62, ダンジョンで、………戦後報告⑦ あねご
メリンダ率いる群れは、ボスのメリンダが取得した体色変化という特質に欣喜雀躍してい(つまりは躍り上がって喜んでい)た。
メリンダとその子供たちが獲得したような色ではなく補色となる枯葉色をベースに濃紺が付けられるような保護色をゲットしていました。
ただ、同じ雌には甘いらしくメリンダと同系統の緑で雄と同じように濃淡が付けられる保護色でした。淡くすればメリンダの色に近づきます。
『オウオウゥゥゥ~ン』
『ガウゥゥゥゥ』
セーフティエリアの障壁を間に挟んでお互いにガリガリ爪を立て合っているのを見て、つい和んでしまった。
「『へぇー、メリンダ、あねごって呼ばれていたのか? さすがだな』」
口に出しながら、想転移って、出来るものなんだって最近、思います。
俺が大変便利になりました。それまでは、共用するか、何を話しているのかを後付けで説明していました。双方で意思が通じるのは良いのですが………。
「あねご? メリンダが? さすがの貫禄だものな!」
ヒリュキの素直な感想に、メリンダが凹んでいました。
「ガ……、ガウゥゥゥン……、キュゥ!」
耳を伏せ、シッポも勢いが無くなり垂れていました。
体を伏せの状態にし、前足で顔を覆う始末。……芸達者だな、おい。
俺は、会話を聞いて感想を言っただけなのに、メリンダに睨まれました。
ですが、口はやっぱり災いの元、気をつけなければ。これからは意識的な切り替えを付けておこうと思いました。
『『『『『ガゥガゥ、ガゥゥン』』』』』
ジョン、お前たちもか………。
自分の従魔たちにもダメ出しをされました。……南無ぅ。
俺もガックリ来たそのとき、ダンジョンに響くファンファーレ。
『一〇階のボスのダメージを確認。一〇階クリアでする。』
一一階に通じる扉が開いて、その扉が勝手に喋り始めました。
つい、魔王様をガン見しましたとも。なんだよ、アレ?
『一階から一〇階に到るまでの魔物の服従を確認でする。レベル換算にポイントを移行でする。絶滅種無しのため、一〇〇万ポイントを加算するでする。乱入魔物のポイントを加算するでする、ノコギリソウ、キマイラ、ダルマオクトパス、世界樹の若芽、ロケットハナ・ビー、ドラゴン飛行種二匹を確認したでする。現在の従魔契約で未契約は一種二体でする。種はスライムでする。この扉を潜る前に契約をするでする。現状で六十二名プラス二名に、一人当たりのレベルで加算されるでする。』
「はぁ? 従魔未契約って………、スライム? 一階のか? 魔王様、復活させたのか?」
いきなりのアナウンスにビックリした。
「え? 干渉してないぞ、俺は今回の討伐にタッチしないって言っていたじゃないか。」
そう言って、空中に何かタッチパッドを展開すると、猛然と叩き出した。
何をしているのかと思えば、一階の編集カメラ映像をお取り寄せしていました。
『…………「風よ、唸りを上げ彼のものに鉄槌を与えん。風鎚!」
イクヨの放った風鎚が、俺が撃ち放って堅いメ〇ルスライムに噛みついていたままのまきびしに貫通力を与えた。
金属と金属の擦こすれるような音かと思いきや、ズドォーンと腹の底に響くような重低音が発生し、狭い洞窟内を衝撃波として戻ってくるのが何故か分かった。
「「風よ疾く、集いて防壁を成せ、風壁」」…………』
魔王様のシミュレーションが終わったようだ。映像がそこで止まっている。
「セトラ、このとき使ったまきびしは今どこにある?」
意外なことを言われて戸惑った。
「あの時のまきびし? ……、ああ、アダマンタイト製で風を利用できるように風車型に形成されていたヤツ、この服のポケットに入れてあ……。」
慌てて、ポケットに手を入れてまさぐった。
「な、なんか、プニっとしたのが居るぞ。おやつの滓とか入れていた気も………する。」
取り出したそれはメ〇ルスライムではなく、アダマンスライムになってました。
前世での五〇〇Gコインに似た大きさで二つ、プヨヨンと体を揺らしているそれは、まきびしのトゲを出したり引っ込めたりと、柔らかいのか堅いのか今イチ分からない感じでした。
「服従を確認したって言っていたよね。じゃあ、聞いてみるか………。『俺と一緒に行くか?』」
プルルン、ポヨヨンと震えています。
『僕、プルン、一緒行く。』『わだす、ポヨン、一緒行く。』
『従魔契約の完了を確認でする。レベルに換算して加算するでする。』
また、ファンファーレが鳴った。一一階への扉は開いたまま沈黙した。
「い、一応、確かめてみるか? すっごい不安が残るのだけれども。」
周りの人たちの無言の頷きに、「せーの、で!」
「「「「「「「「「「ステータス」」」」」」」」」
「レベルは確かに上がっているよ。……うん、魔物誑しの弟子も上がっ……てる。マジですか!」
ショックを受けた俺たちが、その扉の前でガックリと膝をついて佇んでいた。
「今日はヤケ食いだ! タコ焼き、行きまーす」
そう言いながら用意した鉄板にはポロッグの肉を使ったお好み焼きも乗っていました。
みんなして、ヤケ食いしてました。クソぅ、嬉しいんだかなんだか、わかんないよー。




