初めての討伐依頼申し込み
中に入ると周りの視線に注目を浴びる。
気にしてもしょうがないため、巧はギルド内の掲示板の前に行く。
(やっぱ読めねえや)
羊皮紙に書かれている文字、巧は見つめていたが日本語じゃないので読めるはずもなかったのだ。
(鑑定ならどうだろ? けどまた鑑定して[紙]何てでたらもうお手上げだ)
そんな事を思いつつも鑑定をしてみる事にした。
(お、おおー。読めるぞ、何だろ? 小説でよくあるルビ風な感じなのか浮かび上がってるのか)
羊皮紙の一つに内容にはこう書いてある。
討伐募集 ★★★★★
場所トレン村にてレッドキャタピラー討伐
討伐証明必要
期限 三日迄
達成報酬 白銀貨十五ルペ
貼っているのは巧はゴブリン討伐の羊皮紙を探した。
鑑定し続けるとようやく、端っこにゴブリン討伐依頼羊皮紙を発見する。
随時討伐募集 ★
場所ルビアリタ街の周辺に生息するゴブリン討伐
討伐証明必要
期限 なし
達成報酬 一体に付き銅貨五ルペ 複数可
他と比べて安くはあったが、巧はゴブリン討伐の羊皮紙を剥がし受付前に持っていく。
「これでいいかな?」
少し受付周辺を探してもシファはいなかったので、受付に座っていたメルエに渡す。
「はい、受け付けますね。確か初めてですよね、バックパックもインベントリもありませんよね?」
「ないね」
「ない人の為にギルドでバックパックを銀貨一枚で貸します。それに今後討伐や採取の際は証明が必要になる事が多いので、各自バックパックかインベントリを買っていたほうがお得ですよ?」
「わかった、とりあえずは今回借りるよ」
「はい、こちらがバックパックです」
バックパックは登山用リュックのように大きく、中に入れる部分を紐で縛る巾着袋タイプ。横にはボタンとポケットが付いていて小物など入れる箇所があった。
「ありがとう、そういや討伐証明どうすればいいの?」
「討伐証明は片耳で構いません。一匹に付き片耳一枚、左右両耳を持ってきてもそれは一匹扱いとなりますので注意して下さい。ちなみに一匹に付き銅貨五枚なので複数匹ならその合計数の金額を渡します」
一匹倒せば銅貨五枚、十匹倒せば銅貨五十枚、百匹倒せば銅貨五百枚つまり、一匹分×銅貨五枚計算となる。
「わかった。どこら辺に行けば見つかるかな?」
「ゴブリンぐらいでしたらどこにでもいますが、この街から東側に出た森ならゴブリンは多いと思います」
「なるほど、もしゴブリンを討伐するにしても全滅させてもいいの?」
「ゴブリンが全滅するとは考えにくですね」
「なぜ?」
「ゴブリンは討伐全滅させてもどこかで生き残りそして繁殖します。討伐しないままだと増える一方なので倒したほうがいいかと」
つまりはゴキブリみたいなものであった。
一匹見つければ三十匹ぐらいはいる、更に放置していると荒らしまわり害をなすそんな厄介極まりない相手。
「そうなんだ、大体わかった。そろそろ行くね」
「はい、ゴブリンとはいえ相手も命がかかっているので必死になり反撃してくるでしょう。気を付けて下さいね」
ギルドを出る巧、その後ろ姿を見送るメルエ。
(先にナイフ買いに行かないとな。武器屋辺りで売ってるかな? 武器屋なんだから武器関係の看板出してるだろうから門に行くまでに見つかるだろう)
大通りを歩いていると剣の看板が見えてきた。
「あれが武器屋かな?」
建物の中に入ると色々な武器が置いていた。剣、槍、杖、斧、弓矢、ナイフ、鉤爪その他色とりどりな品が置かれていた。
「いらっしゃいませー」
中に入ると出てきたのは小学生ぐらいの背丈で、顔は少し大人ぽい感じの女の子だった。
(お手伝いかな?)
「何を探しているんだい?」
「ああ、討伐や採取用のナイフか短剣が欲しいなって」
「それならあるが金はあるのかい?」
提示できる金額を言う。
女の子は頷き出してきたのは巧が所望していた短剣を複数出してきた。
「ちなみにこの中で採取として向いているのがこれかな」
短剣の一つを取り剣鞘を抜くと短剣に何か違和感を感じた。
「金貨二枚を頂こうか」
「金貨二枚か……そうだなって高! 高すぎない? もっと安くしてほしい」
「金あるんだろ。ケチケチしなさんなって」
「まあ確かにあるけどそれでも高くね? もっとまけてよ」
「しょうがないね、金貨一枚はどうだい?」
半額である。金貨二枚から一枚へと半額にできるって事は何かしらの余裕か理由があるからこそできるのだ。そうじゃなければ普通半額まで値引きできる事は、まだ下げられるだろうと巧は考える。
そんな事を考えていると店の奥から男性が顔を覗かせる。
「騒がしいと思ったら客がいるじゃねえか」
防具屋のヴィッツと瓜二つの顔をしたドワーフが出てきた。
鑑定をしてみるとヴィットと名前が表示された。
「いいからアンタ、奥で作業してきな」
女の子は慌てた。
「また粗悪品を客に買わせようとしてんのか?」
「だってアンタの品物は悪くないんだよ。いいじゃないか普通に使う分には悪くないんだし」
「それでもだめだろ、これだってこの前折って捨てとけと言ったばっかだ」
そんな二人の様子を見ている巧。
そんな巧に気づいたのかドワーフ男はこちらに顔を向ける。
「ああ、悪かったな。それでどういった物を探しているんだ?」
「討伐採取用のナイフか短剣が欲しいんだ。金額は……まあ長く使うだろうし金貨二枚って所かな」
まだあるのだが他にも買う物もあるので残しておきたかったのが心情である。
「それぐらいなら、まあこっちだな。部位を切り取りやすいように作られた一品だ。ちゃんと手入れしていたら長持ちはする」
出されたのは非常に綺麗な短剣であった。傷もなく違和感もなく持っていても握りやすいグリップをしていた。
「これいいな買うよ」
「金貨二枚だ。あと短剣持ち運ぶだけ大変だろ。短剣と鞘を入れる仮帯も付けて金貨二枚に銀貨一枚だ」
金額を渡す。
「毎度あり、本当悪かったな。妻が粗悪品を売りそうになって、そんな物を売ってしまうと流石に職人として名折れになるからな。それにその短剣の刃こぼれが気になったら持ってこい手入れしてやるよ」
「え、妻?」
「ああ、こいつは俺の妻だ」
そう妻と言われた女の子の肩に手を置くドワーフ男。
そして顔を赤くして照れる妻の女の子、非常に可愛い動作をしている。
(このロリコンめ、羨ましいじゃねえか)
巧の中に嫉妬心が生まれた。日本の社会で手を出したら即逮捕されテレビニュース報道として実名でとりあげられ社会的抹消をされる。
しかしここは異世界だ、そんなニュースもなく社会的抹消もない。この異世界で実際手を出そうとしたら犯罪者として捕まるだろう、流石に巧にそんな事は考えてもいないしやろうとも思っていないが羨ましいとは思っていた。
「そ、そうか。いいなあ」
「おう?」
「それじゃ行くわ」
「悪かったね」
女の子が反省してる顔をして巧に謝る。
「ああ、いいよいいよ。結構良いの売ってもらったし」
巧は短剣と仮帯を腰に巻き店を出る。
短剣をしまう鞘を腰に巻くものを仮帯としましたが、実際何て言うんでしょうね?