表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
82/337

65, ダンジョンで、………戦後報告⑨ とどめ

ギリギリ……。すいません。表現がイマイチとか考えていたら、遅くなりました。

 さて、夕べの狂乱のバーベキューパーティーを無事に終えて俺たちは一二階へと降りてきた。そこにあった風景はというと、海の上で氷が一面にありました。


 非常に寒いです。


 出た途端にシュッキンが結界を張ってくれていました。若干ですが少し寒さが緩んだ気がします。俺がやると、いま歩いている氷の塊が溶けてしまうかも……なのでしばらくは自重します。


 あとは、キマイラなんだけど、猫科なので冷たい地面が嫌いのようで飛んでいたのですが、今は親の方が子供形態になって、ともにパットとルナの腕の中に抱かれています。


 逆に元気いっぱいになったのは、雪狼を含む狼系の諸君。ダーと走って行ってはダーと走って戻ってくる。あとは取ってこーいでもやりたいんだろうなぁ。もう、目がキラキラしていますよ。


 しかし誰だ、こんな風景を選んだヤツは、成敗してくれる。


「悪かったな、俺だよ、魔王様ですよ。」

 いじけている魔王様がそこには居ました。



 この一面の氷の世界で何も居ないのかと思ったらそうでもなかったみたい。


 あちこちでドスドスとかという重たい音……、格闘技なんかで聞くような音と言えばいいのか、ウィーッとか奇声が飛んでいたりしていますが、ここはなんの魔物がいるんだ?

 ……また、魔王様の格闘技魂の開眼だったりするのか?



 しばらく歩いて行くと「かいじゅう」系がいました。




「あれ、ズルいだろ……。体格差、ハンパない。また、ここもルール無用のマットなのか?」

 魔王様が一緒にそれを見ていましたが、額には青筋がくっきり。


 体長十三メルのオットトドが、小柄なといっても五メルほどあるがヒョウ柄アザラシとレスリングをやっていた。とはいえ、二倍の差があると大人と子供の差に等しく、見ていてイライラしてくる。そう思っていたのは、俺たちばかりでもなかったらしく、熱く燃えている男がいた。


「あ、あいつ…ら。そこまでして、自分の位置を高めたいとか思ってんのかっ? やっていいことと悪いことの区別すらつけねぇってのか? マジで許せねぇ!」

 そう憤るのは、アクィオ・マヤチグ。


 君も変わったねぇ………。

 あの乱暴者がこんなセリフを言うなんて、俺は目を疑ったよ。

 まぁ、いつまでも乱暴者のままではいられないんだけど、それでもさ。こういう出会いは絶対に何かを残すもんなんだな。あの時とは違ってね。あの時は今の彼らと同じモノだったからな、君は……。



 とはいえ、十三メルもの相手との対峙は、肝が冷えるな。

 無謀にも飛び出していったが、何せ、この世界は思いが形になる。


 元々、魔法の素養は高かったのだとは思うが、彼の両手首のところに精霊が集まってきている。

 熱い思いと、同調したモノたちの願いが一つになれば、凄い力になるからな。

 君は一度体験していただろう? ルナとの結界挑戦部を作った時のこと。

 そして、パレットリア新国での結界破壊にも挑戦しただろう?


 アレを思い出しながら、さぁ、撃て!


「乾燥!」

 そう言って、足元の氷を目掛けて火の精霊を纏った右拳を打ち下ろした。

 巨大なオットトドの体表面を含む半径五十メルほどに乾燥させるための熱風が駆け抜けた。そうだなドライヤーの強力なヤツと言っていいか…。


 え……? か、乾燥………ですか?


 あ…、イクヨが片手を上げて何やらサインを出していた。気象予報士だったイクヨならば、氷の特性について知っていたんだっけ。


 氷は、表面に水分がある時に滑る。

 全く水分が無いならば、滑らないのである。

 冬道で凍っている道で滑って転ぶのは、人や獣の体重などで氷が圧縮され、または体温や摩擦で微量な水分が発生するからである。


 「海獣」系であるオットトドやヒョウ柄アザラシなどが氷の上で素早く動けていたのはこれを利用していたためだ。


 だが、アクィオの生活魔法の極大発動で、乾燥し足元が確かになった上に水分が宙に舞い、目くらましになった。アクィオに向けて打ち降ろしをしようとしていたオットトドのひれは空振りし、そこに踏み込んだ彼は利き手の左手で風を纏いつつアッパーを撃ち放った。


「ウィンドミル・ジョルト!」


 踏み込んだ勢いのまま風の魔法を握り込んで放ったそれは、シャドーボクシングのように何にも触れないまま振り抜かれて止まった。

 

 えーと……、アッパーで何か撃ちましたけど…………。どうなったんでしょうか?


「ヴォォォォォン」というオットトドの驚きの声が辺りに響く。一メル半ほどのヒト族が放ったその拳、そして、風の精霊の威力は十三メルもの高さにあるオットトドのひげ(・・)に損傷を与えたのだ。猫とは違うから大丈夫と思ったあなた、それは違う。

 ヒト族で言うなら目・鼻・耳が効かなくなることに等しい。

 ハッキリ言って一大事。


 アクィオ本人にはそこまでの被害を与えるつもりはなかったようで、頭上から降ってきたひげにびっくりしていた。

「え……、ええっ! やっちまったぁ! セトラ…、なぁ、セトラ。どーしよう、これ?」

 そこまで焦るならやらなきゃいいものを……。


「大丈夫ですよ。生えることは生えますから……。ただ、可哀想だと思うのなら責任取ってあげれば、どうですか? 彼も反省しているでしょうから」

 俺の言葉に彼、アクィオはキョトン。


「責任て、なんだ?」

「従魔契約ですね。」

「へ……、従魔契約? …………。ちょっと待て! このサイズをお持ち帰りしろって言うのか?」

 焦る彼に、俺は一言言うだけだな。

「イカイガ、お持ち帰りの魔王様や、雪狼筆頭に俺が何匹抱えていると思います?」

「そ、そ、それは……、そうだが…。こんなの持ち帰ったら、家族が……。」

 すでに君と同じ状態の人はいーーっぱいいるから。ククク、逃がさないよ?


「それに従魔契約()の小型化は、体の修復もしてくれますよ。彼にとっては何よりのスキルじゃないでしょうかね?」


「あぉぉぉぉ……」とアクィオを見詰めて強請(ねだ)るような声を出すオットトドにたまらず白旗を揚げた。 ご愁傷様です。魔物誑しの弟子がまた一人増えたな。


 オットトドのボスを彼が従魔にしたため、この階に居た群れで小型化が始まり、今までと逆にヒョウ柄アザラシなどの台頭を許してしまったようで、今度は激怒の魔王様に仕付けられていました。


「結局、ここでもトーナメント表が必要か……。」

 魔王様が項垂(うなだ)れていました。ヒョウ柄アザラシもとい、コバンアザラシと言うらしい、縁起のいい名前だな。魔王様に付いてくるそうです。南無南無~。


「がんばれ、魔王様!」

 励ましたはずなのに……。

「やかましいわ!」

 怒られました……。俺は悪くないと思うが……。


「くそぅ、とど(・・)め…。」






「ゲン直しと装備の交換に一度パレットリア新国に行ってきます!」

 そう宣言して、「転移」と言おうと思ったら、アクィオや魔王様を含めてしがみつく者多数。なにやってんの……、おまいら?


わたしらも連れてけ!」

「え~、お前らの装備は実家だろー。そっちまで行く気無いぞ。」

「あったかいとこ、行くんでしょ!」

 まあ、その通りです、はい。

「美味しいもの食べるんでしょ!」

 その通りで……。

「だったら、連れてけ!」

 了解しましたよ。今回は土産もあるし、二,三日泊まってきますかね~。


総転移(オールスタ)!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ