竜宮という島
非常に短いです。つなぎということ?
「なぁ、お社にお供えした物も随分溜まってきたよな、倉庫を建てて保管し始めているし、竜の神様は今度いつ来るのかな?」
「そうだな、飛竜どんも海竜どんもしばらく来ていないものなぁ」
話をしていた者たちは、竜が来るというそんな不思議に慣れていたのか?
なんとも不思議な会話である。
が、この国の成り立ちを考えれば、それは不思議なことではなかった。
この国の最初のヒト族は、ドラゴンに捧げられた娘だったからだ。
そして、この島はそのドラゴンの棲む島だった。
ドラゴンに連れ帰られた娘が、後々に来るモノたちの受け皿を作ったのである。
ドラゴンに捧げられた供物は一部(ドラゴンが食した物)を除いて、そのまま残されていたからである。ドラゴンが降り立つことで、竜の宮と呼ばれたその島は漁師たちの間で数世代もの間、伝説として残っていった。
その島に最初にドラゴンに連れられてきた娘は、竜の宮の姫と呼ばれた。
代々供物にされた娘たちが島に降り立ち、その呼称を名乗り、やがて竜宮という島が国として立った。
何年かに一度は竜が飛来し、娘とともにたくさんの品を置いていくという出来事は、ある日を境に無くなった。ただ、竜を祀る神宮では、これは変化の兆しと受け取り長期の巣ごもりではないかと受け止めていた。
竜、つまりはドラゴンが来なくなってしばらくした後に一大珍事が起きたのである。
「た、大変だぁぁぁぁ、お社に、お社にぃぃぃ!」
その魂消るような声に人々が、何事かと意識を向けた瞬間を狙って、ドッズゥ~ンという重量物が落下する地響きと、重たい扉が開くようなゴゴゴゴゴゥ~ンという重低音が響き渡った。
代々のお宮、その数三〇にも及ぶかというような竜の宮の本堂に『それ』は出現した。




