波及効果?
たぶん、続きます。
ショッツの『地平線女神の希望』が、イイ仕事をしたのは俺の嫁たちの姿を見るだけで理解できたのだが。
とんでもない問題もあちこちで発生していた。
服も下着も需要に追いつかないのだ。元々、自分たちの体なんて急激に変化することは無い。人化などのスキルによって変化する者たちは、その変化の中に条件として最初から組み込んでいた。
だが、ヒト族には、そんな便利なスキルなどは無い。況してや、今回みたいな一つの国のヒト族全てがサイズアップするなど、経験したことは無いからな。
それに、風邪というモノは流行するものだから余計に厄介なのだ。
「はぁぁぁぁぁ、もう糸が出ないよぉ……。」
そう言って、一人また一人とアラクネ部隊が休養状態に入っていく。限界まで頑張ってくれたのだ。あとで彼女たちの要望には応えないとならないな……。
いまだに手作りで服を作り、着回している現在において、決め手となる打開策はいまだに無い。竜宮の島では、着物と呼ばれる衣装を取り入れているため余程の爆乳でない限りは合わせを調整するだけで対応できたのだが。
今回、一番に育ったのは天姫だった。それこそ、例えは悪いとは思うが地平線どころではない超絶壁がオリンポス級になった。実に六カップという快挙を成し遂げた。
「お、重っ……」
最初の一言はソレ。そりゃ、一本でも十分に育つという甘酒を大量に飲めば、こうなるというイイ見本になったことだけは確かなところである。
天姫の今までの衣装は、お下がりに直行し、彼女の新しい衣装は発注済みではあるが今のところ染色に入ったところで仕立てがいつになるかは分からない状態である。
下着だけは、上下一枚ずつではあるが支給されている。
そんな修羅場の中、娘たちのコロニーから緊急連絡が腕輪に入った。
一つの魔石が彼女たちのコロニーの機材と同期しているからだ。
「とうさまぁ!」
その内容を聞いて、俺は絶句した。
それが判明したのは船外活動しようとしたときだったという。
彼ら、彼女らの宇宙服は一品もの。逸品でありながら一品もので成人してからのサイズの調整はないために常にそのサイズに成形されてくるのである。
「は、入らない……。」
「ソルト、ハーヴとミントにも伝えて欲しい話があるんだけど……。」
「どうしたのシュガー………、あるぇ?」
シュガーの物言いに?マークを浮かべ掛けたソルトだったのだが、そこで違和感に気付いた。見慣れたはずの愛しい妻の立ち姿だったはずなんだが……何だか、ボリューミーになっていた。
「ジェル姉ェもキィ坊もなんだけど、しばらく船外活動は出来そうにないからソルトたちにお願いしたいんだ。」
顔を赤らめて、ボソボソと話すその姿に珍しいものを見たソルトは、その言葉の内容に固まった。
「はぁ? 何でまた……。いいけどさ、理由くらいは教えてくれるんだよね。」
ソルトが了承しながらも説明を求める。それは当然のこと、コロニー管理の戦力ダウンを意味するからだ。
「う、うん、あの…ね? 簡易宇宙服のサイズ調整システムにエラーが出たの。急激な変化に対応しきれなかったみたいで、弾けちゃった……エヘッ!」
舌をペロッと出して話すその姿は、心臓を撃ち抜かれそうなほどにソルトに衝撃を与えた。
「う…(うわっ、か、可愛い生き物がいる……。お持ち帰りしたい……。)、え……弾けちゃったって、急激な変化?」
普段では、なかなか見ることの出来ない可愛いシュガーの表情や態度に思考があさってに飛びそうになっていたソルトは、その会話の中の過激さに絶句した。
「そうなの……。ジェル姉ェもキー坊もわたしもなんだけど、二カップ大きくなっちゃって、合うサイズが無いのよ。というか、サイズ調整が利かなくなるなんて思っていなかったから……。どぉしよ……。」
「このコロニーの生産能力は落ちたままだし、かといって、ヘタに要請なんか本部に出したものなら、何がやってくるかは分からないものな……。」
ソルトも意味を察して頷く。
総帥や会長のところに、衣服の供給要請をだせば何かが起きたことを知らせるようなものだし、衣服共々厄介事が束になってくることは予想できた。
「緊急時だし、下に連絡取ってみるしか無いんじゃないか?」
そうソルトが言うと、シュガーの顔が途端に明るくなる。
「やった! ウン、連絡取ってみる!」
その言葉に頷きながら、ソルトはシュガーの手を取る。指は絡めているから、いわゆる恋人つなぎ。その感触にシュガーが戸惑う。
「……? ソルト、どうしたの?」
不思議そうにシュガーが問う。
「可愛い奥さんに原因を調査させて欲しくてね、……連絡は後でも良いだろう?」
「え……、ウン……。」
ソルトの言葉に、顔を赤くしたシュガーが、仕方なさそうに頷いた。
そのままソルトとシュガーの新居に歩いて行った。
隣を歩いていても、恐る恐る歩いているシュガーに何かが掻き立てられてしまう。
その様子に、ソルトの理性は限界を迎えていた。
(アイツら、居なかったのはそういうことだったのか!)
そう心で愚痴るソルトでした。




