159, ダンジョンで、……攻略は、二十五階へ ⑤
バトルロボとは、下半身に多くのギアを付けた様々な回転部を擁する独楽を持ち、その上で可動する部分を持つ上半身はハンプティダンプティで、外部視認用のアイカメラを二つ搭載。
ユーモラスな腕付きの胴体を持ち、その行動を思考制御するためのVRバイザーで、戦術を組み立てる。
身の丈が当時の単位でタテヨコ高さ一〇センチほどの大きさを持つ機械人形である。
そして、『最強の矛盾』は、当時のバトルロボの世界大会に於いて幾度もの戦いを制して来ていた者たちの集まり。
「懐かしいなぁ……。二種類の盾と矛、瞬転する展開。あのゾクゾクする瞬間。また、やりたいなぁ。」
ソーカコー・ジ・ヴォー皇帝の言葉に、頷いている者が多数。
「父上、セトラ殿とはお知り合いなので……?」
アーサの言葉に、ソーカコー・ジボは、ハッと現在の立場を思い出した。非公式とはいえ、二国間交渉の途中であった。
「ふ…、お前がかの王と同行することに対して持った不安と期待を、以前の私も持っていたという事を思い出したまでのこと。私のノームに匹敵する神獣を見事、得てくるのだ。ではセトラ殿、愚息をよろしくお願いする。」
当時のバトルロボのことを思い出していたくせに、瞬時に方向性を立て直して誤魔化し、こちらに責任を負わせてくる彼の言動のあまりの懐かしさに涙が出そうになった。
「分かりました。アーサ殿をお借りします。」
そう、俺は言葉を返したが、想転移で当時の関係者にメッセージを送ることだけは忘れなかった。
『セトラだ。ダンジョン攻略後に、バトルロボのソーカコー・ジボ杯を開催するぞ。土魔法の習熟をしておくように!』
ソーカコーのみがキョロキョロしていたので、彼には追加で想転移っておきました。
『ソーカコー・ジボ杯に向けて再結成するぞ、『最強の矛盾』。当時のライバルチームもいる事だしな。腕を磨いておくこと。それと、自国の政務をやり残していたら参加不能だからな。一大イベントにするぞ?』
こちらを見て、ニヤけるソーカコーに、親指を立てた握り拳で応えておきました。
「では、アーサどの。ソーカコー・ジ・ヴォー殿からの許可も頂きましたし、忙しい一日でしたが、明後日からの私どもとの同行に備えてゆっくりと休養をお取りください。本日はお疲れ様でした。私も、そろそろ休みますので。」
「では、失礼致します。」
そう言ったアーサは、ゴーレムハウスの中のスイートルームの一室に消えた。
マジで長い一日だった……なぁ。
この星の一日はスクーワトルア国から始まる。
それは、聖典にもあるように、『鍵を持ちし者』たちがこの星へと降り立った場所がスクーワトルアの古城がある場所だったからだ。
各国にある古城が、それに連動しているためにこの星のどこでも一日の始まりの国というかポイントを熟知している。たとえ、そこに国がなくなったとしても、その場所を起点に星の一日が始まる。この星の意思があったとしたならば、その意思の元に決定したことなのだと、人々は何故かそう認識している。
アーサの国ティーニアに向かうことは、一日前に戻ること。
ティーニアから、レディアン皇国へと向かうことは次の日に向かうこと。
前の日に戻って用事を済ませて、次の日を一日使って前の日に戻れば正味一日しか経っていないという事になる。
ちょっと、ややこしい計算だが仕方あるまい。
遠方よりお越しのやんごとなき方々も帰りの時間を気にすることなく、十分に堪能していたようで順次、ゴーレムハウスの中のスィートな一室に消えていきました。
まぁ、ゴーレムホテルの宣伝になるから良いんですけどね。
仲間たちも好きな部屋を選択して、一日の休養に入っていきます。
明日、準備して、ダンジョンの攻略へと戻りますか。
ゴーレムたちよ、後片付けをよろしく。
では皆さん、お休みなさい。




