211, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ⑩ 扉の外 ③
お久しぶりです。
生きてます。
自分が納得できる設定の構築に時間が掛かりました。
「お、お前の父だと……。そんなバカな? わたしの血統の祖だぞ?」
「あなたの血統の祖? 祖先って事? わたしの方がお姉ちゃんだね。」
「イヤー、そんなのイヤァ!」
言葉の意味を理解したパットと、ユーコ・E・イーシカは、自身の血に流れる同じナニカに絶句した。
「そうね、パットの父親であり、わたしの夫でもあるのよ。わたしたちを召喚せし者たちよ、貴方たちには、わたしの夫の行方を明らかにする義務があります。それに、この場を結界で隔離している様だけど、こんなレベルの低い結界で私たちをどうにかしようなんて、甘すぎるわ。」
そう言い切ったルナは、魂の持つ輝きを十分すぎるほどに実感させるほどに、光学的に放ちまくっていました。
それはもう、特にガルバドスン魔法学院のルナティック・マジックを構築していた、結界挑戦部の構成員は彼女の輝きに涙し、その言葉に力強く頷いておりました。
「レ、レベルの低い……結界ですって……。この合身金剛胎蔵曼荼羅結界は、わたくしユーコ・E・イーシカの祖先がこちらに持ち込んで以降は、一度も破れたことの無いものよ。破れるものなら、破ってみるがいいわ!」
リューグの姫君が激高していた。
だが、彼女は自分自身の発言に気付いていないようだった。
その技術をこちらに持ち込んだのは誰なのかということを、知っている人物がこちらに居るということを、知らなかったようだった。
「ゴルか?」
小声で確認するも、首を横に振られた。
その意味するところは、明白だった。
結界を持ち込んだのは、ゴルではないということだった。
「俺では無い。俺の時には、もう有った。」
であるならばそれを持ち込んだのは、シャレー・ド・レシャードであるということ。
即ち、彼は、ルナと同学年の学生であり、結界挑戦部にも勿論在籍していたはずだ。
結界を破るということは、それらに精通していなければならない。
そして、強い結界を張るというその意思は彼自身の思いが紡ぐモノであるということ。
ならば、ユーコ・E・イーシカの祖先もまた、判明するというモノ。
彼の張る結界が、こちらに来て変わったのであるならば、それは彼の意思の変遷が物語るということ。今ここにある肖像画は召喚されし者の姿をとどめている。
それはいったい、私たちに何を連想させようとしているのか。
「……んんっ、アレは……?」
俺は気付いてしまった。肖像画が一定のポーズを取っている理由に。
レシャードの名に隠された言葉シャレードの意味はジェスチャー、つまりは連想するモノであり、事象や言葉。
であるならば、肖像画に隠された|それ『・・』は。
『イー、ティー、エィチ、イー、アール、エヌ、エー。……はこれ、小文字か? え…えと、…えーてる? と、エヌのエー乗? エー倍?』
エーテルは、輝くモノとか、万物の元とか、魔法の基礎という意味を持つ。
それのエヌのエー乗が何を意味するのかは分からないが、重要な言葉であるということは、何となく分かる。
エテールナa、つまりはエテルナ。
ルナに関しての言葉であるという推測が成り立つ。何を伝えているんだ……?
分からない。
俺が悩んでいる間も結界の話が続いていく。
「その結界は、わたしの知る結界に似ているが、強度が足りないようだな。術者が構築すべき骨格が抜けてしまっている。本来は、術者を核にするべきものだからだ。だからか? 雄型と雌型が補い合っている。」
シュッキン・ポゥが解説を加える。
まず、結界に関して、彼が言う事に関しては間違いが無い。
「合身する結界って、一体なにとガッシンしていたんだろうね?」
『合身』という言葉を聞いたとたんに、その言葉に意味がある気がした。
「あぁ……、そうだったのか。」
そう、言葉をこぼした俺にその部屋の視線が集中した。
疑問符だらけの部屋で、ただひとりだけ納得してしまった。
「え……、セトラ、何かに気付いたって言うの?」
「「「え、マジ?」」」
「あー……、まぁね?」
「何で、そこで疑問符なんだよ。」
ヒリュキのツッコミ。
「いや、だとしたら……さ。吹き荒れそうなんだもんな、嵐が。」
「嵐って、なに言っているのさ。」
「だってさ~。嵐って、怖いよぉ……。」
『私の妻は常にエテルナ』だったからだ。それこそが答え。
合身と言えば聞こえはいいものの、雄型と雌型がくっついていると言うことは…………。
それ、すなわち、ガッシンというよりは、ガッタ………イ。
「うおぬぉれ! レシャード………………………………、許すまじ。」
顔を真っ赤にしたルナの独り言に、周囲のヒト族が震え上がったのは、言うまでも有りません。
嵐、急速に発達中です。




