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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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ドラ湖、誕生秘話①

「あるじ様~、美味しいですぅ」

 俺がかいている胡座(あぐら)の上でホットヤーキを両手に持ってパクついているドラ吉の言葉に、野生というものを忘れてきたのではないかと、心配になってきた。

 とはいえ、俺はそのドラ吉の羽に癒やされていたりするのだが………。












 今日はパレットリア新国での「工事」の日で、「工事屋」を含めて学院からの応援があったにもかかわらず、非常に疲れました。


 それは、冒険者ギルド(パレットリア新国に新設された)において、従魔登録をしました。従魔の大きさに合わせて伸縮する魔道具の首輪を用意しておいて、それぞれの首らしいところに掛けたのはいいんですが、あまりにも珍しい種が多くて、なかなか人前には出したくなかったのですが………。


 雪狼の一群れを筆頭に、あれやこれやと誑してしまった連中の数々。


 小型化して連れ歩けば、子供たちが寄ってくるし、彼らは興味が尽きるまで離そうとはしないし、あまつさえ、まだパレットリア新国という国の知名度が低く、どこかのバザールと思っている連中も多く、気苦労が絶えない。


 そんな中、魔獣たちを連れ歩けば狙われるのは常である。

 今もまた………。


「命が惜しけりゃ、俺たちの言うことを聞きな!」

 ガラの悪い盗賊崩れがバザールと思って侵入していた。被害に遭ったのはキマイラを連れていたパトリシアとヒリュキ。まだ四歳とは言え、その胆力には俺たちの間でも定評がある彼だが、聞く耳持たない彼らに正論をぶちかましてしまった。


「あなたたちの行いは、間違っています。ここはパレットリア新国、あなたたちの来るところではありません。直ちに官憲に出頭しなさい。」


 そう言って指を突きつける彼に、彼らは嘲笑(あざわら)った。


「へ~、貴族様のお坊ちゃんは、言うことが違うねぇ。だが、俺たちが必要としているのはそこの魔獣なんでね。とっとと、寄こしな!」


 盗賊たちがそう言ってスラリと抜いた腰の剣にもヒリュキは怯まない。


「そうですか……、真ん中の方が頭目ですか……、口の中が切れていて痛いそうですが、それはこの国に売っている「ロケッタ飴」があれば簡単に治るものですね。それから左のあなた、今、剣なんて重たいものは持たない方がいいんじゃないですか? 肩が悲鳴を上げていますよ。今、剣を横に払ったら足に刺さりますから気をつけてくださいね。肩の治療薬はこの国の市場(イチバ)に売っていますよ。「スライムップ」という貼り薬ですね。」

 真実の瞳のレベルが上がっていく。


「この国には、共同浴場という旅の疲れを取る場所があります。安価で楽しめると評判ですよ。ワームコインを買わないとは入れませんが、一枚十鈴ですから、今のあなたたちの懐具合でも十分に可能ですね。……クスクス、そのまま居着く方々も多いですよ。」


 などと、盗賊たちの気になっていたものを一々指摘しては対策を言うものだから、どんどん耳を傾けだして魔獣のことなんかどうでも良くなってきていたらしい。


「お、お頭、オラ、イチ抜ける。まともな躰になってまた、イチから働きてぇ。報われねぇ時もあるかもだけど、そんなチャンスがあるなら働きてぇ。ビクビクしてんのは辛れぇから。」

 盗賊①が、本音を吐き出すと、四、五人の盗賊たちが次々と脱落していく。


「俺も、「ロケッタ飴」探してくるわ。すまんかった、貴族の坊ちゃん、アンタの言葉は染みたなぁ~。でも、今更、堅気(かたぎ)の職業に就けるとも思えないんだがな……」


「本当に働く気になったら、お世話できますよ? 我が国の城で。浴場とか、畑とかでね。」

 イイ笑顔で微笑むヒリュキに、盗賊のお頭は気付いた。

 有名な盗賊たちが、最近、無くなっていく話を情報として、受け取っていたからだ。


「ふ、やられたな。仕方ない、部下ともども頼むわ。ひとまず、飴買ってくるか……」


 「ロケッタ飴」は、ロケットハナ・ビーの蜂蜜が七割、甜菜糖からの砂糖が三割と凄く食べやすいが、じつは薬効成分があり、特に口中にキズなどがあった場合などに効果大。

 パレットリア新国にのみ設置された市場(イチバ)内でのみ入手可能。


 「スライムップ」は、スライムの成分にロケッタ飴を混ぜて布に染み込ませたもの。

  成分の元は、スクーワトルアの城を侵食していたスライムのもの。布の面積が小さいためにスライムにはならない。


 と、まあ、ヒリュキならコレで済むのだが、ルナだとか、魔王様だとかは、魔法で叩きのめしてしまうし、プの姫様方では、俺が対処するしかなくて、そのたびに転移しては収拾を着けて回っていた。


 とどめは、「アレ↑」で、いま頭上を旋回している竜種の姫様。

ギャオゥ(お前さまぁ、)ギャオォォォ(どこにいるだぁぁぁぁ)ォン』

 その鳴き声が届くと、膝の上に居たドラ吉がビクッとして、上を見上げた。

 手に持っていたはずのホットヤーキを隠そうとしている。

 どこに隠す気かな……、君たちに異次元ポケットは付いていなかったはずだが。


想転移(パシスタ)、どちらのドラゴンさんかな?』

 そう声を掛けると、膝の上のドラ吉くんは壊れかけたロボットのような動きを見せて振り向く。


『い、許嫁です、あるじ様。あの時の蜂蜜探しは、アレに対してのプ、プレゼントというヤツで。もっとも匂いを嗅いでしまったら、全部吹き飛んでしまいましたが、ハハハ……。』

 という、何ともなオチで。


『で、どうするかね、アレ↑?』

『アレがここに降りてきても混乱の元でしょうし、俺みたいなサイズにはあるじ様の力が必要ですし、このあいだ突っ込んだところでの再会をしたいかなぁと、思うのですが……』

 ドラ吉くんの意見も(もっと)もなので、ドラ吉が砂漠に突っ込んだ場所に転移することにしました。

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