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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第五章
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不安の朝

 朝日が昇り、日が部屋の窓から差し込む。

 部屋の明かりにより巧は目を覚ます。

 身体を起こし眠たそうな目をこすると、視線を床に向ける。

 床には穴が空いていた。

 それは昨夜シロが空けた剣の穴であり、巧は昨夜の出来事を思い出していた。


「そうか、今日はあいつ(ベランジェ)と会うのか……」


 窓の外に映っている城を眺める。

 屋敷の門外では何本もの長槍が二列ほどの隊列なして動く。

 それは衛兵が城下町全体を見回りしている様子であった。

 暫く外を眺め呆けているとドアが数回ノックする音が鳴る。


「タクミ様、起きていますか?」

「ああ、起きてるから入っても良いよルフラさん」

「失礼します」


 ドアを開け中に入ったのち、一礼する。

 昨夜と同じメイド服姿、その振る舞いは完璧で元暗殺者とは思わせないほどだった。


「どうしたの?」

「いえ、そろそろ朝食の準備が済みますのでタクミ様を起こすよう、ヘルデウス様から遣わされました」

「もう少ししたら向かうって、まあ先に食べといてってヘルデウスに伝えといてほしい」

「畏まりました」

「あ、それから昨日は一緒に探してくれてありがとうな」

「いえ、私は何も。結果タクミ様がリウス様を見つけ出す事が出来たのは、ひとえにタクミ様の運の良さかと思われますよ?」

「いや、あの時二手に別れていなければ、より時間かかったわけだし、助かったよ」

「そうですか。では私は準備に戻ります」


 ルフラは一礼してから部屋の外へと歩いていくが、ドアを閉める途中で止まる。


「タクミ様」

「ん?」

「リウス様を慰め、そして貴方様の包容力とても素晴らしかったです」

「……まさか見てたのか!?」

「ふふ、では改めて失礼します」


 ドアが完全に閉まると朝食の準備するをためにヘルデウスの所へと戻る。

 そんな巧はルフラが出ていくと溜息をつき、ベッドに仰向けに倒れる。

 ルフラの言った昨日の出来事、思い出したのか枕を顔に押し付け隠す。


「あ、ようやく来たね。タクミ、シロ」

「よう二人とも、美味しいぞ今日の料理も」


 ヘルデウスにハリストラとリウス、それにルイスにルフラも食卓に着き食事をとっていた。

 巧は途中、シロと合流し食卓へと向かっていた。


「悪い遅くなって」

「タクミ、お前が遅いから俺らが先に食べてたぞ? シロ何て途中抜け出したし」

「折角私達が来たのにハリストラだけは食べずに待てばいいのにね」

「シロ、流石にそれは……」

「タクミ様とシロ様、席にお座りになってお食事を召し上がり下さい」

「あー、ありがとうございます」


 メイドの一人に席に案内された場所へと座る。

 巧とシロが座ると、ルイスとルフラは確認したのち座った。

 その行為に巧は過去にヘルデウスに言った事を少し後悔する。

 ヘルデウスに助言をしたのは巧だが、巧の考えとやり方が違うのだ。


「あー、そうなるかー……」

「どうなされましたか? もしかして料理はお口に合いませんでしたか?」

「いえ、とても美味しいですよ」


 食卓の上に置いてあるスープをスプーンですくいあげると口につけた。


「さて、食事も終えた事だし、タクミ達は城へと出向くんだっけ?」

「ああ、あの王様と話をするよ」

「それは昨日言ってた彼女の件かな?」

「そう」


 昨夜屋敷へと戻ってきた巧達は、ヘルデウスへと事情の説明をしていた。

 テルヌス帝国とともにベルチェスティア王国にリウスの存在が知られた事など。


「わかった、ここだと何だし場所を移動しよう」


 食卓からヘルデウスの書斎しょさいへと移る。

 書斎の椅子にヘルデウスは座り、その両隣にルイスとルフラが立っていた。

 巧達はヘルデウスと対面するように向かい合う。


「ところでタクミは陛下に対して何か策はあるのかい?」

「バレてる以上、対策もなにもないと思うがとりあえずは話すだけ話してみるかな」

「タクミらしいね。けど相手はこの国の頂点に立つ人物だし、呪い子がバレた以上生半可な事だと出し抜けないんじゃ?」

「ああ、苦労しそうなのはわかってる。その為に情報がほしい」

「情報って?」

「ルイスさん、ルフラさんのこの国での呪い子事情を改めて聞かせてもらってもいいですか?」

「お話は構いませんが、ヘルデウス様には……」


 話すと主人にも危険が及ぶ可能性があるからか、ルイスは話すのを躊躇ためらっていた。


「ルイス、構わないから話しなさい。それとルフラも同様。これはハウリック家当主ヘルデウス・ルポール・ハウリックの命令だよ」

「畏まりました」


 ルイスは何かを思い出すかのような表情をし、語り始めた。


「そうですね、この国が初めて呪い子と言う存在が確認され、遭遇したのはもう数十年前の戦争です。その事の発端は資源の巡り合いでした」

「そういや聞いた事あるな。確かこの王国はテルヌス帝国との中間となりうる場所でしたっけ」

「その通りですハリトラス様。何せその資源によって他国との取引材料や必要な資金源が手に入りますからね。だけどそれは他国も同じです」

「なるほど、取引するって事はその資源が他国でも使われてるって事ですか」

「ええ、特にこの国は資源は豊富であるが故に、狙われる事も暫し。特にその発端となった場所は他よりも資源密度は豊富でした」


 資源は有限である以上、独占はやむなしだが行動した所に敵国との遭遇。

 その結果、場所が特にどちらの国の物でもあるが故に所有権争いが起きた。

 単純かつ明確な理由だと思われた。


「ですが、それはあくまで表面上の話」

「他にあるのですか?」

「戦争にまで発展させた切っ掛けは、王国は秘密裏に実験を行うためではないかと言う噂は流れていました。真偽はわかりませんが、実験が今でも続いているならルフラのほうが詳しいでしょうな」

「ルイス様の仰っていることはあながち間違いではいないと思います。ですが、残念ながら私は別部隊でしたのでその内容を知らされておりません」

「ルフラさんでも知らないって事は、一部しか知らされてない極秘事項って感じか」

「申し訳ありません……」

「いや、気にしないで。それよりも他に何か情報はないかな?」

「そうですね、私の所属部隊の事をお話ししたほうが良いでしょう」


 ルフラの視線はヘルデウスへと向けた。

 意図をくみ取ってか合図するかのように頷く。


「私は暗部に所属し、そこで暗殺を主に行っておりました」

「暗部って言うと、つまりは不穏分子の排除ってわけ?」

「ええ、この国による不穏な害虫ともいえる存在、国家転覆などを企てている人、将来敵になりうるであろう存在を暗殺など」

「なるほど、この国の裏側の人間なら情報は知りえそうだね。ってことは俺達を襲った時点で……」

「皆様方も、その対象でした」

「ならなぜ俺らを潰さずにいるんだ?」

「私を生かして帰し、直接陛下にお会いした事により評価が変わったからだと思います」


 行動による選択が成功を導く。

 もしもルフラが死んでいたとしたら現状よりも危うくなっていたのだろうと巧は思った。


「だけど、今回リウス様が呪い子であると言う存在が知られた事により、陛下の考えはまた一変したと思われます」

「それってまずくねえか? 前にタクミがどうにかしてその場を収める事ができたからだろ?」

「落ち着けハリトラス。収めたっていうか、あの時は上手く誘導できたからよかったんだよ。それに丁度、魔物の襲撃が重なったのが大きい」

「すまん。だけどどうすんだ? 今回は魔物の襲撃もなしでリウスがバレたんだろ?」

「だから今は対策を考える為に話してもらうんだよ」


 巧は視線をルフラに向けた。


「現状はリウス以外の呪い子に関してこの国は存在するの?」

「いえ、私が知っている限り存在せず。今回リウス様がこの国での最初の存在です」

「初めてか。ならより重要視されるだろうし、必死になりそうだけどそこの所はどうなんだ?」

「多分、皆様方を警戒したのでしょう」


 呪い子の力は強大で、どの国も喉から手が出るほど欲しい逸材。

 そんなルベスサの言葉を巧は思い出していた。

 その言葉通り、ルルシと遭遇して巧は呪い子がどれほど強力なのかを体験したのだから。

 呪い子が戦場に出続ければ、尋常な被害が出ることは火を見るより明らか。

 従って対抗策として、同じ力を持つ別の呪い子が必要になるのだ。

 そんな呪い子を知らせず隠し通していた巧は警戒するべき対象に入っていたのだろう。


「それに直接陛下に会われ、お話しになると言う事は少なからず信頼はされていると思われます」

「真実を知らされてない時ならまだしも、隠し続けていた時点で今は信頼されてるのか疑問だけどね」

「それは大丈夫でしょう」

「どうしてそう言い切れるんだ?」

「もし信頼もされずにいるのでしたら、今頃昨夜のうちにリウス様を捕らえるために動いています」


 説得力があったからか、巧はルフラの言葉に納得した。


「……ん?」


 ノックとともに扉が開けられると一人のメイドが入ってくる。


「お話し中の所申し訳ありません。タクミ様とリウス様に王国への迎え馬車が来られておりまして」

「こっちから行かなくても向こうから直接来たのか。てか俺とリウスだけ?」

「はい、そのようにお伺いしております」

「何でタクミとリウスだけなの? 私達も仲間なのに」

「シロ落ち着け。呪い子の証明とその説明による最低限の人数かもしれない」

「シロ様、タクミ様の言う通り下手に指定された人数よりも増えると、逆にタクミ様の不利になるかもしれません」

「そう……それなら大人しく待ってるわね」


 尻尾と耳は垂れ下がり、大人しくなる。


「すまんなヘルデウス。もう少し聞きたかったけど、時間が無いようなので俺達は行くよ」

「気を付けて。君達にはまだ顕彰会での契約が果たされていないからね」

「ああ、わかってるよ。約束は守るさ」

「では、私が玄関口までお送り致しましょう」

「ありがとうございます。その前にもう一つ頼みたいことがあるんですが」

「何でしょう」

「伝えてほしい人物がいます。その人は――――」


 玄関口の扉を開けると、門外には一台の王宮馬車とその周囲には複数の兵士が護衛の様に囲う。

 兵士の一人が緊張した面持ちで馬車の扉を開ける。


「そちらから迎えに来られなくても、こちらから行きましたのに」

「いえ、私達は陛下から巧様とリウス様を丁重にお迎えせよと仰せつかわされましたので!」

「一つ聞きたいんですが、何で俺等を迎えに来たか理由聞いてます?」

「いえ、私達は陛下のご命令としてお二方をお迎えするようにと。それ以外は聞いておりませんが」

「そか、ありがとうございます。乗ろうぜリウス」

「うん」


 リウスとタクミは馬車に乗り込むと扉が閉められ、ゆっくりと動き始める。

 巧は窓から外に視線を向けと、昨夜と比べると通行人の人数は多い。

 だがその顔は皆、不安そうな顔をしていた。

 そんな中を押しのけるように馬車は進み、巧とリウスの乗せた馬車は城へと向かう。


これは前回入れとければもう今回の話は少しスムーズに進めたかなって思いました・・・

あとは本当に必要なのか執筆すべきなのかよくわからなくなってしまった回でした説明不足も否めない・・・


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