51, ダンジョンで、………戦後報告①
さて、何かとあった宴会の翌日、ゴーレムハウスごとダンジョンに転移した俺たちは、ダンジョンの四階へと向かう。
道中、判明したことなのだが魔物たちは従魔として契約すると、どういう訳か小型化する。というか、そういう機能が出来るのだと本人たちが不思議がっていたくらいだ。
ちなみに群れのボスが、その機能を持つと同じ群れでいる間は、何故かそうなるらしい。
「不思議だ……。持ち運びにはいいんだが、ダイマジョオウイカがそんなスルメイカの乾物クラスにまで縮まるとは……?」
どうあっても有り得ないサイズの連発に少々気疲れが、だけど、五メルからある雪狼が子犬サイズって反則だろう。しかもサイズが何段階か有るとか言われ、体重も大きさに比例するとか、さすが異世界。おっと、今はこちらが俺たちの世界だった。
「気にしてたら負けだよ、セトラ君。でも、ジョン君ってあのジョン君?」
俺たちと一緒に新入学で入ってきた連中の一人が前の世界の幼馴染みって………どうなってんだよ? やたらジョンが懐いていたから……、ステータス鑑定してみたら判明した。
マァミ・サーサ・パーラーだった。
「ああ、うちの裏にいたワンコだな。本人からの想転移で『ひさしぶりっ』とか言われた……。」
「懐かしーね。」
「まぁな…。」
だが、何でこうなった?
ひょっとして、俺の周りの連中って、関係者ばかりか?
髪の色やら、瞳の色やら違うから一見しては分からないが、何かの拍子で鑑定を掛けたり、お互いが気になっていた言葉を発した時なんかに記憶が戻る引き金を引いてしまうことがある。
で……、ええっなんでということになる訳。マァミ・サーサ・パーラーもその一人だし、ミズィホ・カナクィもそう。マァサン・ミャシィトも、そうだった。
ともかく、ダンジョンの三階でのキマイラの乱入に伴い、従魔による戦力の増強がダンジョンを踏破するための加速材となったことは確かである。
なぜなら、先代魔王が企画したダンジョンは、転生体としての自覚が無かった頃の魔王が無謀に再構築していたために、踏破する条件が上がりすぎており未熟な魔法学院の学生たちでは一階で全滅しそうなレベルになっていた。
ダンジョンに入ってきてただ出て行くだけでも魔素の吸引が起きるため、誰も入ってくれないダンジョンというのは、階層ごとの魔物にとっても死活問題。最悪、階層をぶち抜いての弱肉強食が始まってしまうところだった。
俺が従魔を最初に連れて入ったのは、カクシの森の雪狼のジョン一匹。
一階ではスライムを退治していたのだが、氷の魔法で援護してくれた。
二階ではダイマオウグソクムシを氷漬けにしていた。
まぁ、そこでダイマオウグソクムシの卵が手に入った訳だが、シャイナーは俺に卵を委託してきた。「面倒くさくて……」とお手上げ状態のシャイナーにある程度育つまで預かることにした。
共同浴場を運用しだした魔人王国では、エドッコォ領と同じく風呂の浴槽内の水質保全のために水の流れを利用した沈下水槽が設置され、その水槽はガラス張り(とはいっても耐魔法耐スキル化)されており、その中に従魔化して貸与したダイマオウグソクムシの幼生が数匹入っている。
もちろん彼らがそこに投入される際には、上部の巣穴から二本のレールによってコロコロ転がってくる。
さて、三階での攻防にノコギリソウ。ダイマジョオウイカが魔王の養い子になり、乱入してきたキマイラがルナの養い子に、パットは生まれたキマイラの児スキップの養い親に。
「ここは、毒煙だけのは……ず。ありゃ、なんだアレ?」
シャイナーが、毒煙の方向を見て、絶句していた。本来、四階に充満しているはずの毒煙が池のある場所から出てこないのである。何かが、その毒煙や毒を吸収しているものがいるらしいと、気が付いた。
そう四階では、毒煙を吐き出す毒池にポッツリとアスパラのように立つ世界樹の若芽。あまりに小さくて見つけられず、踏み抜くところだった………。
世界中の毒素を浄化し続けている世界樹でも、その毒素を取り込むのが成長の際の基準値という事で、逆にその毒の池を浄化しようとするとキレるらしい。
何というか小さい若木なのに、意外にも手強かった。だって、いきなりヤマアラシのように全身全面に葉っぱを生やしたかと思うと、手裏剣のように飛ばしてくるんだぜ?
「葉っぱ? って痛たたた。」「うわっ、何じゃこりゃあ!」「これって、伝説の葉っ〇カッター?」「ポケ〇ンかよ?」
葉っぱの嵐が過ぎた時、そこにはやせ細った若木がいました。「これが本当の若木の至りだな。」と、しょーも無いこと言うヤツもいました。
魔物ではなかったので討伐とはならなかったのだが、さすがに幹やら葉っぱやら無くなってしまったので毒の池で焼かれ出した。それを見ていたノコギリソウたちが騒ぎ出した。
同じ草木類のためか、身につまされたようだ。
『キーキー?』
『? キィキィ』
『キーキーキーキー』
『キィキィ!』
『キーキー?』
『キ、キィキィ』と、そこまで会話しているのを俺は想転移で聞いていたから、『キーキー』と必死に拝んでくるノコギリソウを見て、ほんとお前らもウチの連中に染まったなぁと。
『どこの若様か知らんが、契約するなら考えるぞ。』と、想転移すると『キギッ!』とか驚いておりました。
さんざん、ためらった後に『キィィ』だとさ。
層庫にあった石で土魔法を発動、手頃な植木鉢を作り進呈した。若木が入れるように二つ割りにして、それからくっつけた。鍵は内側に付けたから、必要なくなったら葉っぱで外せるようになっている。下には浮き袋状に空間が有って毒の池に浮いている。内側は二重にして当座の契約金として、ワームコイン二枚とフラレンチ・トゥストを二枚入れてある。対価は、世界樹の葉。内側に巻いていたものの一枚。まぁ、こんなものでしょう。




