170, ダンジョンで、……攻略は、二十六階へ ② 不問
お久し振りです。ようやく、頭の中の層庫から引き出してきました。
「ご希望のシャベッタ……だ。 …ほれ。」
ドラゴンフルーツの赤富士に粉雪のシャベッタをまぶしたものを提供する。
シャベッタという菓子の語源はシャーベット。
シャベッタは、もちろん氷菓子……では無い。
大きな氷を削ってもシャベッタには、ならない。
シャベッタは、静かな世界に降り積もる細かな雪の結晶のひとひら。
雪の結晶が花びらのようにふわりと舞い落ち、降り積もったもの。
それは、粉雪と呼ばれる。
空中の水滴が見事な六角形を成立させている。
シャベッタは、粉雪型の雪菓子である。
「「「「「「「「ジー……。」」」」」」」」
集中してきた期待の眼に、抗えませんでした………orz
「リクエストす「ハイ」「ハイ」「ハイ」「ハイ」……ドウゾ。」
ゴーレムボックスに囲まれて、リクエストに応えるのは大変でした。
予定外のおやつ騒動が勃発しました………orz
「クゥウ~ン《アーサ様》、クゥオウ《わたしの力を》オゥオオウ《捧げましょう》。」
いつの間にか、トリケラが三つ頭のワンコに変化していた。
アーサがトリケラの放つ甘えたような声に感動していた。
「トリケラの声が……言葉が分かる……。これが繋がりというものなのか…」
魔物誑しの力のもたらす能力としては最低限のものではあるが、今までその能力の開花の無かった人間にとってその感動は果てしない。
「あ、忘れていた。カモン、ドア・モーン!」
鎮座していたドア・モーンに対して、「ちょっと、こっち来いや」とチョイチョイと指招きジェスチャーをする。
やっぱり、クギを刺しておかないと、駄目だろうからだ。
『あるじ様っ、何のご用でござる?』
こちらの気持ちを察してかどうかは知らないが、想転移モードで言葉を送ってくる。
『今回は、客人が到着する寸前なのもあるから、お前の行動に対しての疑議は不問にした。が、本来従魔の行動はあるじ主体のものだ。……場を繋ぐことが出来るといって、それを驕ることのないようにな。』
ドアをすべて支配しようという『すべての道がローマに続くように、すべてのドアは我ら一族に繋がるでする!』というその言葉は、不遜でしかない。
『繋ぐことが出来るのはドア・モーンの一族だけでするっ! どうして、そういうことを言うのでするっ?』
ドア・モーンが激昂する……、もう…、それは激しく扉をバタンバタンさせている。
だが、言わなければならない。彼らは、自分たちの存在が岐路に立っていることに気付くべきなのだ。
これからは一芸だけでは生きてはいけないのだという事に。
だって……。
『俺も出来るからな……。それこそ、ドア・モーンには悪いがな。』
…だからだ。それにレイがもうすぐ送転移を完全にモノにする。
ならば、ドア・レイになる日も近い(笑)。
『え…………まじ……』
扉をパカーっと開けたまま、固まっていた。
その気持ちは分からないでもないのだが。
そんなこんなで時間を潰していたら、コロニーに微妙な回転モーメントが加わった。
どうやら、新たな階へのドアが届いたようだ。
「セトラ君、鉱山エリアの方に着いたみたい。トリケラが頷いているよ。」
コヨミが彼女の内側の声を伝えてくる。
「いよいよ、ご対面か? あ……、トリケラっ、どこ行くんだ?」
アーシィの口調が混じったアーサの言葉に早くも駆けだしたものが居た。
トリケラである。
ワンコ形態に戻った彼を止めることは出来そうに無いものの、このままだとマズくね?
「アーサ、止めろよ。」
「アイサツに行くんだろ、アイツらに…。って、あ? マズい!トリケラ、ハウス!」
アーサはともかく、アーシィは気付いた。
気付いたけど、ちょっと遅かったみたい。
鉱山エリアからの直行エレベータからの扉が開いてしまったからだ。
「わふっわふっ!」
エレベータから一番に降りてきた紅い髪でウルフカットの少女に飛びついていた。
「わわっ、何々? って………、トリケラ? 本当にトリケラ?」
三つの頭にペロペロと、舐められまくりながらも適当にあしらっているのは、あの頃と一緒だった。
「え? トリケラって、あるじが居ないからって、獅子舞状態だったんじゃないの?」
続いて、降りてきた少女たちがトリケラにモフモフしていた。
「シュガーもジェリィもキィ坊ぅ、ぐはっ!」
「なんだい、またカカト落としかい。懲りないねぇ、うちのリーダーは。」
「踏むのが好きなんだよ。地雷ってヤツ?」
三人の青年が同じ扉から出て来たけど、漫才トリオ?
あっけにとられてしまった。何じゃ、コイツらは?
「やあ、キミ達はここで何やってんのかな?」
マズい、先手を取られてしまった。




