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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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71, ダンジョンで、………戦後報告⑫ 剣の……お弁当

 近くにいる刀狼(ソードウルフ)の争いや、ちょっと遠い場所にいる額に短めの角を持つ角狼(ホーンウルフ)や、猫科では牙の少し長い短刀虎(ドスタイガー)など、数種の肉食系の魔物が居るのだが、何をエサにしているんだろう?


 そう思っていたら、足元の地面から何かが流れる音が聞こえた。


 ジャーという何かが流される音、つまりは水洗トイレのあれに似た音がした。

 耳をそばだてて(たむろ)っていた魔物の一角が崩れ、中央の小さな池の方へと走っていく。


 やがて、ぼこぼこっという音とともに、池の表面が泡立ち、次の瞬間、いろいろなモノが吹き上がった。ジネズミの一種やトガリネズミ、魔物じゃない魚、スライム系の軟体モノなどが、その池とその周りの窪地に溢れた。小さな池は一瞬にして倍の大きさになり、いろいろなモノを残して、また元の大きさに戻っていく。これが一ヶ所なら壮絶な争いが生じるのだが、見ていると他の場所でもタイミングをずらして吹き上がっている。


 だが、やはり縄張りは存在するようで、一番奥の吹き上がった場所では、誰も近づかない。見ていても、誰も気付いていないようだ。俺の鵜の目だからこそ、捉えられたと言うことなのだろうか?



 向こうでも食事の時間のようだし、こちらも準備するか?

 そう思い、ゴーレムハウスに追加した新装備の焼きゴーレムを展開した。


 熱源は新しく仲間になった火トカゲが担当している。


「『アカカゲ、初お目見えだ。上手くやれよ、それ次第では、褒美もあるからな。隣の鉄板で先輩格の火の精霊も頑張って貰う。まずは一定の温度を保てよ。』」


『わかってまさぁ、俺っちの仕事の良さを見せますぜ! てめえらもわかってんなぁ、俺に同調しろよ!』

『『『『『わかってまさぁ!』』』』』

 火トカゲの鉄板が上手くいけば、火の精霊の調整を俺が一々掛けなくても良くなるため、各国への貸し出しが簡単になるのだ。


 もちろん、ゴーレムハウスに付随した施設として貸し出しにするのである。

 火トカゲとしては、一定の温度を保つことが一番の命題だけど、後は何していても良いからな。最悪、恋人とアッチッチしていても良い。


 本日の焼き物は大したことの無いものばかり。クレープ、焼きそば、オムレツくらいである。

「って、オムレツ?」

「まぁ、俺が考えただけで、試食もまだだけどな。」

「あれ? 何も型のない鉄板があるけど…あれは?」

 よく見ているな、ジュウン。ただの食べっ子キャラではなかったか……。


「そ、そういう評価だったとは………。」

 地味に落ち込んでいました。

「あ、そっちは一応、何でも好きなものを焼けるようになっているよ。型はスライドして出るから選べるぞ。」


 ゴーレムに俺が頼んだのは、ちょっと厚めの円盤状のホットケーキの型に卵を溶いて入れるだけという、ふわトロの卵焼き(オムレツ)だが、焼く時に型の横の方から絶妙に調整した風とともにザラメをを吹き込むことによって、実現させた。

 吹き込んだザラメは蒸発しながら卵焼きの内部を巡る。白くふわふわの綿菓子を形成する。アイディアを考えたのは昨日で、試食もしていなかった。

 出来てみたら綿菓子入りの卵焼きになったので、これに関しては俺も初の試食になった。


「うわっ、美味っ…………。」

 感動の言葉しかなかった。


 卵焼きの内面を熱風で軽く焼くことによって、余計な水分が綿菓子に移るのを防いでいるが、柔らかい食感を損なうことのない絶品に仕上がっていた。


「ふわぁ………。」「なんだ、こりゃ美味(うま)っ………。」


 その後もクレープを頼むもの、タコ焼きを自分で作ってみるもの、焼きそばを頼むものと、それぞれが溜めているポイントで食べていく。


「カウエルのステーキ。」

「レイ、ポイントが少し足らんぞ?」

「ええーっ、そんなぁ………。じゃあ、ポロッグのステーキで。これなら足りる?」

「ああ、それは大丈夫。養い子の分はどうするんだ?」

「ああっ…………。忘れてた……。」

 レイの足元で、ジョンとスノウの子供レインがガーンと言った顔でフリーズしていた。


クゥゥン(僕のご飯)……、キュゥン(無いですかぁ)…。』

 魔物だから、こちらの言いたいことを汲む力はすごいあるための悲劇だ。


「『ジョン、スノウどうする?』」

 一応、親であるものたちに確認する。


グァウ(レイン)ガォゥウ(あそこに獲物が)ガウガォウ(吹き上がっているぞ)ガウガゥゥオ(行ってこい)。』

 そうジョンが言えば、スノウも頷く。

ガゥゥゥ(そうね頑張るのよ)ガゥウ(お兄ちゃん)。』

 その言葉にガックリきたが、ふと、何を思ったか。スノウに問い掛けた。

ガウガ(やっぱりかぁ)……、ガゥウゥ(お兄ちゃん)?』

ガヴガヴ(新しい家族か)?、ガォォォォォォォ(スノウ、良くやったぁ)!』

 ジョンの雄叫びがレインに勇気をくれた。


 セーフティエリアの障壁へと歩き出す。いやー、男の子だねぇ。

「レイン? あなた、あそこに行くつもり?」

 レイがレインに問い掛ける。

ガウ()ガウウ(行ってくる)!』

 養い子の勇気ある(?)行動に目を見張るレイ。


「確かにレインにとってはキツい行動だが、レイなら、可能だろう? 養い子の援護も。レイの能力を伸ばしてくれるレインの行動は高ポイントに匹敵するぞ。」

 レイの第三の手や送転移(ブースタ)を伸ばす良い機会なのだ。


 普通の作戦行動や「工事屋」の工事だけでは決して得られない経験が得られる。その行動の全てに対してポイントが付く。


「行くわ。レイン準備しなさい、送転移(ブースタ)掛けるわよ!」

ガウ(行こう)!』

送転移(ブースタ)!」

 人と狼が一陣の風となってセーフティエリア外へと飛び出す。

 近くの池を狙うのではなく、少し遠目を狙った策は的中し、見事にレインの獲物をゲットするレイ。ただ、他の魔物がその近辺の池に手を出さない理由には気付いていなかった。


「はぁ……、ただいま。」

「お帰り、けど……。そいつらどうしたんだ。?」

 言われて、後ろを見たレイが凍った。


 額に小さな矢印状の何かを突出させたトラ猫が三匹いたからだ。

『クシュッ!』

『クッシュン』

『グシュッ』

 猫にしては体の大きいそれは、【鑑定】で確認したところ三匹とも剣虎(サーベルタイガー)となっていた。


 十五階のボスの子供たちでした。


 彼らの状態異常は、風邪。

 前の前の階で薬草類を仲間にしていて良かったよ。すぐに治療薬が作れそうな気がする。

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