49, ダンジョンで、………異種格闘戦? 終の七
ビジョンが浮かぶと早いのですが、時間が掛かってしまいました。10月末で20,000アクセスを越えました、本当にいつも読んでくださってありがとうございます。9月、10月のアクセスが5,500を越えてしまうなんて、書き始めた頃から考えても夢のような数字で、夢なんじゃ無いかと良く思います。これからもどうぞ、よろしくお願いします。
ダイマオウイカは、マオウイカやダイオウイカの上に位置する存在で、ただ一人君臨している。…………そう、ただ一人。
だからなのか本人?も気付いていない秘密があった。気付いた時には、既に対処のしようも無かったわけだが。
「お~のれ、ちょこまかと! 行け! ヤリイカ、コウイカ、スルメイカ、ダイオウイカ!」
そう怒鳴っているかのように闘っているみんなの耳には聞こえ始めていた。
何でもかんでも擬人化してしまうのはニッポン州人だった頃の名残か?
「!」
その獣の絶大なる一撃で目の前で障害なるものを破壊した時、彼の眼前を横切ったものがあり、ついパクッと食べてしまったそれは、濃い生命を内包していたようでその獣に多くの力をもたらした。
「あ……、食べちゃった………」
俺は、コーネツ経由の窓転移でその獣を確認しつつ扉を開く準備をしていたにもかかわらず、自らの力で切り開いてしまったその獣の、外の空間に躍り出るや否やの早業にあ然としつつもみんなの修行に丁度良い教材の登場に感謝した。
まぁ、食われてしまったモノは戻っては来ないからな………、南無南無。
「く~~~、腹減るニオイだ!」「ちょっと、寄ってく!」「へい、らっしゃい!」
「おじちゃん、補足のサイコロステーキ!」
「おじちゃんじゃねぇ!」
そんな会話の中、チョンチョンと突く感触に振り向くと、貝を複数個吸盤にくっつけた触手があり、同じモノを指(?)差していました。
「想転移、なんだ。食うのか?」
『良い匂いだ、俺の呼吸器を刺激しやがる。一個くれ』
『お前オスだったのか?』
『そうだが。そんな驚くことか? ホレ吸盤がナナメだろ』
彼の持っていた貝は真珠貝で、古来より価値のあるものつまりお金として流通していたのをどこかで知っていたようだ。だから貨幣の貨には貝が入っている。
しかし、真珠貝とは、こちらの女性の方々が鑑定して目を点にした後に、凄い勢いで迫ってくるのはご遠慮したいことでした。いつの世も、こんなモンなんですねぇ。
それほど、魔物にとって焼けた調理肉というのは衝撃だったようです。
雪狼のジョンも、勝手に待ての状態に入り、滝のように垂れる涎攻撃で俺からゲットしていきました。ノコギリソウの皆さんは言うに及ばず、ですが一定のレベルの貢献をポイント化し、それとの交換でした。
このように一方では、良い匂いのする中での攻防が続き、また新たな関係の扉が開きつつありました。
お互いに腹を空かしたものたちが来ては食べて戻るという事を繰り返しながらも終わらぬ戦い。それは初級魔法と生活魔法という縛りを条件とした戦いだったからです。
お互いに戦うモノ同士に一種の心の交流というか、過去の因縁も絡んで独特の関係を築きつつありました。
片や、
「やるわね。でかいだけのイカだと思ったのに……」
との感想を持ちながら戦い続ける。
片や、
『前の時の一件ごと、熨斗付けて返しちゃる。イカだけに………熨斗イカ、……クゥゥ』
と、ボケているのか、スベっているのか?
ダイマオウイカの居る階層は彼自身が構築したもので埋め尽くされていたため、自身の背後に関して疑問に思ったことが無かった。
ゆえに安心して前方での戦いに死力を尽くしていられた。
そこへ背後にいきなり光り輝く扉が開口し、一匹というか一頭というか翼持つ魔物で最凶最悪の存在が出現し、扉をぶち破った勢いのままにダイマオウイカの背後を三条の爪が襲ったのです。
「!……?……!!」
ダイマオウイカが気付いた時には背中の身の部分に三条の爪痕が走り、付け根ごと、生殖のための腕が飛ばされていました。前世でも使うことの出来なかったアレです。
それはそのままその獣の胃袋に納まり、「何者?」とばかりに振り向いたダイマオウイカは、そこに天敵のキマイラの姿を見てしまった。
再度振るわれる爪が迫るのも身動きすら出来ずに固まってしまったダイマオウイカは天敵の姿にどうすることも出来なかったのです。
でも、
「天敵かよ!」
キン! という音とともに魔法による盾がダイマオウイカを囲み、天敵からの襲撃を回避させたのは偶然では無いでしょう。
そして、ダイマジョオウイカを中心にして、その獣と対峙したのです。
え………………………、なんか、表示がおかしいですね?
何回も何回も、目を擦ってみたりしましたが、同じ表示でした……えーーー!
ステータス鑑定を開いてみましたが、彼のステータスに異変はありませんが、一部表示が奇妙しいようですが、一応本人にも闘う意思の有り無しを確認しなければなりませんから久々に繋いでみましょう、想転移を。
「想転移、俺たちは闘う。お前も闘う気はあるか?」
返ってきた言葉は衝撃を伴っていた。
『なによぅ、もちろんよぉ。文句あるぅ? ずぇったいにあたしを怒らせたこと、後悔させるんだから!』
すいません。すいません。なんか、ひどく後悔が………。
食っちゃったから、しょーがないよねぇとか、すいません。
盛大にさぶイボが立ちました。気付いたらナナメだったはずの吸盤がきちんと左右揃っていました。
もう一度ステータス鑑定をすると、体が一回り大きくなっていました。自然界での動物のオスメスの差異が影響を及ぼしたようです。
俺は、みんなの指揮を取りつつ闘っていたルナを呼ぶと、告げた。
「ルナ……、あいつは殺るぞ。ダイマオウイカの敵だ」
「うん、分かった。全力で生活魔法だね。…………えっ?」
俺の後ろでゆらゆら揺れているものを振り返りながら、
「ダイマオウイカの敵だ……」
俺は、静かに呟く。
弔い合戦が始まった。
工事屋の連中、同期の連中、講師ジョナン、ジョン、ノコギリソウ、そして、ダイマジョオウイカの全員でキマイラを倒す! 絶対に!
ダンジョンの次は諸国漫遊でしょうか……。




