64, ダンジョンで、………戦後報告⑧ とどめ
『みぁう、みゃぁぁぁぁぁ、みゃぁぁ、………ふみぁうぅぅ……』
パットの養い子であるキマイラのスキップの、情けないその言葉に俺は吹き出した。
「ぷぷっ」
『みゃぅみゃ!』と、スキップ。
『みゃうぅ、みゃぅぅんみゃぁ?』と、キナコが疑わしげに唸る。
『だいぶ、人間くさくなってきたな、お前ら。俺の通訳がいらなくなっているぞ? 気をつけないと、感情がモロわかりになるぞ。』
口に出さない想転移で注意しておく。まぁ、時間の問題でしょうが……。
言葉の通じない前世でも、お互いの意思や言っていることなどを理解することくらいは出来ていたからな。
Zooリンガルみたいのもあったくらいだし。
で、キマイラたちからの言葉に答えましょうか。
『いい手なんて、いっぱいあるぞ。』って。
頭上の海で一番の暴れん坊をひとまず排除する方法。
さっきからこちらに向かって進路上の邪魔者を排除しているだけのように思わせるヤツがいるが、何のことはない単なる嫌がらせだ。拗ねていると言っていい。だが、この階のボスではない。ボスの訳が無い。メリンダのように普通は泰然自若として(落ち着き払っている)いるものだからだ。
網を使うとか、魔法を使うとか、濡れないで済む方法もあるけど、ひとまずはどれがボスかを見極めることでしょうか。
「『さてさて、どれがボスなんでしょーねぇ、ダイマジョオウイカのイカイガなら、分かるかな?』」
海のことは海のヤツに聞けって言うし、あれだけウズウズしていれば、一目瞭然ですがな。
「『こ、これはあたしの出番よね………、ぷくく。でもボスは挨拶だけして、帰っちゃったでしょ。あの迷惑なヤツを始末したらって事で、さ。』」
イカイガが笑っています。やっぱりバレてたか。
面倒くさかったので、想転移ってました、全員に……。
「「「「「え゛っ、挨拶して帰ったぁ?」」」」」
そりゃ、びっくりするわな。いつの間にって事で、
「『ああ、あの迷惑者を始末して欲しいってよ。そう言って帰った。』」
「「「「「「「「「「いつ?」」」」」」」」」」
全員が訳わからんっちゅー顔をしてます。
「あれ?気付かなかったか? あのとび鯛だよ。」
そう言ったら、頷く顔が増えた。
「ああ、あの時の。確かフライング・ムーンって呼んでいたよね? セトラって。」
そう、ルナがぼそりと言うと、ヒリュキとユージュがツッコミを入れてきた。
「あ……、セトラ…、名前を付けたんだ?」
「いかにも、先生らしいですよ、そのやり方って………。」
「「「「ああ!そういえば………。」」」」
「魔物誑しってハンパないわ……。」
魔物誑しの弟子の中で一番レベルの高いヤツらが何を言っている? 気象魔法は徐々に形になっているし……、なぁイクヨ? ユージュ?
「『お、来たな。イカイガ、バンザイだ。バンザーイ……。おお、それそれ……捕まえたら合図しろよ? お前まで引きずるような規模のヤツだからな。』」
イカイガにバンザーイと言って両手というか触腕を上げさせた。頭上の海にざばんと入ったイカイガのそれはボスにとっての邪魔者が、また豪速球で通り過ぎようとしたのを阻止しようとした。
それを捕まえさせた。いや、………させようとしたのだが、何となくイカイガの触腕とその豪速球との間に装転移を張っていた。
「確かにこりゃ邪魔者だわ。イカイガの触腕だけだったらズタズタにされていたな……。」
装転移に食い込んだままのそれをこちら側へと転移した。
「『いやぁ、なにこの子。スパイクが付いてる。しかも赤いわ。』」
「『これも異名持ちだな。朱雀雲丹、別名は赤雀雲丹、通常の三倍の速度で移動しているそうだ。』」
ったく、大根おろしてワカメと和えるといいダシ出るそうな。
どこの何だよ、中身は。って思ったほど。
ちなみに、さっきから弾かれていた魚の魔物はマゼラスとサラムズという魔物らしい。
まぁ、換装岩団なんていう魔人がいるくらいですから、こういう魔物もありですかねぇ。
「『約束を果たしてくれたようで済まない。わたしの力では彼とは到底、すれ違いしか出来なかっただろうからな。さて、あるじ殿、参ろうか。』」
ボスであるとび鯛のフライング・ムーン(略して、フラムン)も召喚陣を持っている。
彼のお腹がその場所で、紋様がそうなっているそうだ。
バーベキューで活躍しそうなと思っていたが、そうだ、今日はバーベキューにしよう。
「ダルマン、イカイガ、フラムン、ワリぃが毒のないとこの仲間たち少し出してくれや。バーベキューやるぞ。」
そう言って取り出したのはバーベキューも出来る鉄板。
このあいだのピザの時にやった方法で、熱源はファイヤーボール。
四角くした鉄板の真下に火の玉の場所を。中央のスペースには、焼き専門のゴーレムを設置、網のところでは海産物のバーベキュー。あとの三つは、丸い穴の開いたタコ焼きスペースとタイ焼きスペースが一緒になり、その横に、クレープを焼けるようにした。今回の目玉はそれもあったが、もう一つの鉄板には、カウエルの霜降りステーキが……。
「「「「「ス、ススススス、ステーキ?」」」」」
「ふわぁ…………、極旨!」
「早っ!」
「うわぁ、クレープって。なんで作っているのがゴーレム?」
「だって、俺だって食いたいんだよ!」
「あれ? あの茶色いのって、まままままま、まさかチョコレート?」
今回は仲間も増えたけど、驚きも増えただろう?
「アレは、ロッキーに頼んで探して貰ったヤツだ」
魔王様の魔物のロッキーくん。カカオヤシの系統でした。
と、そこへ。
「あらあら、バーベキュー? いいわねぇ、あたしたちも混ぜてね。」と乱入した方は言わずもがなのシノブ・エドッコォ様。どこから見ていたのでしょうか?
しかも繋いでいるところから、知り合いたちが乱入してくること。忠実ですねぇ、あなたたちも。
「『そりゃ、繋ぎっぱですもの。あら? どこに行ったかと思っていたら、ここにいたのね。スザクの四代目、どうです? ウチの息子は?』」
と、赤雀雲丹と会話していました。
「『うむ、こんなに魔物に好かれる御仁も珍しい。気に入った。これから一緒に行動させて貰いたい』」
と、とどめを刺してくれたのは四代目さん。マジかよ。
「『みゃあああぉ、みゃううぅぅぅ!』」
ま、いーか。今日はここでゴーレムハウスに泊まるか………。はぁ。




