221, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ⑩ 闘技場 ⑤
闘いの舞台では、二人のワケあり美少女たちが微笑んでいた。
ヂ、バチッ!
二人の頭上に設置してあるスクーリンには、音がした瞬間の映像をスロー再生しているのだが、そのスクーリンでもブレブレの映像でしかない。
バヂィッ!
姿は見えないが、バトルロボの弾かれる音が響く。
「ふふふ、やりますね…。さすがはゲンガー使い。追い掛けるのがやっとですよ。」
ショッツ…もといノインが不敵に微笑む。
だが、今の美少女姿でやると、あざと可愛すぎる。
スクーリンにも、時々その笑顔が映っているというのに……。
アイツどれだけの男を魅了するつもりだろうか?
「!」
『み、魅了? す、する訳無いし! な、何言ってんの、もう! なんで繋げているのさ!』
俺の心の中での感想はナゼか聞こえていたようで、ショッツが焦って飛ばしてきた想転移で弁明してくる。
『そ、そうか? …あ、繋がっていたか? わりぃ。』
「む、むぅぅ。」
「ど、どしたの?」
ショッツの焦る姿にユーコはハテナ顔だ。
「な、なんでもない…。」
口を尖らせて渋面になるショッツ。
しかし、その顔も今の姿ではごっつあんショットとしか言えないほど、可愛いのだが。
そんなやりとりの間も、「ジヂィッ」とか「ヂバッ」とかの激しい擦過音が聞こえてくる。
「とは言え、スクーリンのスローでもあのブレブレの解像度か? どんだけなんだよ…。」
そうサッツシが評する。
まぁ、そう言うのも当たり前であるのだが、なんといっても今の俺たちの一万年は過去の文明の産物で、前世の地球の技術と比較しても一万年は未来の文明の産物であるスクーリンは、光の数十倍の速度の解析力と解像度を誇る。
…ハズだったのだが……、まったく映っていないとかどんだけなんだよ……orz
「あれさぁ、今なら原因が分かっているけど。あの変な胸の病気に罹患ったとかで、ゾーディアクに戻ってからレディアークに隔離されていた時に暇を持て余したチヅルが組み立てたんだったっけ。あの娘の発想力に悪のりした誰かさんたちが協力した結果なのよね。」
そう、今のアトリ=前はティアの中のヒトであるティアは、そう嘯く。
とはいえ、当の本人であるティアもノリノリでその組み立てに参加したいたはず、それもチヅルの家に伝わる秘蔵映像の発見によってなのだが?
なんでも、チヅルの艦内工場で製産される物品のネタ帳だというのだ、そのジャパニメは。
しかも、過去に見つかったことのない第七世代のプログラムで、ネタになる秘密道具の内部構造が透視画像として各回のED曲の最後に載っているというものだった。当時、アイテムボックス開発に悩んでいたチヅルだったから、どんな小さな事でも参考にしたかったってあとで言っていたからな。
『スライもん』という、レアモンスターのスライムが超圧縮収納の立方体を転がして、出た目の収納物で何とかするとかいうものだったはず。
形といい、収納といい、チヅル的には、燃えたんだと思う。当時の技術では、『ゴーレムボックス』とかいう物体の再現率が低かったものだからな。
そのジャパニメをただ見るためだけに、造られたのがスクーリンという映像解析ツールだった。当時の最高技術を使ってまでしてのモノであり、後世にまで広く使われているほどのモノでもある。
「ああっ、ダメ…。触手が…。」
ユーコの悲痛な声で回想から解き放たれた観衆は、闘技場を見つめる。
何かが擦れる音に、何かが姿を朧気に現し始めていた。
とはいえ、触手………?
いま、全世界で、不思議な見えない敵と戦っているヒトたちへ
新型とはいえ、肺の病気。
味や匂いを感じないというのは、鼻の粘膜が関係しているのでは?
鼻の粘膜、次は気管支【喉とか】。
そして、肺。
身体の免疫が重要でしょうが、酸素吸入と同時に、蒸散する薬剤の投与も
必要かもしれません。
自分は、インフルエンザの時期には、ビターチョコを舌の奥に置いて、溶かし、鼻の下には、ヴェポを塗って過ごしています。
この大変な時期が、速やかに過ぎ去ることを願ってやみません。




