44, ダンジョンで、………異種格闘戦? 終の二
出来たてホヤホヤの。さて、続きをば……。
「あがががががが」
う~む、確かにコレは痺れるし、言葉にはならないな。それに、続いて出てきた触手?に拘束されてしまっているから身動きも取れないな。
だが、喋れないだけできちんと対処の方法があれば、そう慌てるほどのものでも無い。
そう、思考だけはのんびりとしていた。思考が出来れば、良いのだから。
前世などでは、人の多い場所での極秘の天候操作が多かったということもあるけど……。
いろんな形で気象つまりは天気だけなら、動作や思考、視線、言葉でも俺の意思が伝われば魔法としては成立可能だ。前世でいろんな形での天候操作を経験しといて本当に良かったとしみじみ思ったね、このときばかりは。
『雨よ……、癒やしの雨、この辺に降れ。』
確かに『雨』は降ったが、言霊にして言うものよりかは遙かに効果は低い、ただし『麻痺』を取ることには支障が無い。
電撃による麻痺は別だ。倍加させてしまうからな。命の危険が有る時などは使うしかないが、癒やしているのか被害を受けているのかは、傍目からでは分からないだろうけど。
先程、コヨミ姉ェも使っていたが、気象魔法は空のある場所なら問題なく使える。だから、ダンジョンの中でも問題ない。某社の漫画〇ア・ギアの中でも会話されていたが、地面の上の空中は全て『空』なのだと。だいたい、洞窟の中でも風は起きる。つまりは、対流。気象の源である。
そんなことを考えていたら、ニタリと嫌な笑みを浮かべるダイマオウイカと目線がぶつかり、俺の麻痺が予想外に軽いことを見抜いたようで自前の腕と足を伸ばしてきた。
………チャーンス! 攻撃のターン、俺。
一本一本がごく普通のイカの胴体くらいの太さを持つダイマオウイカの手と足は、結局、俺まで届かなかった。途中で、俺のではない攻撃を受けたからだ。
先程成長させたのは、ノコギリソウの仲間。ただし、こちらの世界のノコギリソウという注釈が付く。地球でのノコギリソウは宿根草だったが、こちらでは種から発芽する。
雄株には大鉈形状の葉が、雌株には包丁形状の葉が付いており、採取時には見分けの付きやすい特徴を持っていた。
森の中での採取時に下手に手を出すと切りかかってくるのだ………。が、今回はダイマオウイカの方に敵意が向かったようで、ホッとした。あのノコギリソウが動かなければ、風で薄い刃を形成し、カマイタチとして放つつもりだった。
端から一口大に輪切りカットしたのは他の触手と一緒だが、風で回収して一度層庫に入れてしまえば、簡単に分別できるから問題ナッシング。
グゴォォォォォォン
最初は地響きかと思ったその音は、どうやら目の前のダイマオウイカから聞こえてくる。
呼吸器というものを震動させて音を作っているらしい。
さて、コレで『あの辺の連中』と『この辺の連中』は共に麻痺は抜けた。後は、いかにして、生活魔法でこいつをぶっ倒すかだな。
「俺を含めて各員、生活魔法での作戦を敢行する。知っているだろ? 生活魔法は全ての属性に既存している。得意の魔法特性しか使えないという事は無いことを念頭に置くように。むしろ不得意な属性を使用し続けることは魔力貯蔵量を増やす上でも必要な重大事項だよ。」
「前の時より、偉そうな発言だな?」
アクィオ・マヤチグがそう言うが、当時は君の方が凄く偉そうだったよ?
でも、やる気の元はぶら下げようかな? そう思って、拘束されたままではあるが層庫から口元に取り出したのは手のひらサイズのホットヤーキ携帯版。不自由な手でつかまえて、ぱくり。
「あむっ。んもぐっ。むぐむぐ。……、ああ美味かった、さて………ん? どした?」
『あの辺の連中』の視線が痛いです。俺、何かしたか?
「そ、それは……何?」
そう、それは何?と言われるのは実は分かっていた。
今、俺が食っていたのは、今川焼きのような土台を持ちながらホットケーキのようなフタを持ち、はみ出るくらいに間に挟んであるのは生クリームと餡子。
コレは名付けて、
「ホットヤーキ携帯版と、言いますが。 ホットケーキとどら焼きを足したものですよ。 一応、中に挟んでいるものは複数あって、それによって回復するものが違うという効能がある。まぁ、いくら食べても過剰回復はしないよ? だって、気力だったり、空腹だったり、満足度だったりするだけだからね。……食うか?」
こんなB級グルメはさすがにいらんでしょう? そう思っていたのですが、明らかに反響が違いました。
「「「「「「「「「「「食う!」」」」」」」」」」「グゥオ」
? アレ? なんか変な声が聞こえたような…………。




