33, ダンジョン掃討戦、うなれ、生活魔法! 続
昨年の9月22日に初投稿して以来、一年経過。では、どうぞ。
「風よ、唸りを上げ彼のものに鉄槌を与えん。風鎚!」
イクヨの放った風鎚が、俺が撃ち放って堅いスライムに噛みついていたままのまきびしに貫通力を与えた。
金属と金属の擦れるような音かと思いきや、ズドォーンと腹の底に響くような重低音が発生し、狭い洞窟内を衝撃波として戻ってくるのが何故か分かった。
「「風よ疾く、集いて防壁を成せ、風壁」」
風壁などと、読むのが当たり前なのだが、ソレでは今イチ、こちらが、その状態を想像しずらいから、俺はシェルターとかにして、威力の底上げをしている。
そのダンジョン最奥の大きくて堅いスライムを撃ち抜いたとき、階段が現れるものと思っていた俺は意表を突かれた。
現れたのは、セーフティ・ルーム。
ということは、小さいのだけじゃないってことか?
まだ、何か隠れていることに気が付いた俺は、それが可能なヤツに指示を出す。
「ヤースォ、風の民五人! 風の精霊に請い願え! 風の盾、前後左右と上だ! 早く!」
俺の剣幕に押されたように風の精霊に請い願う五人。
「わ、分かった…、ツォリュ、前。ヅン、後ろ。カォル、右。カァル、左。上は俺がやる。」
「「「「「風よ、我ら風の民。請い願うは、風盾」」」」」
と、同時に。
「装転移、颯転移発動!」
俺が空間魔法を発動させる。
「レイ、手を出せ!」
急ぎすぎた俺が悪かったんだろう。たぶん……。
俺が空間魔法を発動したのを見ていると考えていた訳なのだが。
「はい、セトラ君。ここからどうするの? 片手でいい?」
と、右手を出してきた。
予想だにしない行動で、俺は固まった。
「………………………………………」
地獄のような沈黙のあと、俺は再起動に成功した。
「……………、それじゃない。転移の時のあの「手」を出せ。…………はぁ、ったく。」
突き出されたレイの右手を払いのけながら、空間魔法の「第三の手」を出せと言うと、
「あっ、あ………、ああそういうことだったんだぁ。手を出せっていうから………。あ~、びっくりした。」
ビックリしたのはこっちだ、馬鹿たれ!
生活魔法によって、穿っていたのは、そのままに継続をさせたままだが、今の漫才を見てたようで、あちこちからクスクス笑いが噴出していた。
深刻になっていた俺が、馬鹿みたいに思えてきた。まぁ、戦場でもこれくらいの余裕があればいいなぁ………。最強って言われるよ、君たち。
「「空に連なる第三の手よ、発動!」」
それにしても言うか言い終わらないうちに、「ソレ」が天井から落ちてきた。
ズガラゴワラガリガリズドォーンという大音響とともに、ダンジョンの入り口を入って間もないところの天井が………、落ちてきた。だが、その天井と思しきものは微妙に揺らいでおり、一応、久し振りに意識的に使った鑑定には恐るべき情報が書いてあった。
それがコレ。
【ロックスライム】 ブロックスライムの亜種。普通のスライムが核を護るためにブロック状の殻のようなものを背負いだしたのが始まりと言われている新種。最近発見された。
熱風から身を守るために派生した種らしく、熱に強い。が、弱点は火と水の混合魔法か、水と雷の混合魔法、冷気。ロックスライムは岩のように堅いものを殻のブロックのところに持っている。非常に厄介。ピッケルなどの岩を砕くものには、弱い傾向がある。
シュッキンの結界は、魔法学院の門番のところから引き継いだらしく、元々のダンジョンの天井を護っているため、ウェーキとジョンの攻撃で露出したスライムの天井の落盤を防げなかった。ソレは、突き当たりに居たメ〇ルスライムが突っ支い棒になっていたため、膨大な経験値とともに砕けたときに連動したようだった。
だが、ここにも五年前の被害者がいた。
そして、普通のスライムよりは堅いが、その分の経験値は多い。
中級者にとっては美味しい獲物でもあった。が、ここにいるほとんどは生活魔法しか使えない組と、強力な魔法しか知らないので、閉塞されているダンジョンでは生活魔法しか使えない組しかいない。
どちらにしても、ほぼ全員が生活魔法だけでダンジョンの掃討戦に出なければならないってことくらいだな……………………、マジ、呆れたわ。
例外は俺とユージュ、コヨミの気象魔法組と、俺とシュッキン、レイの空間組と、俺とウェーキ、ジョンの特殊組くらいか。通信のプのネコ耳姫様たちと核の位置を見られるヒリュキと、暗闇の中でも対象の位置を見抜けるパトリシアが別格。
あとは、ドングリの背比べ。
「みんな無事か? 怪我とかしてねーか?」
「? 怪我、見えないわね。「光よ、あれ。ライト」」
「? スモッグ!」
暗いので、誰かがライトを使おうとしたが俺が闇魔法のスモッグを使い、風盾と装転移との境目をぼやかす。
「?なんでライトの効果を抑えるの!」
「あ、その声、ルナか? 敵のど真ん中でライトなんか使ってみろ、襲撃されるだけだぞ。」
「どこに敵がいるって言うの?」
「今、説明するから、静かにしててくんねーか? 怪我の有る無しを先に確認する。」
「わ、分かったけど………、この暗さでどうやって確認するの?」
「プのネコ耳姫様たち、悪ぃが一通り確認して教えてくれ。」
「あ、ああ成る程ね」
数瞬後、答えが返ってくる。
「「けが人、なし」」
「おお、ありがとうなぁ」
「んで、自分の生活魔法との接続切れたヤツいないか?」
ざわざわと騒ぐが、声には否定的なものは無いようだ。
「んじゃ、引き続き、魔法は継続してくれ。レイは第三の手で、核を中心の袋に入れることをやってくれ。今、周りを囲む奴らに与えてしまうと、面倒いことになるからな。あと、今は、天井にいたロックスライムという新種に周りを囲まれている状態だ。こちらは、特別班に処理して貰う。名前を呼ばれたもの俺の方に来てくれ。」
現状、生活魔法でほじるスライムの核を取る攻撃をすることでロックスライムにも地味に攻撃が当たっていることになる。
俺でも、スパルタだなぁとも思うが、このロックスライムの処理は絶対に行わないとならない。でないと、俺たちは魔法学院のダンジョン入り口から出られず、食料なども勘案してもそんなに日が持たない。挙げ句の果てに反対側まで、この人数を率いていくのはかなり重労働である、頭が…………。使いすぎると、髪が去ってしまうからな………。
「特別班を招集する。まずは俺、ユージュ、コヨミ、シュッキン、レイ、ウェーキ、ジョン、プのネコ耳姫様たち、ヒリュキと、パトリシア、以上だ。」




