239.ようこそ、ダンジョンへ
生きてます。お久です。です。
『不思議。ほたるの一族だなんて、カミングアウトするはずじゃなかったのに。それにしても、ダンジョンとか、魔王とか、どうなっているのかな?』
ボソッと、マリアが、独り言ちる。
「マリア、何か言った?」
艦橋のサポートメンバーの一人である、コズッパが聞き咎めてくる。
「べ、別に、何も言ってないわよ。」
「全艦、乗員に通達。レディアーク後部発着ハッチ、開口せよ。惑星に降下したチームリーダーからの要請により、惑星上の草原ダンジョンから帰還のための縄ばしご用意。設置、固定が完了次第、ハッチ開放を急げ。」
とは言え、マリアが不思議に想っていた事とは裏腹に、手元では素早く指示を出して行く。
『な、縄ばしご? そんなん有ったか?』
幾多の作戦を策定してメンバーを補佐してきた彼らが、そんな言葉を発するくらいには、送られてきた指示に戸惑っていた。
『だ、ダンジョン? って何? 魔王?』
艦内通信の向こう側で、目茶苦茶戸惑っている様子が窺える。
そりゃ、そうだよ。
でも、彼らが困っているのは事実なのだから。
「無駄な話は慎め。彼らが帰る場所はこの艦なのだから。そして、連れてくる人員は、多い。食事を用意しろ。でないと、自分に笑われるぞ、アーク。ほか相当数、関係者がいることが、確認されているからな。」
これでも動かない者たちは、嗤われてしまえ!
「マ、マリア、ソレって、マジ?」
アークが問い掛けてくる。
「あたしが、無駄なことすると?」
口振り冷ややかに、アークを見つめる。
「マジか〜?」
マリアの言と、アークの項垂れた様子に、彼の周りに諦め顔が増えて行く。
結局、色々と準備が有って、レディアークが先端に縄ばしご付きの後部発着タラップを出したのは、二時間は経った後。
出してしまえば、ほぼ直ぐに人影が現れた。
艦外カメラで確認していたが、縄ばしごはそれなりに長く降ろしていた筈だが、艦後部のハッチから一メートル位の所で切れていた。
「まさか…、あんな所に時空断層が…、あっ!」
手が、にょっきり生えた。
「ようやく、帰って来られたぞ!」
感慨深く佇んでいるのはリュウ。
続いて、登って来た幼い人影に驚く乗員たち。
どことなく似た少年は、
「へー、変わってないなー。」
初めて乗艦したハズの少年が、そう言うことに驚く余裕はコチラには無かった。
だって、彼ら二人の肩の上に見慣れ過ぎたモノがそれぞれに乗っていたから。
「ルゥが二羽…。」
だけじゃなかった。
チャー抱えた美少女と比べて、少々幼く見えるティアがチャーを抱えて、にこやかに上って来た。
「チャーも二羽…いる。」
唖然とした。
リュウと同じように、ルゥを抱えているのがセトラさん?
あ、また一人上がってきた。
チヅルだ。
小っちゃいフェニックを腕に抱えているんだけど、ティアもチヅルもなんかシルエットが変に感じる。それに、惑星に降下する前とは、Nスーツの仕様も変わっているみたい。
どう見ても、胸部装甲が、がががが。…増えている気がする。
風土病なの? あたしも、降りたい!
思考が反れまくったのに気付いた、チヅルから声が掛かる。
「このダンジョンが踏破されないと、自由行動は出来ないそうよ。」
な、なんですとー? ご無体なー!
チヅルに引き続き、上がってきた少女は、フェニックたちと、クリオネみたいな形状の菱形の物体の小さなナニかを連れていた。
だったらフェニックを抱えているのがコヨミさんってこと?
そして、チャァーを抱えているのがアトリさん?
次々と上がって来る見慣れたメンバーに混じって、見慣れない人たちが見慣れた従魔を連れていた。
そんな中にあって、シクロとウッディには黒いブタさんが、一匹。
「はい?」
目を疑うとは、この事。
二人の間を跳び跳ね回っているスピードが早い為に、残像になっていた。
「何で…?」
続いて、上がって来たのはワタル。
なんだけどシャンマタは一匹で、赤ん坊を大事そうに抱えていた。
続いて来るのは、その赤ん坊の父母らしい、若夫婦たち。
って、どっかで見たような…。
「ね、ねぇ、あれって。ミレィとダコタじゃない…。マジっすか?」
マリとゴルディアは、リュウたちと違って瓜二つ状態での帰艦と相成った。
ともに、苦笑い中である。
アーシィと、トリケラは少年を連れて来ていた。三匹の子犬を連れて。
「凄い施設ですねぇ。」
「本部は、もっとデケぇぞ! アーサー。」
「ここに居るのか? ホタルでマリア。」
通信機器を介して聴く声と違って、その言葉に籠もる熱量は莫大なものに感じられた。
ここは、凜として応じなければならない。
そう意識して、発した言葉だった筈なのに。
「あたしが、マリア。ほたるの一族。ようこそレディアークへ。黒真珠虫のパロア。」
見交わした瞳から、火花が散った気がした。
すいません、気長にお待ちください。




