70, ダンジョンで、………戦後報告⑫ 剣の葛藤
休日が仕事になり、出来ていたプロットを流してしまい、申し訳ありません。
次はなるべく早めに上梓します。ブクマ目標の50件を超えました。ありがとうございます。
天○の城の世界から降りてきました。
「降りてきたねー、あんな天空の島みたいなところから、今度はいきなり魔獣の天国みたいなとこー? あんな小さな池で何匹暮らしているんだろ?」
ジュウンの声は通る、本当によく通る。十五階に降りてきての感想が素直な一言ですこと……。
「ぐはぁっ」
ダメージを喰らっている魔王様がちょっと……、ほんのちょっとだけ気の毒になりました。
でも、みんなの共通意見だぜ、おい。
ダンジョンとはいえ、こんなに上下動の激しいところって、前世にあった異世界転移モノのラノベにすら登場しませんでしたよ。
ダンジョン設計者の魔王様よ、確かに平坦な階層ばかりではあるけど、初心者の学院の生徒には到底突破できるはずもない、無理ゲー仕様だぞ、これは。
なんといっても迷路もなければ、罠も今のところは無いな。宝箱も無いけど……。
ダンジョン自体が軟弱だから、極大魔法すら撃てないし、生活魔法だけって俺が提案してこなくてもそのくらいで無いと崩れるというのも………。
さて、十五階はボスの存在する階になりますが、ボスってどの魔物なんでしょうか……?
セーフティエリアの障壁越しに見える世界は砂地に灌木が生えているようなサバンナと俗に言われる景色をしておりまして、猫科と思われる魔物や、狼系の魔物が多数存在する混合生息域の様相を為しております。
「あー、猫さんだー、かわいー」
などと、騒いでいますが、それはなんと言っても安全なエリアだからこそ言えること。
剣呑な目つきやその個体数は今までの階を凌駕しており、危険度はマックス。
同格の狼系でも、そこへ混じるには躊躇する始末……。
なぜなら、この階層に存在する魔物には、ある特徴の体型を持つ。それは剣状の角、牙、たてがみ?を持っていることにあった。
刀狼は口の端に刀状の皮膚を持ち、威嚇のために口を広げた時に横に屹立する。今もそこでオス同士がメスを争っていた。
キンキンという金属質な音とともに、相手を斬りつけている。受ける相手もまた同じやり方で…。あ……、メスには無いんだと思っていたら、小さなのがオスと同じ口の端、そして、あごの下にありました。
「弱いと思っていたメスの方が武器は多いんだよな……。」
そう、ぼそっと呟いたのは、ヒィロ・シクワバ。実感こもってンなぁ、おい。
「武器じゃなくて魅力っていいなさいよ。」
おお、あっちでもケンカ友達だったアリィーが、こちらでも見事な揚げ足を取る。
「うぉっ………、アリィーか。魅力ぅ、………もうちょっと育ったらな……ふっ。」
「なんだ、その可哀想って目はー、表ぇ出ろや。決闘だぁー、決闘!」
ニヒルに決めようとするヒィロのセリフにアリィーが激高するのも見慣れた光景だな。
いや、本当に懐かしいわ。
でもさ、今は表に行かない方が良いんでないの?
これだけの肉食系の魔物が一杯のところで決闘してごらんよ、一滴の血であっても命取りになるよ?
「とは言っても、ずっとこのままここに居ても仕方ないよね。誰が行くのというか、探すの?」
魔物がいる。刀剣類を所持している。数が多い。生活魔法で倒せるの? と、失敗原因を論って(総ざらいして)いっても、結局俺たちには進むしか出来ない。
だからこそ、俺たちの気持ちは一つだった、それは詰まるところ、ボスはどこ? ということだった。




