187, ダンジョンで、……攻略は、二十六階へ ⑰ 取引
「そ、そんな…。」
「そして、エムル、エティル、エムルーチェよ、製造者としてコード∞《むげん》を発令する。今は、パロアの好意を受け取っておくのだな。」
彼らの船を管理するAIに静養を一方的に告げる。
今後に対応していくためにも必要な措置だからだ。
だが、一方的に告げたそれは彼らにとって寝耳に水でしかなかった。
「な、何を命令しているのですか!」
ソルトたちが声を荒げる。
「そ、そんな……。父さま、母さま。どうして……。」
ジェリィが思わずといった風情で問い掛け、そして絶句する。
「あぁ…、君たちは、ここを修行の場とするが良い。今の君たちは、あまりに短絡的で、幼い。本当に問題解決をしてきた者たちなのか? どんなに腕利きであったとしても、その情報収集の技術も利用の仕方も甘い。ましてや自分たちの乗る、命を預けているはずの船を整備し尽くすのは当然の責務だよ。それが可能性があるだけとは言え、空中分解寸前とか、もっての外。コヨミとコヨミの従魔たちによる音響検査は、推進ガス噴出ノズルの作動不良と不完全燃焼を見つけている。この際、ゆっくりと分解掃除するべきだな。」
「………それにこの星に降りるにしても、降りた場所によってはわたしたちでも何重もの安全策が必要になるわよ。今のあなたたちが降りれば、その命なんて、あっという間に消失するくらいの出来事が起きてしまうの。だからこそ、拒絶されているの。まずは、このコロニーの管理者としての仕事に専念することが重要なことでしょう?」
「君たちは、墓前で報告して結婚したのだろう? まずは、じっくりとその生活が始める。安定した生活の中で足りないもの……生鮮食料品や必需品、友達などもか? それには、必要があれば、交易を始めるのもいい選択だ。……もし、そうなれば、いずれは……降りる必要が生じるね。」
とは言え、今のままでは果てしないことになるけどね。
非難囂々の中、俺の言葉の中にある許し。
それに気付いたのか、六人の反論は止んだ。
「それに、このコロニーを維持すると言うことの意味をもう一度、よく考えなければならない。君たちだから、コロニーの障壁は開いた。…ということの意味を。」
あの会長や総帥が【その星の出身者】と言うだけで、コロニーの管理者にするなどということはしないと断言できる。
なればこそ、彼らに安住の地を作り出すということは即ち、彼らにとって利用価値があるからだ。
コヨミから、早速報告が上がる。フェニックたちからの報告だった。
「既に外壁に取り付いているようですね。さすがにあのパスワードはそう簡単には分からないでしょう。」
『マスター、同意します。入力レベルが高すぎます。』
すでに入力を試したのか、AIのエムルが報告に加わった。
「まぁね。ジュゲームの三連続入力って俺でも無理だな。息を切らしてぶっ倒れるよ、ハハハハ…。」
「「「「「「鬼だ……。鬼がおる……。」」」」」」
ソルトたち、シュガーたちはドン引きしていました。
「それにしても行動が早っ……、狙われているってマジだったのか……。そんなにここの情報って重要なのか?」
「知らぬは本人ばかりといったところか。もう相当の情報は握られていると思って間違いはないよ。では、先に接触した者として、取引を君たちに持ちかけようか?」
「取引……? 僕らに出せるものなんて無いですよ?」
ソルトたちが戸惑っているが、俺たちには宝の山なんだぞ、ここ。
「俺たちが出せる物は、各国の食糧や技術供与がある。特殊技術については、要相談というところかな。」
そう言いながら、技術供与では障壁の腕輪を腕を翳して見せ、そして、特殊技術についてはアトリが型を流れるように演技してみせた。
「確かにこれは……。一考の余地がある。」
そう言いながらも、視線は俺たちの頭の上に固定されていた。
「いいだろう。この「イヌミミは≠ネコミミ?カチューシャ」も、技術供与の一つに加えるとしようか。」
「「「「「「やった! 交易をお願いします!」」」」」」
ドア・モーン一族から、強面のオニ・ガーラが選ばれて障壁の守りの要となった。
彼らの頭にはイヌミミとネコミミの選択が可能なバージョンⅡが納まっていた。




