166, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ⑫
短くてすいません。
「われの望みは、……お前たちだ。」
「俺たちだと……。」
交渉は決裂したか……。
そう思った俺たちの顔色が変わったのは、その時だった。
苛烈な戦いも覚悟しなければならないかと、思ったのだ。
俺たちの顔色を見て慌てたのは、トリケラだった。
「む…。言い方がマズかったようだ。われはお前たちの力を欲している。われの持つこのコロニーを管理するための権限の中には、お前たちの住む世界に有る古城からの情報の集約もあるのだが、その中に気になるものがあった。ちょうど今から七年前にこの世界での魔法的な揺らぎを検出していたのだ。何か……こう、われに関係してくるようなそんな不安をも含めた不思議な関係性があるように感じたものだ。お前たちはその時に何か感じたか?」
「俺はセトラ。確かに七年前に生まれているが、不思議を感じている余裕はなかったな。」
「俺もだ。二歳でセトラと関わったくらいか…な。」
俺とヒリュキは即座に否定する。
「その頃からセトラ様関連のドタバタは始まったわね。特にお部屋から逃げ出す時のルートに使ったアレは、まだ許していませんからね。」
「「アレ? アレとは何なんです?」」
「うわぁっ、ちょっと待って!」
その一方でアトリの苦労話が炸裂した。少々耳が痛い。
「ウェーキも同じくヤンチャで……。」
「ちょっ、コヨミ姉? あ、アレはその…親愛の…「そのイタズラはわたしも見てましたよ、ウェーキ?」……すみませんでした!」
コヨミにイタズラしていたウェーキも居心地が悪そうだ。
『それがしがあるじ様に出会ったのも、その年でござった。』
火モグラのコーネツの想転移が入る。
「乾燥しすぎたエドッコォ領の領地の気候が変わったわ。余分な水の無い大地に雨が降ったわ……。その奇跡の前にセトラ様に、ほ乳瓶のミルクを逆噴射されたの………orz」
アトリが言ったその言葉は、俺に注目をもたらすのには十分すぎるほどの衝撃を周囲の者たちに与えた。
「ミルクを吹き出すとか、どんだけ濃かったんだよ……」
などという周囲の声に、追い詰められましたよ。
「……す、すみませんでした……orz」
謝っておくのが一番です。
『そうか……。やはり、中心に居るのはセトラ……おぬしか? 以前の魔法攻撃の選択や指揮も見事だった。われの望みを叶えてほしい、おぬしで無ければならんのだ。』
トリケラが詰め寄ってくる。正直言っておっかない。
「……分かった。トリケラだっけ、お前の望みを俺が叶えられた時には対価は、きちんと貰うよ?」
何が出来るのかは分からない。
ただ、トリケラの望みが今ここに居る者たちのためでは無いと言うことだけが、確実に分かっていることだったからだ。
広範囲の想転移を張っては居たけど、ここに居る者たちの誰にもトリケラの心が寄せられていなかったのだから。
ということはつまり、今ここに近づいてきている者たちに対して、トリケラの心が寄せられているという事になるからだった。
つまりは彼らの問題。そういうことさ……。
「われの望みは、このコロニーに雨を降らせてほしいだけだ。」
「……………は?」
惑星の静止衛星軌道上にあるコロニーに『雨を降らせる』だってぇ……。
何という無茶を言っているのか自覚しているのかい?
ただでさえ、コロニーというのは閉鎖性の環境の中でその生態系を維持するだけのものはあるはずなのだ。
「かつてのあるじ様たちの忘れ形見が、ここで生活を始めるに当たって、われは惑星へと移動する。だが、その前にしなければならないことがある。生活するに足る環境の保持が必要となったからだ。故にわれは求める。」




