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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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タク・トゥルの休日⑤

累積で四万アクセス越え、ありがとうございます。

さて、次の話を……。

『ドラ子、その辺にしときなさい。姿は少し変わったが、俺は俺で、正真正銘のドラ吉だ。今のドラ子のダイブで怪我したものもいるだろうが、降っている雨にその身を晒すだけで癒やされるはずだ。『癒やしの雨』という特殊な魔法を維持して頂いている女性は、我があるじ(・・・)様の大切な方だ。』


『あ…あるじ様(・・・・)?』


『あるじ様って誰のことを?』


『あるじ様……だと?』


『あり得ん、あの傲岸不遜(ごうがんふそん)(超いばりんぼ)、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)(超わがまま)、お山の大将のドラ吉様であった方がまさか!』


 などなどの言葉に火トカゲたちが、驚天動地の心境であることは察せられたが、一言増えるたびにドラ吉の青筋がどんどん増えていく。


 こ……これは不味(まず)装転移(パワスタ)のレベルを上げておこうっと。



『言いたいことはそれだけか?』

 そう言うと、思い切り息を吸い込んだドラ吉に対して、俺を含め『すわ、ブレスか?』という警戒をしたとしても不思議ではなかっただろう。


 だが、彼が吐いたものはブレスなどではなく、むしろ、いい意味?で裏切られた。


 とはいえ、

『あるじ様のおやつを食べてから、同じ事が言えるものなら言ってみるがいい!』

 はあ、俺に丸投げですか……。


『ドラ吉さぁ、まんずええ事言う。確かに食ってみてから言って欲しいもんだなっす』

 ドラ子よ、お前もか……。というか折角、竜人化したんだから、いま勉強している人間の言葉も披露しろよ。というジト目をするとドラ子は慌てて弁明した。


『ま、まだ恥ずかしいです』

 そういって照れるドラ子を見てドラ吉が、こちらにジト目を向けてくる。

 何だよ。お前も練習しろよ。見てろ、目の前にニンジンぶら下げちゃる!



『んじゃ、火モグラたちへ渡しているものを味わって貰おうか?』

 普通に流通しているワームコインを取り出して、火トカゲに一匹に一枚ずつ渡していく。

 小さいコインの形を見てがっかりしているのが見て取れるが、まずは食ってみろ!


『なんや、火モグラの連中と同じものかい?………………』


 ポイッという形容詞が似合うほどの動作で口に入れクチャクチャやっていた火トカゲの連中の、その表情は見物だった。


『…………何やコレ? ほんまにワームのなんか?……』


 噛めば噛むほどにワームの濃い味が出る。その濃厚なエキスにうっとりしていた。

 俺たちの前世で言うなら、ホタテかアワビの高級乾物を考えれば大体合っている。


 最近は火モグラもこれだけじゃなく、行動による査定でフラレンチ・トゥストを食べる個体もいるが大体はこのワームコインが主流である。でなければ、庶民と呼ばれるものたちに恩恵が来ない。もちろん、製法は独占である。


『何やコレ~』

『何やコレ~…』

『何やコレ~……』

 火トカゲの連中が、骨抜きになっていた。


『こんな美味いもん食ってんのかいな? あいつら……。ドラ吉様が自慢されるだけのこと、ようよう分かりました~。ウチらもお願いしたいですぅ。』

『お願いします~』

 やっぱり、従魔契約の運びとなったか?


『あるじ様のおやつは無敵だ!』

 ドラ吉の大絶賛には、別に異論は無い。お陰で荒っぽいことはしなくて済んだし、ただなぁ……。

『無敵です』と大合唱するのもいい加減にしろ!


『契約は火トカゲのボス一匹と副ボス四匹で統括する。代替わりしたら、教えろよ。それと、自分たちのスキルを確認しろ。一つくらいは変なのが増えている可能性がある。』

 俺との契約だと、俺が欲しいスキルが増えているケースが頻繁にあるので、確認して貰う。

『ドラ吉とドラ子よ、竜人化する時は人間の言葉を話せよ。』

『や、やってはいるんですが……、進まなくて……』


『いい訳はいいわけ……、全く。あ、そうだ。火トカゲの連中には、やって貰いたいことがあるからな。それでボスの名前は……何……。アカカゲ? ……ぷぷっ。いや、ちょっと前に聞いたことがあって。全然、別人の話。わ、分かった、アカカゲよろしくな。スキルだけは確認しておけよ……。ああ、アカカゲ、これ味見してくれ。』


 そう言ってドラ吉とドラ子の目の前で渡したそれは、試作品。

 食い意地の張った二人(匹)の目の前で、おもむろに取り出したのは、黒糖がまだ発見出来なかったので、ザラメをまぶしたちょっと太めのガリントと銘打ったもので、前世では、いろんな種類が作られていた。


 一本の大きさは長さ十五セチ、直径三セチほどのもの。ガリンと音がすることから命名。

 

 小麦粉を練って油で、ほどよく揚げるだけという手間の掛からないお菓子。

 魔物たちの歯は頑丈なので、相当堅くても大丈夫なため、人間用とは別にしてある。


『こ、これは……。』

『試作品だ、感想を聞きたい。』

『あ、あるじ様、し、新作ですか?』

 ドラ吉とドラ子がよだれを垂らしているが、今はアカカゲの分のみだ。

 ガリン、ガリガリという音とともに口で咀嚼するアカカゲの表情は言うまでもなく陶酔していた。


『う……………、美味い…………。歯応えも……、さ、最高!』

 そう言って絶句。


『ドラ吉もドラ子も人間語の習得に励むならば、今回だけ……。』

 と、全部言わないうちに、縋り付いて、目をウルウルさせていた。

『や、やります~』『やるです~』

「えっ、何?」

 人間語で聞いてみた。

 後ろでウェーキが小さく「鬼だ」と呟いていた。君にも用があって連れてきたんだけどね……。後で覚えていろよ。


「「や、やる、やるます」」

『努力を認めよう。はい、一本ずつ。』

 そう言って、手渡した。


 後はもう、至福の表情でガリンガリンガリガリと音と味を楽しんでいました。




 さてさて、これだけ火の属性がいる内にやることをやっておこう。


「ウェーキ、ゴーレムハウスを通ってドラ湖に行くぞ。」

「ええっ」

 何を驚いている?


「お前も今のうちに契約しとけ、次にあんな事が起きてみろ……。(かば)いきれんぞ。」

「や、やっぱりするの?」

「今回の一件の発端はお前が関連しているだろう?」

 ルナの件はルナの酒癖で終わるが、パットの方はそうではない。


「お前がパットを好きなことは知っている。というか男どもは全員気付いているぞ。女性陣は何も言わないが、鈍感と言われる男の俺から見てもダダ漏れだからな。間違いなく、本人も気付いているな。」

 そう、トドメを刺しておく。


「ましてや、お前に手助けしてくれる水の精霊は確実に知っている。だから、魔法を使って記憶を封じた。何度もそんなことがあったらタク・トゥルの怒りがこちらにまで及ぶ。」


「うう………、バレていたとは……。」

 頭を抱えているウェーキを尻目に、ロケットハナ・ビーの蜂蜜の小瓶を取り出して、水の精霊に声を掛ける。


「ウェーキを守護し、力を与える精霊よ姿を顕したまえ。」

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