66, ダンジョンで、………戦後報告⑩ マラソン
1/28に一〇〇〇オーバーのアクセス、ありがとうございます。
今回は映像が出てくるまで時間が掛かり申し訳ありません。
ギリギリの投稿です。
さて、次回はこの騒動に決着付けたいと……。
二,三日泊まろうかというはずだったのに、往復で一泊二日ぶりに、学院内のダンジョン攻略に復帰しました。一日の内容が濃すぎて一週間は居た気がしています。
学院都市内の方のダンジョンは、相も変わらず二階層目のモンスターハウスの攻略に手間取っている。一度、こちらの「工事屋」が突っ込もうかしら? もっとも、年齢的にはまだ許可が下りないのだが。
だが、学院内のダンジョンで従魔化して、それの登録に訪れるのに度々奇異の目を向けられるのもなー……。学院内で登録できれば良いのだが……、俺たちが登録しているのは学院都市の方だから、しょうがないか……。
さてさて、十三階へと降りてきてすぐのセーフティゾーンにゴーレムハウスごと転移しました。
建物から出てみると、そこは一面の草っ原でした。
前世の俺たちの居た時代に、これだけの土地があったら、あっという間にビルかマンションが建てられ、その土地の大きさごと屋上に庭園が築かれたと思うと、感慨深いものがあります。
なんとなく、ニヤニヤしている魔王の視線が鬱陶しいです。視線も鬱陶しいが文字も鬱陶しい。
一面の草原の遙か彼方に階段が見えます。今度のは昇る階段なのか?
とはいえ、完全な平原で草原。これは、もしや……。
「ここは、ボーナス階かー!」
と、叫んで飛び出した者が居ます。ユータク・クァッチャだ……。
お調子者なのは変わってなかったか……。
鑑定もまだなのに……。セーフティエリアの障壁に向かって駆け出していく。
障壁の外に出……………る所で、いきなり速度が落ちた。
そして、響く言葉は……。
『On Your Mark!』
ユータクの体が何かに操られるかのようにクラウチングスタートのセットに入る。
これは誰かが、相手なのかとは思うもののユータクの両隣は誰も居ない。ただ草原が広がっているだけ。
『Ready……』
ユータクの腰が上がる。
ここで両隣に変化が現れた。草原から、それこそ草が寄り集まって人の形を取る。
ユータクも驚いているが、その顔の近くから草が引いていき、コースが現れる。そこを走れというのかという風に理解したユータクから表情が消える。土魔法でスタート台を形成すると、本格的になるのを見ていたのか、両隣も同様に。
『Go!』
スタート台を蹴飛ばして、駆けていくユータクに両隣も同様について行く。陸上競技の経験者だったユータクは、再び風のように走れることを歓喜していた。そして、そこには同じ速さで走れる相手が居るからこそ、倍増する喜びがあったのだろう。目測で百メルのコースは、あっという間に過ぎて……そして同着で終わった。
「ああ、楽しかった。」
そう笑顔で話したユータクの一言が全てだろう。
そして、ユータクの姿はゴール地点から消えた。
同着だったユータクはセーフティエリアの近くまで戻され、コースはまた塞がった。
「えっ、また、ふりだし?」
唖然とするユータクの手には、両隣から貰ったのか記念の印か? 何かの葉っぱを掴んでいました。そんな彼を尻目に、俺は目の前の草原に対して鑑定を掛けた。
「鑑定!…………なんじゃこりゃ……。」
すまん、俺も唖然としてしまった。ヒリュキも隣で呆然としている。
「魔王よ、ここは薬草の階だったのか……?」
鑑定を掛けてみたら、足元の草から階段の所まで一本残らず薬草の草原でした。
「プークスクスクスクス、セトラ、ユータクの持つ葉っぱを鑑定してみろよ。面白いことが分かるぞ?」
そ、その笑いを人にやられると何かムカつく!
「むう……鑑定…………?こ、これは……………、土壌改良薬草? 土強草?」
驚きの薬草でした。土を肥沃にする薬草です。
「え? これがそんな草なのか? ………………あぁっ、だからか!」
ユータクくん一人で納得してって……あああ、なんてこったぁ!
「まさか、これ全部………そういうこと?」
ヒリュキ君も絶句していました。
「何々、何がどうしたの?」
ルナは不思議そうですが、周りの面々は分かったようで顔が引き攣っていました。
「ルナ、陸上というスポーツが前にあったよね?」
ジュウンが説明すると、ルナが同意する。
「有ったわね。」
「今のは、あなたの国だった所では、何メル走とかいうのかも知れないんだけど、ニッポン州ではかつて、アレを徒競走って呼んでいたの……」
ジュウンの顔が吹き出しそうに歪む。
「えっ……つまりユータクは薬草の土強草と徒競走をしていたと………プーーーーーーーー。」
おいおい、そんなに笑った……ら、ユータク……にわ……悪いじゃ……プーーーーー。
ユータク、悪い。ガマンしきれん。
「は、腹が痛ひ……」
全員、爆笑していました。もちろん、ユータクも。
俺を含めて、このあとに来る地獄も知らずに……。




