ナイトの葛藤
白ナイトのサッツシは、戦々恐々としていた。
何故なら、前世で美少女のショッツに、バトルロボの勝率でデートを迫ったことがあるからだ。
迫ったのは前世だったから、今となっては時効も時効だが、ミレリーにバレた時が怖い。
そう思っていた。
なにしろ、当の相手は観覧席に大きなお腹で鎮座しているのだから。
逃げ場が無い。
「むぅぅぅ、これは……。」
「サッツシ、やけに顔色が悪いな? なんかやらかしたのか?」
隣で観戦中のセトラの声に、ぴくっと肩が動く。
「う…、俺、あいつナンパしたことある。」
サッツシの不明瞭な言葉に隣のセトラが不審顔になる。
「はあ?」
何言ってんの、コイツって言葉がセトラの表情に出ていた。
「だって、あれがショッツなんて知らねぇし、美少女レベル高いだろうっ!」
弁明の割りには、カミングアウトの声が高すぎた。
『サッツシ、ウルサイ。…黙れ。』
闘いの舞台にいるショッツの心の声が聞こえる。
「ほほ~う、不穏な言葉がダダ漏れですね~。詳しい話が聞きたいですね~。」
サッツシの横から聞こえたのは地獄の底からの使者……、もとい、臨月のミレリー。
その表情は、ま、魔王!であった。
サッツシ、カミングアウトご愁傷様である、南無南無。
「ミ、ミレリー、前世の話だ。今の話では無いから!」
「今世でも懸想しているのでは?」
「有り得ないって! アレがアレでも元は男なんだからな!」
「そう…なの?」
「そうなんだよ! 俺はおまえが居ればいいんだからな!」
言い切って、ミレリーを抱き締めたサッツシに、とんでもない所から追い討ちが…。
「君が居ればいいって言ってたよね。今もそうなんだね?」
遥か昔に投げた特大のブーメランがサッツシに刺さった。
「うぐぅ! ショッツ!」
「この姿の時はノイン。キミとセトラだけだよ、あのときにボクの名前教えたのは。」
「サッツシ~、この浮気者!」
「ご、ごめんなさい。」




