189, ダンジョンで、……攻略は、二十七階へ ② 大地
目の前に集う人たちの熱い視線を浴びながら、独り言ちていた。
「なんでこうなった………orz」
ドア・モーンの出口に出た俺は、脱力していました。
【アマガミ】という社の前に出てしまっていたのです。
出たヒト族は少なく、俺とコヨミ、アトリ、ルウとチャァー、フェニックたち、ゲンブとギン、ドラ吉、ドラ子、ウェーキと、イクヨだけだった。
同行していた従魔共々、それぞれの属性で違う社に引っ張られていきましたよ。
ドナドナ~と。
どうして、こんな事態になったのかというならば……俺があのパスワードを使ったせいであった訳で。
ある意味で言えば、つまるところ自業自得…な訳で……orz
ドアモーンとくっついた階段は、現在鋭意修理中のアフロディテとアタランタにも特異点を設置し、次の階へとその手を伸ばしていた。
何故、そんな事が可能になったのかだが、エムルーチェが関係していた。
本来の彼女は、二艦の統合機体の管理AIとして眠りについていた。
だが、製造されて二艦が稼働してからもずっと、ついぞその機会は訪れなく今に至っていた。
それがエネルギー切れを起こした最大の要因。
エムルーチェには、忸怩たる思いが残っていたようである。
『この階段は、………わたしなの。あの時、近くに来ていた魔王様にお願いしたの。みんなとわたしを繋ぐものが欲しいって。だから、ここでみんなを繋ぐの。』
ということらしい。
『……そうか、魔王が……。って、やっぱり、お前のせいかよ? 魔王!』
「わたしの自意識の無かった頃の行為については、補償しかねる。」
また、政治家みたいな反論をしやがってって、前世共々政治家だったけか、コイツ……。
「シャイナーはやっぱりシャイナーだよな。」
ヒリュキ、お前もそろそろ王子としての帝王学などもカリキュラムに入ってくるぞ。
「え、俺はセトラの家臣だから、そんな事はしないよ。」
「それで済むと思っているのか? コロナ王からの定期便には、パレットリア新国と隣り合っている領地をパレットリアの属国扱いを念頭にして、都市整備を始めているって来ているぞ。それに、そこの「床暖房」整備工事の依頼が来てた。」
「え~、マジでか?」
「うむっ。」
マジです、とばかりに頷いておく。
「それに後々のことを考えて、ほかに同程度の領地の開墾を三ヶ所しているってさ。」
「何でそんなに多いの?」
「ここに該当者がほかに三人居るからだろう?」
「あ~、居たな。ユージュにリメラとリウスか。」
「その三人宛にも『帝王学のすすめ』とかって指示書を貰っているぞ。」
「「「ぎゃー、勉強嫌い!」」」
砂漠を潤していく俺の国に、わざわざ近い場所を選んで不毛の土地を開墾するのは経済を上手く回すためのこつでもある。火モグラたちと砂漠ワームたちが手伝っているからこそ、何とかなっているのだけど。
いまや、その傾向はほかの国々にも波及し始めていた。
タクラム・チュー皇国も、ガルバドスン学院都市も、アレディア帝国やレディアン皇国でも、砂漠を挟んで土地を広げていた。
そして、今度は宇宙でも、属国扱いの領地が増えていた。
「「「とうさま……行ってらっしゃい、かあさまも。」」」
とうさま呼びになってしまった………orz
「ちゃんと、修行しておきなさいね。」
アトリが釘を刺す。
「「「父さんも母さんも息災で。ま…《バシバシバシィ!》がっ……」」」
ひとときの別れの挨拶の途中、ソルトたちはしばかれていました。
「わたしのことは、シクロと呼んで。」
シクロがハリセン(?)持って、三人を圧倒していました。
「わたしは、コヨミよ。」
こちらは、父さま母さま呼びを頑として受け付けていない。
そんな殺伐とした別れの挨拶を横目で見ていた仲間たちは、ドア・モーンが開いた扉の向こうを確認して、扉からの階段を見た仲間たちが、「おい……、これを昇るのかよ?」と愕然とした表情でそこには居りました。
さて、二十六階を出発した俺たちは覚悟を決めてドア・モーンの扉をくぐり、延々と続く出口の見えない階段を上り始めた。
見渡す限りの階段、それを歩いて昇るのだ。
ざっと数えてみたが千段近くがあった。
手すりも何もなくて、星空が近くに感じられるくらいに透き通った雰囲気の階段でした。
しかも、それを昇った先にちょっとした通路があるようで、奥の方にズレてまた同じだけの階段があった。
いくら、ハネを持つ者が多いとはいってもこのダンジョンの通路は浮かぶことすら出来ない。宇宙空間の法則が働いているためだ。つまり、この階段はコロニーを突き抜けて宇宙空間の一点に向かって虚空にその階を延ばしているのである。
それを信じないで、試しに浮かんでみた俺は、そのまま宇宙空間に飛び出してしまった。
秒速四〇〇メル以上の速さで吹き飛ばされましたよ。
『うぉぉぉぉぉぉ……』
そのまま、流れ星になるかも……と本当に思っちゃいました。
「て……。」
本当に、宇宙空間って声が聞こえないんですねぇ~。
まぁ、無詠唱の転移で、何とかなりましたけど。
そして、一段目の階段を上りきった俺たちの居る所、つまりは踊り場みたいなところに着いてホッとしていた。
別に油断していた訳じゃない。そういう仕様だったと言うことだ。
永遠に続くかと思った階段が、目の前からいきなり消失した。
ん~消失という訳ではなく、俺たちがその踊り場からしたに落下したに過ぎない。
いきなりだったから焦ったけど、この鬼畜仕様はドア・モーンの設定かもしれない。
「マ、マスタァ?」
とか、焦った誰か(たぶんエムルーチェだろう)の声が聞こえていたから、な。
ただ、その後に聞こえたのも……。
『該当のお社に遷移します。』
その声は、確かにエムルーチェの声ではあったのだが。
そして、暗転。
ふと、気が付いて、目の前にあった門を開けてみたら、熱烈な視線の渦の中だったという訳。




