63, ダンジョンで、………戦後報告⑧ とと
さて、気を取り直して一一階へと降りていきますと、………………そこは海の下でした。
……海の中を通り越して、海の底でもなくて海の下……ですかぁ?
海の上が透けて見えるのですが、どうにもダンジョンの天井で。この海は砂漠の下に直で存在しているという事……ですかね?
その割には、結構明るい。
前世の時にあった行動展示型の水族館というのが正しい見解でしょうか?
ただし、そんな前世のことを話しても俺の同期の人たちでは分からない人たちの方が多いです。
時折、頭上の海面から飛び出した魔物も居ますが一メルほどの大ジャンプをしてもまた頭上の海面へと戻っていきます。見ていると、こんがらがっていきます。
しかし………。
ぼと。バタタ、ピチピチ。
この音は何かというと頭上にある海から何かに弾き出され一メルの高さを超えた魚の魔物が落ちてくる音です。狼君たちは匂いを嗅いだりして、ちょっと腰が引けていますが、目がキラキラして興味津々の二匹を抑えるのに苦労している人たちが居ました。
パトリシアとルナです。
「「ま、待って……、待ちなさい!」」「キナコ!」「スキップ!」
落ちてきた魚の魔物がぴちぴち跳ねているのを見て、異常に興奮していました。
そりゃ、普段はお目に掛かれない状態ですもの、気持ちは分かります。
だけど、どんな毒を持っているかもとパットとルナは、その身を案じてのことだと、思う………たぶん。
彼女たちの養い子たちはキマイラ種、猫科です。
それと、野生を刺激されたのか、プの姫様たちの行動が凄く怪しいです。
シッポがぴーん。魚の魔物たちの跳ねる音に耳がぴくぴく。
「「にゃっ」」と、いう一言のもとに猫パンチしてました。
いいんですかねぇ………。一国の姫様たちの蛮行。
ヒリュキとユージュに止めるようにアイコンタクトしましたが、どちらもただ、首を振るばかり。本能には勝てないというところなんですかねぇ。
「「いやいや、無理だから……。」」
あとで裏を取ったところ、過去にあの状態になったことがあって、盛大に引っかかれたそうです。トラウマっていました。
それはそうと、今もボトッと落とされた泳ぎのあまり上手く無さそうな魚……マンボウに似ていますが鑑定を掛けると、とび鯛と出てきます。
マンボウのようには大きさはそれほどないのですが、体形的にどうにも飛ぶどころか普通に泳ぐのも難しそうな真ん丸お月様というのが正しいんじゃねーの?
飛ぶための翼も、ちみっとした感じのものがエラらしいところに生えているだけで、アレでは生物学上飛べないというクマバチがその羽ばたきの回転数で飛ぶことよりも遙かに難しいのではないかと思われる。前世の自然界にいた、普通のミツバチやスズメバチがホバリングも出来るプロペラ飛行機なら、クマバチはほぼ一直線に飛ぶジェット機のようなもの。
このとび鯛は、やがて頭上の海へと帰っていきました。飛ぶことは出来ずに、フグのように膨らんでボチャと着水すると沈んで泳いでいきました。
『みゃみゃみゃ、みゃぁぁぁぁ、みゃっ!』
頭上の海って………言っていいんでしょうか? その海面までの高さは2.5メルほどあり、俺らがジャンプしてもまず届きませんが、キマイラ君たちは別です。
ですが、重力はこちら側というか下側にあるため、キマイラ君たちが一度大ジャンプして海面すれすれの魚型の魔物にアタックを仕掛けました。
ところが、魔物がスルッと逃げたために、そのアタックは見事に空振りした上に海面だけを猫パンチしちゃいました。そのあと、体を捻って着地したところまでは良かったのですが……………。
「みゃぁう……」
頭上の海面が一メルほどの高さで抉られると、表面張力を失って下に落ちてきます。そのことを忘れていたというか気付いていなかったキマイラたちは………。
「あ…」
誰かの声がしたあと、ちょうど彼らが着地した瞬間に頭から海水を被りました。
『みゃ?……………、みゃぎゃぁ!』
お風呂を異常に嫌う猫そのままの反応に、周囲から、失笑が漏れていました。
「「「「「「ぷっ!」」」」」」




