46, ダンジョンで、………異種格闘戦? 終の四
「ああっ、またあげてる。美味しそうに食べてる……。もうこうなったら何でもやるわ!」
周りの女子を代表したルナのなぜか力の抜けそうな発言だが、激しく同意ではある。
と、ヒリュキは思っていたようで、何かに頷きながら、ボソボソと愚痴る。
「しかし、相変わらずな………、“誑しの能力全開かよ。魔物とか普っ通ーの動植物とか関係ないんだものなぁ。やっぱりアレもあいつの力なんだよなぁ」
「本当に相変わらずな言動ですよ、先生は。何で、あんなに懐かれるんですかね? だいたい、天気のほとんどがあんな調子ですよ。雨降れーって言えば、すぐに降るし、風吹けーって言えば風もすぐに吹く。弟子としては本当に何でって言いたくもなりますよ。TVで見ていた台風情報にそっち行くな、曲がれ曲がれで曲がっていってしまうんです。本当にどうなっているんでしょうか?」
ヒリュキの隣でブチブチと小声で愚痴をこぼす弟子。
おい、聞こえているぞ、おまえら。しかも、弟子はさらにぼけぼけだ……。
それ前世での守秘義務をぶち破っていないか? だいたい、TVってこっちに無いからツッコまれたらどうするんだろうか? そう思っていた矢先、彼の現在の従姉妹プのネコ耳姫様たちにツッコまれた。
「「ユージュ、そのTVって何ですの?」」
プ・リウスとプ・リメラのウサギ耳という地獄耳を持つ人たちにそんな美味しい話題を振るなんて、
「えっ、えーと。TVというのは………。」
こちらに該当するモノが無い上にコロナ王の話では、スクーリンにしたって国家機密になっているようだし。ご愁傷様だね、ユージュ君?
さて、俺の足元でキーキー言っているのだが、少し悲しい音色のように聞こえる。
なぜならノコギリソウの雌株の葉は、キッチン・ソードになっているため切るのは良いのだが、それで食べようという時に上手く対象物に刺さらないのだ。そのためにホットヤーキは小さくなりすぎてしまう。というか、ズタズタになって形が無くなっていき粉ホットヤーキになってしまう。
……で、ショボーンとしてしまうのだ。「キ~~~」
そこで、はた、と閃いたのがフォーク。
エドッコォ領原産のブドウの木で作ったフォークをノコギリソウの雌株たちのうち一人(?)の左の葉っぱ(手?)に渡してみる。
八等分に切り分けたホットヤーキに、さく、と音がして刺さるとそのまま持ち上がったことにボー然としたようで、自分たちの持つ葉っぱと見比べていた。
「「「「キー!」」」」
しかし、キーキーとあちこちから上がるとなんだか、特撮モノの悪役が蘇ってくるのだが………。まぁ、こちらは可愛らしいから、いっか……。
だが、ひとしきり仲間内でキーキーやっていたなと思ってたら、右と左の葉っぱを振り回し始めたかと思うと、左の葉っぱに右の葉っぱをサクッと。
え……。
「?……おわっ!」
見ていたこちらの目が点に。
ノコギリソウの雌株ってなんか凄く漢らしいなと思える行動で………。
左の葉っぱがフォークになっていました。
「「「「「「嬉ー!」」」」」」
雌株は次々と左の葉っぱをフォークにし、ホットヤーキをパクつきだした。まぁ、今はあるから良いんだけどね。雄株は、なんか争っているのが馬鹿らしくなったような風情でヤサグレていました。
十数株の雌株たちに対して、与えたのは一人(?)に対して八等分が一つ当たる計算。
余りにも漢らしい行動に驚かされましたが、挨拶代わりはそこまで。
ホットヤーキをそれぞれ食べ終わっても物足りないらしく、「「「キーキー」」」と言ってくるが、無視です。
「君たち、何か勘違いしていないかい? 俺が君たちを養う理由はありません。自活するのなら人に頼らないでくださいね。なんか非難するような目を向けてきますが、気に入らないなら、その鉢脱いであっちに帰ってくださいね。ちなみにこの雪狼君たちは、俺の従魔として契約し、なおかつ自活しています。たまのおやつにしか出していないですよ。」
俺の言葉を理解したのか、ガーンという文字が背景に出るような勢いで項垂れていました。雄株の連中が盛り上がっていました。ノコギリをしゃくって。
へ~い! こっちおいでよ~とか言っているように、葉っぱ(手?)をしゃくっていました。
突如、雌株の一部がキレたように、俺の足にナイフとフォークを当てようとしたのを雪狼のジョンが大きな前足で割と優しく抑えてくれました。彼が怒ったら、君たち生きてませんよ?
「ジョン君が君たちを止めていなければ……、そして、俺に傷が付けられたら?
さぁて、なにが起きたでしょうか?
フフフ、そうですね、乾燥注意報が発令されたでしょうね。」
「「「「「「「忌~~~」」」」」」」




