61, ダンジョンで、………戦後報告⑦ 得たもの
拙い小説を読んでくださっている方々に感謝を。PVが30000を越えて、びっくりしています。
遅れてすいません。年末年始の今、最も忙しい時で、プランは後から後から湧いて出るのですが、書き上げる時間が取れなくて……、すいません。
まずは一つ。
これからも頑張ります。
「アオオオオオオオォォォォォ………ン」
夢幻狼のメリンダが一〇階のセーフティエリアから喜びの雄叫びを上げる。
いや、メリンダは雌だから雌叫び? かも知れないな。
「こんな綺麗な透き通った緑色の狼なんて初めて………」
うっとりした表情の女性魔法士に見詰められ困惑の表情が抜けないメリンダ。
自分でも信じられなかったからだ。
ヒリュキに名を贈られたメリンダにステータス上に子狼化と、それとは別に可視化と不可視化の選択ボタンが付いたこと。興味を持って鼻先でポチ!と押してみただけだった。
自分がどんな姿なのかは、いまの今まで知らなかった。
どんなきれいな水にも自分の姿は映らないからだ。
特殊な魔物図鑑でも、想像による体格の狼であることや吠え方などの情報はあるけど体型などは点線での想像図しか無かった。試しに町や村に入り込んだこともあるが、誰も気付かない、本当に別世界の生き物を自覚させた。
それが……………。
あるじとして認めた誰かから名を贈られることというのは、こんなにも自分に喜びを与えてくれるものだと初めて知った。
「本当にきれいだな……」
「俺には最初からこの姿だったぞ。前世の時の飲み物にメリンダというのがあって、きれいな透明色の緑のビンだったからな。本当に大好きだった飲み物だよ。」
なでなでゴロゴロモフモフして貰っている夢幻狼のメリンダは至福の表情だ。
そして、三匹のメリンダの子供は、それぞれパトリシアにはメリンダのような透明感の緑に黄色の流星が入った毛皮の長男の雷が、プ・リウスにメリンダのような透明感のある緑に黄色の筋が前から後ろへと何本か走っている長女の風が、プ・リメラにメリンダのような透明感の緑に白い紗が掛かっているのが次女の雪が名を贈られ主従契約を結んだ。面白いことに、名を贈られてから姿が見えるようになったのだがそれぞれのあるじのイメージ通りの色彩を纏って現れた。
「なぁ、ヒリュキ。三匹の子供はあんな色だったのか?」
ある疑問が降って湧いたので聞いてみる。彼らのステータスにある可視化はあるじのイメージが主体なのでは無いかと、思ったのだ。
「御察しの通りだな。俺には四匹とも緑の透明色に見えていたよ。」
「えっ、ええっ、どういうこと?」
俺たちの話を横で聞いていたパトリシアが疑問の声を上げる。
「つまり、彼らの可視化には俺たちのイメージが必要ってことさ。……ああ、なるほど。だから、ドラ吉の羽が変わったんだ。あれ? そうしたら、あいつデッカくなったら、どっちの羽になるんだ?」
俺も疑問に思ったことだが、まぁ、その時になったらわかるか……。
そう、その時はそう悠長に思っていました。
雄叫びを上げたのが一〇階のボスだということを忘れていました。
あの雄叫びの内容を知っていたはずなのに、悠長にセーフティエリアの中でみんなで和やかに飯を食っていました。本日の飯は焼きそば。デザートは別の鉄板を使って作ったワッホゥを用意しました。
パレットリア新国の中心部にある古城。
地球文明の俺たちよりも未来に造られたのに、何故かこの星の遺産としてのその古城のシステムの中に、鹹水の貯蔵施設が有り、麺を打ってきてありました。
野菜と肉はポロッグの在庫を使用し、麺を混ぜて、鉄板で焼きながらソースを加えるという本格派。
デザートのワッホゥは中身をカスタードとミニプリンを選べるようにし、その横にタイ焼きがお目見えしていました。
蜂のムサシ丸に話を通して女王蜂様にワッフルを進呈し、蜂蜜を掛けて食べるように指示をして、こちらにも蜂蜜を用意して貰っていたのですが………。なんとも酒樽くらいの大きさの一斗樽になみなみと。ロケットハナ・ビーの蜂蜜を樽でって市場に出したら大金貨(1000万鈴)がジャラジャラと舞うような代物です。
狼たち用には堅めのクッキィを用意。こちらはもう、骨みたいにカリッカリです。
「「「「「いただきま~す」」」」」という言葉で食事は始まったが、意外なことに狼たちに大人気だったのがタイ焼きでした。魚の形をしたものだが、この世界の魚たちは、簡単に食べられるようなヘマはしないというか、小さな生き物ではない上に、魔力を展開して打ちかかってくる厄介なものだった。
談笑しながらの食事は格別で、メリンダや子供たちにしても、こんなに穏やかな食事など有り得なかった。なぜなら、簡単に獲物にはありつけたとしても、彼らは幻影として見なされていたために食事の最中でも、血のニオイに惹かれてやってくる同族や他の魔物に当たり前に襲いかかられるのである。
それが今はない。
セーフティエリア内であっても鳥たちは普通に入ってこれる仕様だから。突かれてもいいはずなのだ。だが、あからさまに警戒して近寄ろうともしないことにメリンダは驚いていた。
夢幻狼で有りながら、得たステータスの『可視化』。
メリンダが得たのはあるじ様だけではなく、狼としての矜持(プライド)を満足させるもの。素敵な毛皮。賞賛。
それらを得た喜びが喉を震わせた。雄叫びとなって……。
そんなボスの雄叫びを聞いて、すでにセーフティエリアの前に陣取った夢幻狼たちは目の前に展開されている光景に、唖然としつつも、見入っていた。セーフティエリアの中のボスの甘えている行動にショックを受けながら、そして、空腹に耐えながら……。
俺が気付いて想転移を繋いだ時には、何故かセーフティエリアの前に巨大な水たまりが出来ていました。………南無南無。




