203, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ⑤
『勇者っ、召喚っ!』
「「「「「……え?」」」」うそぉ」
「勇者召喚」という声が聞こえてきて、先に歩いて行っているクラスメイトたちは目に見えて狼狽え始める。
「「セトラ様」」「セトラ君」「あ~セトラ、これって……。」「ばぶぅ?」「ム、ここは? 執務室の扉を開けたはず……? アレみんな、なぜここに?」
アトリとシクロの声に続き、コヨミ、アーサ、背中にシャンマタ乗せたワタル、ゴルディアの頭の上で擬態しているマリ。
「ああ、やっぱり……。みんな召喚されたみたいだね。ということは始源のクリスタルが残っていたのかな? ……って、赤ちゃん? ワタルかぁ?」
そう、呟くと周りが驚きに呻いていた。
「あぁ! 本当だ、赤ちゃん? って、ワタル? マジ?」
「『ばぁぶぅ!』」
久しぶりに想転移発動です。
とはいえ、一人でというかシャンマタ背負っているけど。
これサッツシとミレリーは……もしかして、気付いてなかったのか?
「お、おぅ、久しぶり……ワタルで良いんだよな? サッツシとミレリーには何か言ってきたのか…」
そう言いかけた瞬間、ポケットから“テク○ク○ヤコン”と。ヤな予感が……する。
『『セトラーっ、ワタルが、ワタルがぁー…』』
向こうの焦りが見えるような感じの緊急連絡でした。
「お、落ち着け…『ばぶぅ? ぶばぶばぁ~う…ぅきゃあ!』…おう、お聞きの通りだ。こっちに来てる。シャンマタも一緒だし、なんだったら、おまえらも来るか?」
『シャンマタの仕業か?』
『ミ、ミャアァァァァ!』
サッツシのドスの効いた声に、即座に反応するシャンマタ。
『落ち着けよ。シャンマタも被害者だ。今、俺たちはアトルとランティスの島の最初の七人として勇者召喚されている途中だ。来るなら今のうちだぞ? パスが繋がっているからな。』
『パス?』
不思議そうな声音。
『渡してあるだろう? 障壁の腕輪、おまえたちの魔力を通せば、いい目印になるからな。』
通信機の向こう側で何かドタバタした後に、サッツシからの連絡が来た。
『俺とミレリー、二人ともそっち行くわ。小っちゃい頃のワタルを見逃すとか有り得ないからな。』
途中で、人員が増えるアクシデントはありましたが、そんなもん些少(わずかな)の出来事です。
「……セトラ、さっき、始源のクリスタルって言ったかな?」
「言ったけど?」
「言ったけど? …じゃないでしょう! それって今、呼ばれている世界って地球ってことでしょう。」
アトリが気付いたようだ。
「ああ、そうみたいだね。アトルとランティスの島は大きかったから、力の暴走が引き起こしたあの時に粉々に砕けた訳じゃなかったってことだね。たぶん、質量が大き過ぎて惑星の中にというか、マグマの下に嵌まりこんだってことなんだと思うよ。星の中心って一番重たい物質が集まる場所だからね。」
エムル、エティル、エムルーチェ達から入手した最新の宇宙惑星科学の新説をぶちあげる。シュガーたちのコロニーからとれたデータを活用してのものだった。
惑星内部の構造に対してのもので、今の大きくなったシュガーたちの宇宙科学の中でも斬新と言われていた。
「「「「アトルとランティスの島?」」」」
ところが、その言葉に首を傾げる人は多く居りました。
「アトルとランティスの島って、何?」
「太古の地球上に存在していた幻の大陸って言われていたアトランティスのことなんだけど。」
「幻じゃなかったの?」
「まぁ……、俺たち七人は当時の関係者だけど。この中の人たちって本当に付き合いがいいのか、その当時でも近しい関係の人たちが居るんだよね。誰とは言わないけど……。」
俺の言葉にアトリたちは静かに頷いている。
「そうだよねぇ、言えないよねぇ。そんなに期待に満ちた顔しててもさ、……無理。」
誰なんて言えないよ。全員、関係者だもの。
だから、前世が地球人なんだし……みんな。
それを覚えていようと、たとえ全然覚えていなくても、ね。
ただ、思い出す機会はこれから訪れるかも……。
この「勇者召喚」によって。
だって、どちらも、俺たちの関係者なんだからな。
みんな、そう……だったんですかね?




