47, ダンジョンで、………異種格闘戦? 終の五
登場人物を深く掘り下げようとして失敗しまして、ズルズルと。慣れないことはするものじゃ無いなと………、反省です。
その獣はイラついていた。たまたま通りがかった砂漠に興味を持って砂に舞い降りた瞬間、流砂に足を引き込まれたのである。
獅子の顔を持ち、ワシの翼を持ち、胴体は虎、シッポは蛇という姿をしたその獣は、わざわざ流砂に突っ込む形で地上に舞い降りたのである。地上から彼の姿は消えた。
流砂に呑まれたその獣はキマイラという種属で、大層な力を持っていると言われていた。
……流砂に突っ込むような馬鹿だが……。
魔法に耐性を持っており、中級以上のレベルの魔法士でも余程で無い限りは相手にすることが出来ない。カウンターマジックというものを放ってくるのである。
では、カウンターされても危なくない魔法なら、その獣に対処できるという事になる。
それは……。
さて、流砂に嵌まって落ちてきた馬鹿なキマイラは、妙な洞窟の中を歩いていた。端的に言えばワームの通り道に近い形状でその獣の羽を広げてもぶつからない広さと高さを持っていた。その獣は今、時折落ちている小さな円盤状の珍味に夢中になっていた。
今まで味わったことの無いものだったようで、完全にニオイ抜きが施されており、自慢の鼻でも見分けが付かないものだった。その小さな円盤状の何かの断面のようなソレは、近くに行くと淡い光を放つ何かに包まれており、暗闇でその獣の視界に入ってくる。
ソレを見つけて、シャクシャクと食べてはひとときの至福に浸るのである。
それが罠であることも知らずに………。
『コーネツめ、手強いヤツをと言ったら極めつけのヤツを引っ張ってきたか……。まぁいい、学院の中庭からこのダンジョンに入って一階層下がってから逆に上り階段だったからな。地表が近いとは思ったがこうなっていたとは……ね。』
タクラム砂漠のほぼ中心部、流砂の間欠泉のある場所。砂漠ワームさえも近づかないような難所。そこに何故キマイラが来たかは知らないが、降りた場所には生乾きのワームコインが浮いていた。
窓転移を発動してしまった……。従魔の目から見た映像が転送されてくる。意思とか気持ちとかは流れてこない便利なものだったが。しかし、繋げる時間を間違えてしまえば、いろいろと問題のありそうな転移魔法ではある。
「さて、ノコギリソウ君たちはどうする。このまま立ち去るか、契約するか? 契約する場合には戦いというモノも見せて貰うことになるけど、ね。」
そうノコギリソウの雌株たちに言って、視線を膠着状態のダイマオウイカと対峙しているみんなの方に向ける。
何を促しているのかは明白であるだろうけど、ね。
既に戦闘は再開されつつある。
あるのだが、戦闘の主旨が変わってきているようで、ルナの掛ける号令が変だ。
「いいこと、あなたたち。今はあの新しいスイーツをゲットするために全力で戦うのよ!」
「「「「「前のも欲しいぃぃぃ」」」」」
「「「「「おぉぉぉ! 食い倒れるぞぉぉ!」」」」」
………。オイ、お前らそっちだと全力出せるのか?
なんてこったい………。
それに加えて、こちらでも……。
『前のも……』という言葉がきっかけになったのでしょうか?
ノコギリソウの雌株たちにも動きがあり、何やら「飢ー危ー」と相談しています。
と、そこで何故かノコギリソウの雄株にも動きが………。自分たちが切り落としていた粉になったホットヤーキの味でも確かめたのか? こちらは「ギィギー」と話し始めました。
そんななか、ダイマオウイカは召喚を始めていた。
『我が眷属どもよ、我が呼び出しに応えよ!』
マッコウクジラに噛まれた跡であるドット柄の歯形模様がピカピカと光ることで、召喚のための魔法陣を開いていく。出てくるのはイカ系、クラゲ系が多く、スルメイカやホタルイカ、ヤリイカ、コウイカ、といろいろ出てくる。ダイマオウイカは食えそうに無いが召喚されてくる奴らなら大丈夫か?と鑑定を掛けた。
結論から言うと宴会が出来そうです。
「アクィオは風、ぬめりを取るためにアレも飛ばして。」
「ああ、アレね。オーケー、準備しておく。」
体格のいいアクィオ・マヤチグは風か?
「レイは空間の手、支えて」
「わかったわ」
「ユージュ、プ・リウス、プ・リメラは風を、ユージュは回転力上げといて。」「「「わかった」よ」」
「パトリシアとヒリュキは波動で揺らして。」「うん、わかったぁ」「了解」
「ジュウンとジョナンは水中心で、好きなの撃ってちょうだい」「はい」「了解した」
「ウェーキは好きにして、コヨミも出来るのでイイから大威力のモノを全力で、」
「はい!」「了解っす」
「シュッキンは盾をお願い、角度考えてね」「? フフ、任せておけ」
「イクヨ、風玉出せる?」「いつでも!」
風玉とは……。やるな、イクヨ。
「ツォーリゥ、ヅン、ヤースォ、カォル、カァルはそれぞれの最高の風を撃って!」
「「「「「はい!」」」」」
風の民の面々の最高の風……って、オイ!
「……ルナ、盛り上がってっとこ悪ぃけど生活魔法か初級魔法だからな「分かっているわよ! って分かっているわよね? チクチクと、ぶっ刺してやるのよ!」……わかってんなら良いけど…。」




