タク・トゥルの休日 終の③
「セトラ~、たまには帰ってきてゆっくりしなさいよねぇ。」
シノブさんが、酔っ払って放してくれない。別に普通のワインだぞ、どうしてこんなに酔うんだ?
「セトラ~、わたしにもゴーレムハウス作っておくれよ~。」
風呂で衝撃の体験をしてしまったホシィクという水竜様が、ゴーレムハウスを強請る。最近のゴーレムハウスの廉価版なら手が届かないでもないが、アレを個人で持つ人は少ない。事は単純で、実はあのゴーレムハウスは魔力を魔石に補充して使用するものだからだ。
各国の国王様が個人の資産というか、国王一家の資産として所持している所が大半である。その点で言えば、魔人であるシノブさんが領主一家にいるエドッコォ領は単独運用している。俺もたまに帰るし。
「シノブさん、俺は学院生だから、寮住まいなの。そうホイホイ帰られませんて。それとホシィク、ウェーキとの新居には早すぎるんじゃないの? それに高いよ、ウェーキの支払いにしても何年掛かると思う?」
そう返すと、シノブさんは反論し、ホシィクは真っ赤になる。
「そう言うけどアンタ、良く跳んでくるでしょう。それを夜にやればいいじゃない。」
どうも、寂しがっているのはセーラ母さまじゃないようだ。
「分かりましたよ、シノブ母さま。来月から始まる長期休暇の最初の一週間をエドッコォ領で過ごしましょう、それで良いですね。」
その言葉を引き出したかったのであろうシノブさんは、でへへへ~と笑み崩れていた。
そのあとで何かに気付いたかのように、ハッとした顔をし、こちらに顔を向けてきた。
「今、あたしのこと、母さまって言ったよね………、うん、セトラ、ありがとう。」
「ホシィクの契約先はウェーキなのだから、甘えるのはウェーキにして貰ってくださいね。ウェーキは魔力量の増量のための特訓を兼ねて、「工事屋」の方に力を注いで貰おうか。使いすぎると回復に時間が掛かるから、ギリギリのラインを見極めていけば、少しずつでも増えていくはずだから。頑張って「工事」しろよ。」
俺が幼い頃……、いやそれ以前から行ってきていた、普通じゃないやり方。
俺自身が見つけたやり方なので、普通のヒト族なら適性はあるはずだ。
「ヒリュキ、一日だけだったけど、どうだった? タク・トゥルの仕事は………。」
あの頃のお前と比べて……と繋げようとして、そのヒリュキの首が左右に振られた。
「俺たちみたいな国の濃度は無いけど、堅実だね。確実に昨日より今日、今日より明日が良くなるように立ち回っている。君みたいな王様を戴いて、どうするのかと思っていたけど、この国は難民から昇格する制度とか、君の作った建物や施設がやる気のある人たちへの道しるべになっている。心配ないよ。僕(俺)たちも居るんだからさ。」
魔王様が戻ってきて、頷いていました。
「そうか……。あれ、シャイナー。頼んでいた万能薬は?」
「手鏡通話で話していた通り、有効期限は過ぎていたが、俺もタク・トゥルの心痛を思うと居ても立ってもいられなくてな。闇フクロウに頼んで届けさせた。魔王国きってのスピードスターだからな。何しろ影から影へと跳べる存在だ。タク・トゥルの周りにはガードが居たからヒリュキに繋いで貰った。ルナ達が食事する際のジュースとして飲ませたはずだ。」
「効きめが出るのと、タク・トゥルの財布の限界が来るのと勝負するくらいにはギリギリだったようだ。スクーワトルアきっての辣腕宰相も形無しだな。何をそんなに買っていたんだろう?」
ヒリュキ君、それは聞かない方が良い。
将来、君が直面する問題でもあるのだから……、南無南無~。
ああ、そうだ、忘れていたな。
「ウェーキ、ホシィクを召喚してくれ。ヒリュキ、パットとルナ、タク・トゥルを呼んでくれ。」
ウェーキは召喚し、ヒリュキはそれぞれの者たちを呼んできた。
「ウェーキ、何?」
いつものダイナマイトボディをいつもの格好で現れたホシィクは、半分諦めながらも顕現してからヨットパーカーみたいなものを取り出した。ウェーキとの魔力経路からの魔力では、まだこれが精一杯なのだ。
それでも頑張っているようだな、ウェーキ。
「ヒリュキ君、どうしたの。あれ、この人誰?」
「ヒリュキ、呼んだ?」
ヒリュキに対する言葉が見事に関係性に現れているな。
「セトラ王、お呼びでしょうか?」
タク・トゥル、いつも通りで幸いだ。
「今回の騒動の原因が分かったので知らせておこうと思ってな…。」
俺の言葉に全員が、「ああ、この面子だったのか」とある意味、納得した顔をした。
「ウェーキ、ホシィクから自己紹介しとけよ。」
「僕はトモナ・ウェーキ・ワダンス。セトラとは従姉弟の間柄になります。こちらはホシィク、水竜です。訳あって従魔になってくれました。」
「ホシィクです。水竜です。セトラとは旧知の間柄です。」
関係性が読めなくて、タク・トゥルとかルナが目を白黒させている。
「パトリシアちゃんが好きです。」
ウェーキがいきなり告白した。タク・トゥルは目を剥いて驚きを表現していたが、ルナとパットは女性らしくしたたかで冷静だった。
「うん、気付いていたよ。でも、ごめんなさい。わたしはヒリュキ君が良いの。」
ハッキリとした言葉にウェーキも納得したようである。
「うん、分かっていた…よ。」
納得ではないか、そんな簡単に納得できる訳がない。
ヒリュキだって、納得いかなかったから、あの時行動したんだ。
でも、それで終わりな訳でもない。因果というものは生きている限り続くし、死んだあとでもそこに生じるものに影響を及ぼしていくものなのだし、今をしっかり生きることが「次」に関連するかも知れないんだから。
「ウェーキ……。」
ウェーキが、彼の心の奥底にある思いを告げざるを得なかったことにホシィクは、やはり気付いた。自分がホシィクとして前世を思い出す前に為した事柄のせいなのだと。
「ごめんなさい、パトリシアさん、ルナさん。あなたたちの記憶が飛ぶ原因は私に有ったのです。」
そう、静かに語り出すホシィク。慌てて止めようとするウェーキを手で制して話を続ける。
「まだ、その時のわたしは記憶を取り戻していなかったのだけど。それでもウェーキに惹かれていたの。彼の思いを知っていたから、悔しかったのね。わたしに気づいてって。セトラに呼び出されて、自分が何者かということに気付いた時、すごく恥じたわ。自分が為したことに……。でも、あなたたちの記憶を消すことに関して、それまでのわたしにとって当たり前のことだったものだから。だから……、本当にごめんなさい。」
それは懺悔というべきもの。許しを請おうとする者の言葉。最後の方は消え入るような感じの声で、だからこそ、パットもルナも頷いたのだ。
「「その思いはわたし達も分かるよ、ホシィク。分かるからこそ、伝えるね。次にやったら倍返しするから!」」
何とも、女性は強いね。強かなほどに……。しなやかなほどに……。
「タク・トゥルもそれで良いかな?」
俺が確認する。俺が仲立ちになっているからだ。
「さて、何のことですかな。私は休みが与えられて、娘と孫娘に囲まれて素敵な時間を過ごせたのです。これ以上のことなど有るはずがございません。」
大人だな、タク・トゥル。
「ありがとう、エドッコォ領に秘蔵していた特上のワインを贈ろう。あと、カウエルの肉の良い所を……」
そう、告げる俺に対して、彼の言った言葉は……。
「あとはそうですね、ゴーレム鉄板の試作をお願いしますね。あちこちから引き合いが……」
そう、返してくる言葉に俺は絶句した。あちこちって、どこだよ?
親父もブラックだったが、タク・トゥルもブラックだったか?
「……分かった、善処する。」
それしか言えなかったよ……。手伝えよ、ウェーキ! ホシィクも!
明日から、ダンジョンの続きを始めるか?
次は一三階。何がありますやら……。
九十二話、終了時の時のレベル、
【名】エト・セトラ・エドッコォ
【職業/サブ】魔導士Lv87/気象魔法士LvMaX+α、魔物誑しLvMaX
魔導士は魔法士の上級職、LvMaX+αはLvドレイン攻撃を無効化する。
【称号】竜殺し、魔王の友達、国王、国家魔法学院講師、ダンジョン・リーダー、魔物誑し、指揮官new、料理人new、新工法の発見者new
【HP】9800
【MP】29,959,229
【STR】629
【VIT】669
【DEX】762
【AGI】620
【INT】952
【LUK】810
【属性】
火724/水701/土754/風995/光658/空間LvMaXにつき、時空間へ、上位変換し、Lv3/闇710/無623
【スキル7/10】
身体強化72/ダッシュ65/鷹の目LvMaXにつき上位の鵜の目に進化。鵜の目12/料理LvMaXにつき称号へ変更。/指揮LvMaXにつき称号へ変更。/予知55/魔物誑しLvMaXにつき職業へ変更。
【控えスキル1/10】
お笑い55
【装備】
竜革の靴/国王の竜革製魔銀防護子供服(上下)/短剣/まきびし数種/指弾/長剣new




