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気象魔法士、ただいま参上 !  作者: 十二支背虎
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184, ダンジョンで、……攻略は、二十六階へ ⑯ 驚愕 ④

ワォン(見つけたのだ)! ワウワウ(我らのあるじを)ワォン(ついに)!』

 歓喜の雄叫びを上げるのは、トリケラ。

ワンワンワン(従魔としての)ワォワォン(我らの力は)ワンワンワォアォ(あるじとの魔力経路の)オンオンワン(太さによって変化)ワンワンワォン(するようでな)ワンワンワウワウ(今までのスキルは)ワオワオワゥン(これから取り戻す)アゥン(のみよ)!』

 興奮したまま続けたが、さすがに想転移(パシスタ)を併用した。

 彼としてはあるじを得たことを二組の三つ子に伝えたかったようなのだが、興奮しすぎだよ。三つの頭がそれぞれワンワン、って………orz


「オレは、アーサ・リドロ・ヴォーという名だ。古くから続く家でな。かつて名乗っていた由緒ある一族の名はロヴォア。ここまで言えばご先祖様は誰かは君たちのほうが知っているのではないか? だからこそ、トリケラに懐かれたのかもな。」

 ジェリィは、声も無い。懐かしそうに呟いた。

「アーシィおじ(・・)ちゃん……。」

 がたーん。

 その言葉を聞いたアーサは物の見事にコケた。

 と、同時にキレた。


オレ(・・)は、おじ(・・)ちゃんじゃねえ! ……あ。」

「きゃあ、ごめんなさいアーシィ(・・・・)さん! ……え? ええー、本当に?」

 怒鳴られて、すぐに謝ったものの、なんか妙なことに気付いたジェリィ。

 アーサは頭抱えて蹲っていた。

「ああ…、自分から暴露(カミングアウト)しちまった………orz」


「ええっと、アーサさんがアーシィおじちゃん……「あぁ?」、アーシィさんという事は……、ごくっ。まだ居るってこと……。」

 ジェリィが振り向こうとした瞬間、ガシッと肩を掴まれた。

 掴んだ人間は彼女の後ろに居る訳で、怖気(おぞけ)を振るうほどの圧力を持っていた。ジェリィの使い魔の(オウル)のボゥルが、その場の圧力に耐えきれずボトッと落ちたまま動かない。死んだ振りをしていた。


「ジェ…リィィ、気持ちは分からなくもないが、その前にオレの話を聞いていけや。ちょっと言ってやりたいことが山積みだぜぇ…。」

「アイアイサー! アーシィ調停者(バランサー)、よろしくお願いします。」

 直立不動で最敬礼をするジェリィに、アーサ(アーシィ)が鷹揚に頷く。


 アーシィと、ジェリィが繰り広げたおちゃらけた雰囲気は霧散し、その後の圧力の凄さといったらとんでもないものだった。

 何かを懇々とジェリィに説いていた。おそらくは、作戦立案と、実行の手順、後詰めの対症療法的な作戦などであろう。



 管理官として赴任してきた残りのメンバーにもジェリィの叫びはもちろん聞こえた。

 パットたちの存在もある。

 期待感は高まるだけ高まっていたのだが、それは、ソルトたちに逆にもの凄い緊張をもたらした。

 目の前の相手は一体誰なんだ?

 ……とは思ったものの口には出せないでいた。


 オレも黙ったまま、ソルトを見つめていた。

 先陣をアーサがスッパリ切ったけど、誰も彼もが言いたいことが満載であったからだ。






「崩れているよ。」

 それだけをシュガーに伝えたアトリは、静かに髪を()きあげていた。


「あなたは何を言っているの…。」

 疑わしげなシュガー。


「あなたは、動作の一つ一つに意味があるのだという事をもう一度(・・・・)良く考えなければ。」

 アトリの顔に朱が走る。

 しまったという想いが顔に出ていた。


「動作の意味をもう一度……か。」

 シュガーは、周りに注意しながらもかつて教えられた、モンライ流の型を数種類決めてみたりしていた。

 その型の流れが【(スォード)】、【(シルディア)】、【(スフィア)】の三種である。

 繋ぎを工夫することで、その型の演武は舞いを踊っているように見えることから、舞闘術モンライ流と称されるのである。

 その演武をシュガーが始めると、周りのヒト族からは、「きれい」「不思議な舞いだね」という感嘆の声が聞こえる。


 そんななか、アトリとオレは想転移(パシスタ)で採点していたのである。

 だって俺たちにとっては、珍しくも何ともなく当たり前のことだったのだから。


『体幹が崩れているな。型を重視しすぎだ。』

『そうね、他の武術と違って三派だけだもの。でもわたしはオリジナルの【(スォード)】のみ、あなたはオリジナルの【(シルディア)】、【(スフィア)】だったでしょう? 三派全部を修めること自体が希有なことだったんだもの。でもあの子にとっては最初から三派あったのだし、ある意味で必死だったのでしょうね。』

 

『まぁな。恐るべき才能だよな。【(スォード)】が【(スフィア)】の影響を受けて、【(タチ)】に近付いている。』

 

 そんな俺たちを確認していたのか、シュガーがそのうちに不思議そうな顔で振り返った。


「ねぇ、アトリさんとセトラさん。わたし、忘れちゃってるみたいなの。知っているんだったら、教えてくれませんか?」

 シュガーが何かに納得したかのように教えを請う。


「何故、わたしたちが教えなければならないの?」

「それは、今わたしが行っていた拳法の型としての動作は、わたしを含めて両手に満たないほどしか知りません。それに、周りの方たちを見回しても、驚いていないのはあなたと、セトラさん、ルゥさんとチャァーさんだけ。この事実は、いまさら覆せませんよ?」

 シュガーのことだから実力行使してくるものだとばかり考えていた。

 裏を掻かれるとは……。


 俺と目が合ったアトリは苦笑していた。

 仕方ないね。そういう言葉が聞こえたような気がした。


「チャァー、従魔モード。」

「ルゥ、従魔モード。」

 それぞれの従魔に、本来の姿を取り戻させるように、声を掛けた。

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