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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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194, ダンジョンで、……攻略は、二十七階へ ⑦ 南風の社 続

「ボクと同じ顔? 仲間? 仲間だね!」

「仲間? あなたは?」

「ボクはパロア! あるじ様のお嫁さん。」

 ユーイという座敷童に、詰め寄っていくのはパロア。

 どちらも、黒目黒髪のおかっぱ。どちらも一五〇セチくらい。着物っぽい服を着ている。色は紺色(ディープ・ブルー)。足元は、白足袋に赤い鼻緒の可愛い草履(ぞうり)

「お嫁さん?」

「うん!」

 近寄ったパロアとユーイ。すでにどっちがどっちだか、判別が困難だ。

 それほどに似ていた。


「ユーイ? こちらの方々は?」

 戸惑った声で誰何(すいか)してきたのは、どうやらこの社の宮司(ぐうじ)のようだった。その声にユーイとパロアを含めた皆が振り返る。


「あ…、父さまぁ!」

「誰?」

「誰って、父さまだよ!」

「ふぅん…、似てるね。」

「え…、そ、そうかな…。えへへ。」

 似てるといわれたユーイが照れ笑いになっていた。

 その会話を見ていた人物がどうやら宮司らしい。


「ユーイが二人? 他に姉妹は居なかったはずだが……。それに猫娘(ねこむすめ)のレリュードとレセアによく似た二人もおるようじゃし、面妖(めんよう)な……。」

 そのひとり言を聞いて、ビックリしたのはプ・リウスとリメラの姉妹。

 

「レリ姉さま、レセ姉さまが? 姉さま方がおられるところなのですか、ここは?」

「む…、知り合いか…。今、巫女の修行でこちらの宮に来ておる。一刻ほどでこちらに来るはずじゃ。仔細(しさい)は、それからで良かろう?」

 宮司の言葉に、二人は目を輝かせる。


「「はい、それで結構です! 年に何回も会えない方達ですもの。十分ですわ。」」

 はしゃぐプ・リウスとリメラの姉妹。気持ちは分かるがここは……。


「そうはしゃぐでない。今は、我らとて儀式を執り行う手はずを整えておったのだ。雨の宮と、風の宮、そしてここの稲妻の宮は、この国の雨乞いの儀式を執り行っておる。わたしはそこに居るユーイの父であり、この宮を預かる宮司でもあるケイチ・イナ・モーリと申す者。お見知りおきを………、ところで先ほどから、気になっておったのじゃが、そこな御仁(ごじん)は男性のように見えるのだが、相違ないだろうか?」

 そう言ってケイチが向けた視線に釣られて、みんなが視線を向けた先に居たのはショッツ。

「お、俺…?」

「ええ、ショッツは、ことし十四になった成人男性である事は間違いないですね。」

 戸惑うショッツに代わって正確なデータを語るのはレイ。


「そ、そうか……。」

 何やら考え込んでしまった。それも深刻な顔つきである事から余程の大事と見える。


「何か、気になることでも?」

 ホシィクが問い掛ける。声を掛けられて、ハッとしたようで、ホシィクに向き直り話し出そうとしていきなり顔を背けた。顔が赤いことから、ホシィクのボンキュッボンを目の当たりにしたようである。


「うん…、ウン…。リンビョウトウジャカイジンレツザイゼン。」

 宮司のケイチが、何やら妙な言葉を唱えていた。

 それを呆れた目で見るユーイ。

「……父さま…。」


「それで?どういう事なんです…?」

 ホシィクではビジュアル的に過激なため、代わりにレイが話を進める。

 レイが、貧弱という訳ではない…、決して!

 ホシィクが問題なのであって……だな。

 そう言い訳を思考するショッツもまた男の子ではある。


「……済まない。さて、先ほどの件であるが、この稲妻の宮は南風(はえ)の宮とも呼ばれておる。だが、この宮は宮司が(しゅ)なのではなく、巫女が(しゅ)なのだ。」

 真剣に語る宮司。


「え……。ということは……。」

 ショッツの表情が凍った。

 まさかマサカまさかマサカまさか。


「この宮の注連縄(しめなわ)の中に入れるのは、女性のみだということなのだよ。君たちはその注連縄の奥から出て来た。なぜ、成人した男性の君が弾かれないのか。不思議でならない。」

 ケイチの言葉に凍りつくショッツは、「このみやのほんどうにはいれるのは、じょせいのみ。」とだけ、繰り返していた。


 宮司のケイチの言葉を信じるのなら、というかケイチは注連縄より奥には入れないで居る。それが雄弁に語ること。彼の言葉は真実なのだ。


 事情を知るのはショッツの他には、ただ一人。かつての彼を診察した者だけ。

 今世では無いところで。














「あなた……、あの病気持ったままなの?」

 レイが呆然と、つぶやく。








 その当時、彼が悩んでいなかったとは言わないし、言えない。


 だが、ショッツは不思議な貧血持ちだった。体中を検査してもどこにも異状の無い貧血があった。貧血がある時点で異状なのだが。

 大学(ユニバス)時代は、混声合唱部に所属していたのだが、()()()だった。それも高い方の音域もカバーしていた。

 カラオケ大会で、歌わされていたショッツに勧誘の魔の手が伸びるのも時間の問題ではあった。


「セトラに、何回も相談しに言ったよ。俺はどうしたらいいのかって。あいつも、悩んでいたから。よく、話していた…。」




「あの病気が流行るまでは、それでも普通に笑っていたんだよ。俺も…。」

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