198, ダンジョンで、……攻略は、二十七階へ ⑪ アノ日
遅くなりました。
タカタカと打ち込んでいくと、とんでもないことに。
次は、アノ日?
「知らない天井だ……。」
ボケてみる。
「「「「「「ぷっ!」」」」」」
それにしても、甘酒の匂いにやられるとは……不覚…orz
見回してみると、ここはどうやらゴーレムハウスの中の一室。
窓にはブラインドが下がり、外の光景を締めだしていた。
そして、嫁たちはその中の一室に揃っていました。
もちろん寝室で、それぞれが寝ころがっています。いままで、抱き枕の取り合いをしていたようですが……。
いま現在の俺は、コヨミに抱きつかれております。
リアル抱き枕です。
嫁確定の間柄とはいえ、リアルに抱きつかれるという行動には、現在戸惑いと色々な問題が大発生しております。
なぜ、敬語か?
賢者にならなくてはならない事情をお察しください。
ただでさえ、六人の嫁に囲まれていると馥郁とした香りが………。
それにそのうちの一人とは密着状態………orz
なんともこう、居たたまれないくらいに堪らんとです。
そして、抱きついている本人は起きた俺を確認すると、
「ふふふっ、セトラ君の弱点発見だよーっ。」ですと。
コヨミのにやけた笑いに、ちょっと引きました。
「ン?」
なんか違和感が…。コヨミの笑みに何かを感じた俺は気になって聞いてみる。
「コヨミ、何か変わりましたか。妙に嬉しそうな顔をしていますよ。」
そうなのだ、嬉しそうなのだ。それは俺の弱点発見などという浅いものでは無かった。
「あはは、やっぱり分かるのかな。でも嬉しいな。それだけわたしのこと気にしてくれているって事だもの。………わたし、昨日で一〇歳になったの。もう結婚できるの。」
もうその言葉は本人は相当に嬉しかったのでしょうが、俺にとっては困惑をもたらすものでしか無かった。
「え…、コヨミの誕生日って俺と一緒の日だから、半年は向こうだったはずでしょう?」
とんでも発言に、鑑定の窓を立ち上げました。
日付を確認して硬直したのです。
「…………昨日、誕生日だ…orz なぜだ?」
「セトラ君、わたしたちって一昨日までどこに居たかしら? って、チヅルさんが言っているよ。」
コヨミが中のヒトの言葉を伝えて来る。
しばし沈思黙考した俺は納得するしかなかった。
「ああ…、そういうことですか。約束の日という事になるんだね、コヨミ。」
中のヒトの娘たちとその旦那との新居にお邪魔していたのである。
そう言えばあそこって、このステアとその衛星である月との近的引力交接点に存在していた。
この星ステアとの時差が存在したということ。星自体が地球のほぼ三倍の表面積、なのに一日二四時間、一年が十二ヶ月、三六五日で公転していること自体が不思議なのだが。
その不思議を起こすパワーが魔法の存在なのかもしれないが。
しかし、近的引力交接点は、衛星軌道上では無かったという事になる。
そんな近傍にあったらこの星ステアの起こす重力波によって、コロニーの安定は乱されることになるハズ。
かつて、設置した中のヒトたちの記憶によっても、見かけ上地球と同じ大きさになる位置に設定していた。ま、そのことがあの時の作戦では誤算だったということなのだけど、ね。
コロニーに居た一日は、ステアの時間で一ヶ月。俺たちは一週間近く居たからな。
半年過ぎてる計算だ。
「それに、ね。昨日、アトリさんにお赤飯を炊いて貰ったの。」
というコヨミの衝撃発言。
「は……、お赤飯? ………………あっ! そ、それはおめでとうございます。」
そう言うしかないだろ。あっちは、すでに大人の階段を上り始めたんだからよ。
いくら、魔法の有る世界だからといって、そう言う風習は根強く残ったりする。
それに、パロアを含めて、他の五人はすでに「女の子の日」は始まっている。
シクロがそれを経験したときの本人の戸惑いは相当なものだったようだが。
変に前の記憶に引き摺られないようにしないと、な。
「だから、ね……。その……。」
コヨミの顔が赤くなっていく。
むぅ、その先は言わせない!
「ああ、分かっている。コヨミ、結婚しよう。みんなも、聞いているんだろう。アトリ、結婚しよう。プ・リウス、結婚しよう。プ・リメラ、結婚しよう。パロア、結婚しよう。シクロ、結婚しよう。俺はお前たちと一緒に居たい。いつまでも変わらない俺たちで居たい。いまここで約束しよう。一緒に居てくれ。」
俺の唐突な言葉に、そこに居た全員が息を呑む。
「「「「「「よろしくお願いします、セトラ。」」」」」」
くんとか、様とかの敬称のない返事に、俺は心から安らいだ。
そこから、始めよう。
ここは竜宮の島、お社には宮司が居る。神前ならぬ竜神前にて式を挙げよう。
今で此処なら、神竜が居るし、天姫も居る。
祝福をもたらす島で、俺たちの門出を始めよう。




