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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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宰相タク・トゥルの悩み

 わたしは、パレットリア新国の宰相をしているタク・トト・トゥル。


 出身はタクラム・トー。

 タクラムに存在する小国の生まれだ。


 スクーワトルアに留学していた折に、学友にコロナ・スタ・スクーワトルアが居ただけのこと。無論、それだけでスクーワトルアの宰相になった訳でもないのだが。


 愛娘を産んだ妻とはすでに死別してしまったが、愛娘のエテルナは良く育ってくれた。


 いや、快活すぎるくらいだ。

 ガルバドスン魔法学院の強固な結界を破壊しようとか……、何を考えておるのだ!


 ガルバドスン魔法学院のルナティック・マジックと呼ばれたその数々は両手両脚でも足りないくらいのモノだった。卒業間近のアレさえ無ければ、ソレを引き寄せることも無かったのかも知れない。


 卒業してすぐにレシャード殿に見初められ、すったもんだあって男爵夫人に収まったものの孫娘を産み、たまに帰ってきた我が家でも笑顔は絶えなかった。


 ただ、あのルナティック・マジックは跡形も無く娘の中から消えてはいたのだが……。


 そして、あの騒動……。娘が卒業してすぐの入学生にシュッキン・ポウがいた。

 タクラム・チュー皇国の皇子であるシュッキン・ポウ・ムラ・シグマの無茶ぶりが私達を苦しめた。横恋慕に始まり、拐かし、そして、レシャード殿の抵抗もむなしく、拉致。

 そういう事態が……、地獄の苦しみが始まった。


 愛娘の不在、孫娘の不在。レシャード殿の不明。宰相としてスクーワトルアの舵取りをしている自分が使える者たちでさえ、音信不通になる始末。


 何をしていいのかが分からなくなる。


 不安を煽られ、タクラム・チューの甘言(かんげん)に踊らされ、スクーワトルアを陥れてしまった。魔物の進軍に合わせた間者たちの受け入れ。


 自分でもどうしようも無かった時間の流れ……、私を殺してでも止めてくれる存在を当時の私は待ち続けていた。死んで、愛娘に会えなくても孫娘との永遠の別れだとしても……、それを私は望んでいたんだ。



















 その私の心に風を吹き込んだ一人の少年というか、当時二才の幼児のもたらしたものはひどく大きいものだった。


 その風は、私の心に新たな気持ちを吹き込んでくれた。


 そう、あの時、私は忘れられない言葉を彼ではない人から聞いた。

























 ヒリュキ様が自らの魔力と共に想い溢れる声を乗せる。

「パット、逢いたいよ」

 その言葉に、私はハッと顔を上げる。私の中に活力が戻っている。


「ヒリュキ様……」

 だが、その声はヒリュキの声を乗せた旋風の散る轟音に半ば吹き消された。

 そして………………………………。

















「…………、わ……風が……、え………、この声………。ヒリュ………キ……くん?」


 その声が聞こえたとき、ヒリュキ様と私はただ、静かに涙を流しながら、呟いていた。


「「絶対に助けるよ、必ずだ。」」







颯転移(テラスタ)!」



 その後は、会いたかった者たちに会え、自分の生き方にケジメが必要だった。


「コロナ王、永らくお世話になりました。私は、あなたたちを裏切ってしまった。そして、自分が進む道を知ってしまいました。申し訳ございません。」


 慰留の言葉も戴いていたが、この国スクーワトルアには私と同じくらい、いや、それ以上の才の持ち主がおられる。王を補佐し、いずれ王として立つ方だ。お任せしよう。

 承諾の言葉も貰っていないが、私は、あの方の微々たる補助が出来ればいいと思ってしまった。


 べ、別に、愛娘と孫娘に会いたい訳じゃないからね……いや、希望はしているが…。










 我が王に言いたいことは今は一つだけ、本当に切迫していることです。

「セトラ王、早く工事してください。床暖房もそうですが、ゴーレムハウスも……。それとエドッコォ領から特使が来ていますよ。「あのゴーレム譲って」ってなんなんですか!」





 本当に才のある王です、私の王。ありがとうございます、娘たちにもう一度、合わせてくださって。




「セトラ王、このゴーレムセットは貸し出しにしませんか? 賃貸料で稼ぎましょう!」


「タク・トゥル、お前も染まったな。」


「あなたが王で良かった!」

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