165, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ⑪
「ようやく、来たか……。待ちかねたぞ、わたしの名はトリケラ。ここを守護する魔物だ。ここか、ここはおぬしたちにも分かるように話すならば、神の墓所と言うところか。」
ダテに人型ではないようで、流暢にヒトの世界の言葉を話していることに驚きを隠せない俺たちが居ました。この三つ頭の意鑑獅子に似た何かであるモノは、このコロニーごと惑星の支配下にあると仮定してよかった。
なぜなら、俺の鑑定が自動的に働いたからだ。
『トリケラ……、御鑑獅子。七匹の神獣の内の一匹? トーリ、リルケ、ケーラの三頭に分れる。』と、出た。
一匹で三頭とか……、そういう表現ってアリ? アリなの?
「ようやくって、あのとんでもない出会いからは、まだ一日しか経っていないだろう? それに…、ここが神の墓所? ……神というのはアレディア教の神のことを指すのでいいのか?」
俺は、分からない振りをして聞いてみた。俺の中ではオレが緊張し始めていた。
ってなんで?
「おぬしたちにとっては一日だったようだが……、待っていたわたしにとっては千年もの長さに感じられたのだがな。しかし、…む? ……むう…何かが、……いや何かを感じているわたしが居る。だが、その問いに答える必要がありそうだな。基本的には、数千年もの間、アレディア教の神として祀られている者たちのことで間違いはない。わたしにとっては、それらの意味も変わるのだがな。」
「ふむ。……とすると、リュウジュ神、ティアラ神、チヅル神、ワタル神、ウッディ神、ゴルディア神、アーシィ神で良いのだな?」
アレディア教の聖典にある名前を、暗唱するかのように俺が言葉にすると、リュウが頭を抱えている様子が脳裏に浮かんだ、と同時に『ハズい~』と、聞こえてバタバタと激しく悶えのたうち回っていた。
精神体であるはずの彼としては、結構な精神?的ダメージを負ったようである。おかげで俺にも結構なフィードバックがあった。
リュウよ、落ち着け……。
「そう……だな。彼らで間違いはない。しかし、懐かしい名前だ……。彼の神たちには、かつてそれぞれに守護獣たちが居た。いや……、今となっては惑星に還ったと言うべきだろうか……。既に永い時の向こうで別れ、この惑星のモノとなっているだろう。わたしに託されたのは、このコロニーの管理。そして、墓所の管理だ。」
そう感慨深げに語る彼。
だが、俺の背中にルゥが、コヨミの背中にフェニックたちが、アトリの背中にはチャァーが、アガサの背中にライトンが、気忙しげに出番を待っていた。
さらには、ミレリーが抱いている三毛猫はアクビをした後に丸くなって寝た……振りをしている。耳がピクピクと辺りの音というか、ミレリーからの音を拾っているようだった。
ミレリーの行動に常に付き添っていることから推測すると、どうやらご懐妊の様子……。
………。
………って、か、懐妊!? マジか? しかも、この懐きようから考えると……的中ですか?
「サッツシ……、この忙しい時に……。」
俺がミレリーとサッツシを見て脱力していましたら、女性陣に気付かれました。
「「「「「「「良かったね! ユキィク、おめでただね!」」」」」」」
「えへへへへへ、みんなありがとう!」
「うぁぁぁぁぁ…………、セトラぁ!」
ミレリーさんの溢れんばかりの笑顔と、サッツシの恨みがましい視線が対照的でしたとも。こっちを睨んでいても仕方ないだろう……。
サッツシがそもそもの原因をなんだし……。
「コ、コホン。……でも、やっちゃったんだろ? お前が原因じゃないか?」
「そ、そりゃそうなんだけど……、言うタイミングとか有るだろ!」
こちらとしても一悶着ありました。
そんな状況下でのトリケラとの対面ですが、シャンマタ、ライトンやフェニックたちとしても、やっぱり会いたい眷属仲間であるのでしょう。出るタイミングをこちらにチラチラと訴えかけてきます。
ただ、感動の再会をさせてあげたいという、その気持ちは俺たちとしても彼らとしても一緒なのだ。だから、ゴーサインが出るまでは、小さくなった姿で俺たちの背中に隠れてガマンしているのである。
「守護獣?ということはトリケラ……お前もなのか?」
「…………。そう……、わたしも守護獣の一角。」
『トリケラ……。』
アーシィの声が聞こえる。
「だが、我々としては、ここはダンジョンの中。お前は何を望む? 戦いか屈服か?」
そう、ここはダンジョンで、俺たちは冒険者(曲がりなりにも)。アイツは魔物。そういう構図になっている。今のところはだが。
「わたしの望みは、……お前たちだ。」
「俺たちだと……。」
交渉は決裂したか……。




