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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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212, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ⑩ 扉の外 ④

お久しぶりです。

『………小さなパット、聞こえる? あのね……』

 コポコポっと、自身の内面から吹き上がる想い。


 ルナの放つ怒気に、パットの身が(すく)む。

 強大な嵐の予感が……。


『あ…、大っきなパット……、え…、そんなに……。』

 右手を心臓の近くに当てて、声に聞き入る。


『うん…、うん…。……うわぁ、仲好しさんだったんだね。』

 少々顔を赤らめながら、素直な感想を伝えていた。

(かあ)様は認めなかったけどね。』


 いや、認めないと思うよ……。アレだよ……、ライバルって。


『あ……はは、ハハハ…はぁ。』

 実の子供だからこそ、諦めるしかない境地になった小さなパット。

 それでも、伝えるしかないのだから、今の面倒くさい事態を何とかするためには。


『はぁ……、面倒(メンド)い…。』

 その砕けた物言いは、彼女の母とそこに集う者たちが常日頃からそんな言葉で話していることもあって、パットの身に染み込んでしまったモノだったりする。




「あ~、母様? わたしの中の大っきなパットが伝えてきてるの…。彼女の母様もエテルナだったんだって。どういう事だと思う?」

 激高するエテルナの表情に、えっという困惑の感情が走る。

 この世界に着いた時に彼女が言っていたこと、『私の妻は常にエテルナ』って言っていたはず、まさかマジで?


「やだぁ~、レシャードったら~。」

 その身をくねらせて、顔を紅くして照れているルナなど、ツチノコ並みの出現率。

 しかし、周りの者たち、特にルナの学友たちは怖気を振るっていた。

 すなわち天変地異の前触れか? と。

 ルナに対する対応の仕方が如実に表れていた。



『どの世界のわたしか、どの時間のわたしかは知らないけど、……そういうことなの?』

 ある意味、時間や空間が違っていたとしてもレシャードの妻はルナだったということに納得したのか、ルナの魔法構築力がスーッと急激に衰退していく。

 ドデカい嵐になるはずだった、発達した台風が急速に(しぼ)んでいった。


 いわゆる……気が抜けたとも言う。


 この世界での接点であるユーコ・E・イーシカは、安堵の溜め息を吐いていた。

 広域想転移(パシスタ)で、その行く末を気にしていた仲間たちも気が抜け、安堵していました。

「気が抜けたら、おなか減った~。」

「あの気当たりは凄いわ。近くに居るだけでエネルギー使うもの…。おなか、減ったね~。」

道理(どうり)で……。納得できちゃうかも~。」


「召喚したという事は、僕たちを持てなしてくれるということですよね? まだ、用意はされないんですか?」


 これだけのトラップを仕掛けていたということは、俺たちは賓客(ひんきゃく)相当のもてなしを要求することが出来る。

 (とお)一辺倒(いっぺんとう)の月並みな待遇などで我慢してやることはしないぞ、ユーコ・E・イーシカ。

 たとえ、ゴルの思い人であったとしても、手は抜かないからな!


『え?』

 ゴルの内心の声に気付いてしまった。

 あ、広域想転移(パシスタ)、繋ぎっぱなしだったことに。



 そうこうしているうちに、近付く者がありました。

 なにやら、秘めた決意が…、あるようですよ。


「ねえ、ユーコ・イーシカさんって言ったっけ?」

 レイ・コイトーと、イクヨ・クロッタ、ジュウン・コイズパルがトコトコと近寄ってきていた。相変わらずの三人(スリー)行動(マンセル)


「わたしはユーコ・イーシカではない、ユーコ・E・イーシカだ。間違えるな!」

 偉ぶる彼女にハイハイと愛想を打つ姿は、もはや熟練の域にある。

「うぬぅ!」


「召喚されたけどさ、わたし達って見ての通り、旅の途中なのよ。でね、ここ重要なんだけど、お風呂は入れる? 疲れも取りたいし、リラックスしたいじゃない?」

 女性としての最低限の要請だった。


 対するユーコ・E・イーシカには、彼女たちの悩みがどういうわけか、分かっていないようだった。不思議そうな顔を彼女たちに向けると……言った。


「風呂? なんだ、それは?」

 呆気に取られたレイ、イクヨ、ジュウンたちは口々に言葉を発した。

「え? 知らないの? マジで? えっとぉ、小さい物ならこのくらいの大きさの箱に水を湧かせたお湯を貯めて、汚れや疲れを取る物なんだけど……。」

 困惑していた。


「そんなモノは無い。第一、この地では水は命を繋ぐ大切なモノだ。そんな事に使えるほどの余裕は無い。だいたい、浄化魔法が常備された浄化槽がある。なんの問題も無いはずだ。」

 この星の構造から言っても、マントルの対流の中に沈み込んだ大陸がカタチを残していること自体が奇跡だったのだから。

 絶対に、誰かさんの意思の元に成されていることは確かではあるのだが。


 なんだよ? 溶岩の対流の中でごくごく普通に生活されていること自体が、奇跡だろうってーの!

 そうでも無いって言うのなら、ここってダンジョンの中だとでも言う気なのかよ!










『まさか、本当にココって、ダンジョン? マジで!』

 俺の思考は瞬く間に全員に伝わった。


『は?』

『へ?』

『ウソでしょお?』






『いや、考えれば考えるほどにマジで。俺たち、地球のマントルの中に存在する大陸のカケラに来ている。というか、突っ込んだよね。こんな途方も無い数の人口の国々を抱えるほどの場所で、彼らは生活できているのだから。普通に考えても、あり得ない場所でしょう。少ないとはいえ、水があり、穀物があり、動物が居て、極めつけに空気がある。』

 ここの環境をひとつずつ明らかにしていくと、ここと似た場所があることに気付いた。



『ここ、コロニー(タイプ)のダンジョンだよ。どこかに、熱変換型のシステムがあるはずだ。』

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