188, ダンジョンで、……攻略は、二十七階へ ① 取引
「イ・ヌ・ミ・ミ、ぴょこぴょこ~♪」
「ネ・コ・ミ・ミ、ぴょこぴょこ~♪」
手に入れたカチューシャでご機嫌さんなのは、イヌのシュガーとネコのクッキィ。
ジェリィはどちらにしようかと戸惑っている。
こんなところで元・ムスメたちの生態を確認することになろうとは……。
元・ムスメとは言っても疚しいことは一切なくて、俺たちの時間で一万年は昔の関係。彼女彼らにとってみれば、逆ウラシマ効果で、一〇年くらい前の関係らしい。
「とうさま……、ジェリィ、クマさんがいい……。」
「とうさま呼びはヤメ………ろって言ったのに……。……うっ、わ、分かった……貸してみろ。ホショホショ……。ほれ、念じてみろ。」
ジェリィの上目遣いの涙目に俺は轟沈した。
なんて、破壊力だ……。
「セトラ様? ジェリィだけのスペシャルは暴動を起こしますよ?」
嫁の一人で彼女たちの元・母親だったアトリがジト目で見てくる。
「だ、大丈夫だ……。今までのカチューシャにも連絡は行ったよ、だって前にも言っただろう? 魔物誑しの弟子程度の実力がないと使えないって。」
俺はアトリにカチューシャの内部構造について、説明することにした。
「そう言えば確かに…? ……ま、まさか!」
何かに気が付いたアトリは、絶句した。
「ご明察。アレには、ちょっとした障壁と魔物が使われている。そして、その魔物たちの報酬は使用者の魔力と分泌物、汗であったり、皮膚のアブラ分だったりだな。単純に、魔力だけで賄っているヤツも居るけど。」
魔物で、不定形で、そういうのが好きそうな奴らって……アレしか居ないよ。
「スライムが入っている。カチューシャの内部は俺の一歳当時の層庫並みの容量を持っているんだ。そこに魔石からの魔力駆動により、障壁を維持して確保している訳だね。だから、たまに不具合が生じて、点検に持ってきたりした物は彼らが成長した証さ。彼ら自身が適量まで分裂して内部に残り、ほかの部分も適量分裂してそれぞれの新しいカチューシャになっていくんだよ。」
「イ・ヌ・ミ・ミ、ぴょこぴょこ~♪」
「ネ・コ・ミ・ミ、ぴょこぴょこ~♪」
「ク・マ・ミ・ミ、ぴょこぴょこ~♪」
ご機嫌さんな三人娘が、発生した。
と、ここに不機嫌なクマさん……、ではないドア・モーンが出現した。
『セトラさまぁ………、なんでオニ・ガーラに大役を申しつけたのです?』
『お前の仕事だったというのか?』
『その門に適性のあるモーンを選ぶのがわたしのモーンとしての使命ですぅ。』
『確かに今までならばそうだったかもしれない。だが、お前はわたしの領域に踏み込んできた。だとするならば、わたしの領域の中で得たお前の領域の詳細を把握するのは容易なこととなった、……ということだ。オニ・ガーラには、あの特徴的な風貌がある。そして、このコロニーには多くの出入り口があったはずだ。その全てに対応させるためには、彼と彼の一族が適性だったのだよ。ちなみに彼の一族は一人も余さずに警護の任に付いている。ドア・モーンは、ここに居る階段との契約を希望していたと思うのだが?』
オニ・ガーラの一族は、一〇〇〇を越える。
突如として特定のパスワードで出入りするゲートが鬼・瓦に変化したとしたら、潜入調査をしようとしていた者たちの驚きはいかほどのものか。
想像するだに楽しい。
事実、その場に張り付かせていた黒電々虫からの映像では、驚きに手を放してしまい次々に虚空へと弾き出されてしまっていた。彼の一族に、ガリントを一年分出すことにしていた。
『さて、ドア・モーンよ。新たな階段と、共に新たな世界に繋がる道を我に示せ!』
『我が新しい本土となる大地の階段が融合する時、叡知は紡がれる。』
階段は、接続点をアタランタとアフロディテに残し、ドア・モーンと合体した。
ここに二十七階への新しき扉が開いた。
開いたところから見た階段はなぜか上方へと繋がっていた。
一瞬固まった後に、
「ここよりも上に行くって、どこ行くんだよ?」
などと嘆いてしまったのは、その階段の行き先が見えなかったことに起因します。




