然とするルベスサに黒鉄の刃の面々。

 ルベスサは視線をフィティアへと向けると、予想外だったのかフィティアさえ呆然とした表情を見せていた。


「あれも使節に言われた事じゃないのか?」

「言われてたには言われてたわね。ただこれだけ強力だとは私も予想外」

「あれは何なのさ」

「あれは……“勇者”」

「勇者?」

「もっと私達が身近に聞く言葉と言えば勇者というよりも“光の呪い子”かしらね」


 衝撃的な発言に、ルベスサと黒鉄の刃の面々は凍り付く。

 火、土、闇に続き新たな光の呪い子の参戦したのだから。



まさかこれだけ黒鉄の刃のメンバーが登場するなら名前ぐらい付けときゃ良かったかなって後悔があります。

最初はリーダーであるウエイン以外は数回程度登場させて終わりかなと思ってましたが、それ以外のメンバーも意外と登場させる回数が多くなるとは考えもしませんでした。

一応それぞれメンバーの名前は考えていましたが、もう今更出し名前は出さなくていいかなって思ってます(笑)

最後の光の呪い子に関しての登場は「開戦」にて付け加えるか、新たな話数を用意してつけるかどうか迷います。

次の話ですが、また数週間後もしかしたらもっと伸びる可能性もあり得ますが・・・

読んでくださる方暫しお待ちください。

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