206, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ⑦ 扉の中
「いらっしゃいませ~。」
そんな脳天気な言葉を掛けてきたのは女性だった、………見かけは。
ミスリルのような魔力を感じる銀の髪、深い藍色の瞳はかつての地球の空を思わせる。
それでも、中性的で整った顔かたちは特に性別が曖昧で、それ故の言葉でもあった。胸部装甲はささやかであるために、そこでの判別不能だと思われる。
ただ……、おでこに数字の8か、無限大を意味していると思われる造形を縦にした形の額飾りにして装備していた。
背中には何らかの形の羽があると思う。
……だって、宙にプカプカ浮いているんだよね。
「女性です。間違いなく女性ですから!」
俺の心の声に反応するとはね、ただ者ではないことを証明するためか?
その彼女の反応の仕方に何となく共感するものが有ったのか、レイがその女性に声を掛ける。
「この人はおちょくるのが趣味ですから、あなたもその辺にしておいたらどうですか?」
俺の性癖を暴露してくれなくていいよ、レイ。
レイの後ろで嫁たちも頷いている。
……泣くぞ?
「ん、ん、コホン。改めまして、異界の門の番人をこのたび拝命しております、わたくしは女神のアーカイブと申します。このたびの異界間召喚に当たりまして、創造神様よりあなた方に対して説明責任が生じました。」
別に改まって聞かなければいけないという話でもないような……、帰ってきたゴルディアがいるのだし……。
とか、そこまで考えた時に、俺はアーカイブの涙目に気付いた。
「ど、どうした?」
俺が驚いて彼女に聞くと。
「ぜつめ゛いさせでくだざ~い。わたしぃ~の初めてのお仕事なんですぅ~。」
美人の涙目攻撃はこう……精神的に来るものが有ったのだが。言葉が崩れているぞ?
それよりも何よりも、四方から来る軽蔑の視線がきつくて心が痛いな。
……何で、みんなこんなにもレスポンスがいいんだ?
「セトラ、ここの空間だと、みんなに筒抜けだよ。まるでキミの得意な想転移を使っている時みたいな感じだ。」
ヒリュキの言葉にハッとしました。
ここで漸く俺も、ここは仮にも神の居る空間ということなのだと実感しました。
「すいませんでした。それじゃ説明をお願いします。……え、と…あれ? …初めての仕事? 仕様でも変わったの?」
ということは前回、異世界に行ってきたことのあるゴルディアとも、この女神は初対面ということになる。
「初めてですぅ~。前任の方は昇格されたんですぅ~。わたしぃ~扉の前の世界で、一万年以上の時間を経て、付喪神からやっと昇格できたんですぅ~。それも、ついこのあいだなんですぅ~。わたしぃ~、元々は宇宙を渡る船だったんですぅ~。」
この発言で、コヨミの中のヒトが反応した。
『この人……が、女神? 名前をアーカイブって言ったわよね、アーク・ア・イブが誤変換されたものかも……。』
こんな総想転移っている状態で、そんなことを呟かれると、危険です。
たとえ、中のヒトといえど意識的な立場では顕在化しているような訳ですから。
「うん、……あれぇ、貴女なんで……、わたしの真名を知っているんですかぁ? 」
「『うぁぁ、マジなのぉ?』」
コヨミの中のヒトが表層意識に顕在化して来ていて、二人同時に頭を抱えていました。
その狼狽え方に得心がいったのか、アトリの中のティアが顕在化する。
『チヅルの狼狽えようから考えると、私たちとの関係の深いモノという事よね。道理で、いきなり担当が変わったハズだわ。』
『ティアも気付いたみたいね。そうね、あの頃からの知り合いかな?』
その思考もまた、この空間では顕在化するようで、女神がハッとした顔をする。
「ま、まさか……。そ、その名前って……。」
気付いたようです。ええ、本当に……。
だって、彼女たちは本当に長い付き合いでしたから。
「グランマ!」
女神たるアーカイブが叫んだその言葉に、俺たちは唖然としておりました。
たった一人を除いて……。
「グランマって誰? ってか、それ以前に勇気あるお言葉ですなぁ…。」
俺は感心していたよ、勇者って本当に存在るモンなんだって。
しかし、それを聞いたご本人の顔はエラいことになっておりました。
青筋は浮き出ているわ、顔は般若だわ、今にも爆発しそうなくらいに真っ赤っかでした。
「グランマ! あの頃ののように私を呼んで! グランドータって!」
グランドータ?
ここまでの会話で、まともに話が出来ていたのはエレメンタルズの面々。前世地球の人々は話しについて行けずに、まったりと過ごしていた。
「「「「「「………はい?」」」」」」
「だ、誰がそんなこと言ったって言うんだい? ゴー・ラン・ドータって言っていたんだよ!」
「やった! やっぱり、グランマだ! わたし、ドータ!」
その全員が、ずっコケた。
こいつ、ほんとに女神か? と。
遅くなりました。新元号発表のテレビ見てました。




