200, ダンジョンで、……攻略は、二十八階へ ①
遅くなりました。
天の社に設置されているゴーレムボックスの横には、看板が立てられ物々交換のお知らせがあった。
異世界化した地球にいるチヅルとの交渉で決められたのは、転送される向こうの服の対価を得るためのゴーレムボックスの設置で、様々な農作物や畜産物の収集に一役買っていた。俺たちの知識が無くても地付きの人たちには、すぐに理解できるものも多かった。
なぜなら、そんなに裕福でない者たちも等しく、あの風邪を引いたからである。基本的に、風邪は空気感染や接触感染で移るものなので……、忘れてました…orz。
なので周り中に感染者が溢れていれば、その周りに居る関係者に爆発的に患者が増えるのは、必然と言えることだったのです。
親は子供に、子供は仲良しの子供に、その子供は親や周りにと、被害が増えていった。
大胸筋肥大インフルエンザはショッツの例を見るまでも無く、ヒト族の雌雄に限らず発症したのである。
とある家族では、妻よりも旦那が大きく、お母さんよりも息子の方が大きいという悲哀もあった。妻の嫉妬を受けた旦那も居たようではある。
悲喜こもごもとは言うものの、一度目を体験していた者たちにとっては既に手慣れたものと化していた。体積を増やす方は今回初めて判明したが、減らすか無くすか、元に戻す方法は実は確立済みであった。
風邪薬の処方。
その中にある解熱剤がどうゆう訳か、素晴らしく良く効いた。
前世では医者であったレイの処方した解熱剤は、前世の知識を織り込み、しかもその当時によく効いた成分を抽出して錠剤にしていたもの。粉薬もあった。
そのためか、自分よりも発達してしまった旦那の就寝中に、ひそかに飲ませた者も多かったようである。
「あれ、確か胸がデカくなっていたはずが……。」
「何言ってんだい? 調子のいい夢でも見ていたんじゃないのかい?」
「そう言うおめぇは、服がビチビチだぞ……。急に太ったか?」
「どこ見て言っているんだい?」
などと、風邪は根源のショッツが岩戸に閉じこもったために、感染者が減っていく一方であったのだが、このように一方で新たな問題を抱えた家族も続出した。
ただ、地球にいるチヅルたちや、その恩恵を受けた魔騎士族の市場は凄く活気を取り戻したのである。それが拡大するにつれ、今まで細々とした行商人クラスの多国間貿易が急速にその門戸を広げてしまった。
いわゆる貿易格差の発生であった。
その格差の是正のために、ある特別な技術を掘り起こしたのである。
現在の地球には、かつて滅びる前の各大陸がそれぞれに隆盛を極めていた。
文明レベルは高いとは言えず、その地方での興隆を模索していた。
そこに降って湧いた出来事。
それに集ることは、必然の理であった。
前近代的か、中性的な文明レベルの中、利益を求め始めた最初の一歩。
ただし、交通手段だけは、魔騎士の際の技術が残っており、許可を得た者だけが使用できる通行門が残っていた。
この通行門は、許可無き者を通さないばかりか過去には、捕獲するための機能が残っていた物もあった。今では、その機能は完全に潰されて修理する術も無いが、その当時は何人ものヒト族が犠牲になっていた。
その悲しい出来事に引き寄せられた一人の老人が、その機能を潰したという伝記が残っていた。伝説になるほどに歴史が、それほど古くない星だからだ。
『こちらから、行くですモーンでする!』
マショウ・ジカイが開いた門はまさに紙とガラスの障子。その構造の簡潔さにこの門を通っていいのか、悩んでしまう俺たち。
「これ、どこに付くんだろうかね。」
そう考えた者たちは悪くは無いと思う。門は開いたもののその先端は細い一筋の線になっていたからである。
壁と柱の間と言っても良いくらい。




